第7夜.偶然の再会
呼ばれていた演奏会のリハーサルが終わって、ふと酒が飲みたくなった。
久しぶりにお気に入りのバーに行こう、んでもってついでにバーに設置されてるピアノにもちょっとだけ触らせてもらおう、と思いついたら、それがすごく名案に思えて一気に気分が高揚した。
◇
バーに入るとなぜか懐かしい気持ちがこみ上げてきた。
3ヶ月弱ここには来てなかったしな。
マスター、俺のこと覚えてるかな。
なんてことを考えながらカウンター席に座る。
「ご無沙汰してます、マスター。」
「おやおや、これは珍しいお客様ですね。2ヶ月、いや、3ヶ月ぶりじゃないですか、詩藤様?」
すると突然すぐ近くに座っていた女性が咳き込みだした。
おいおい、大丈夫なのか?
酒を喉につまらせたのか?
そんな女性に気づいたマスターが俺の前から消えて、すぐさまその女性のところへ駆け寄って
「大丈夫ですか、銘崎様。」
なーんて言ってるのが聞こえる。
・・・・・・ん?
・・・メイザキ、様?
―――――銘崎 華音。
そういやあの子も『メイザキ』だっけ。
・・・・・・・・・・・・。
いやいや。
そんな偶然ねぇだろ。
俺ってばあの子のこと考えすぎなんだよ。
だから、同じ苗字の人に反応しちまうんだ。
「すみませっ ケホ・・・っ 大丈夫です。」
そんな俺の思考を否定するかのように聞き覚えのある鈴の鳴るような声が聞こえてくる。
嘘だろ。
ホントに?
あの、銘崎さん――――?
思わぬ偶然を期待する俺の胸を叱責して女性の方を向いてみる。
すると相手もこちらを向いていて、目があってしまった。
「詩藤さん」「銘崎さん」
思わず声が重なる。
「「あ」」
またもや重なった。
ふ、とお互い笑みが漏れてくすくすと笑いあう。
「こんばんは、詩藤さん。久しぶりね。」
この一ヶ月、頻繁に連絡を取り合っていたからかずいぶん砕けた口調で話しかけられた。
それが嬉しくて、ついつい俺も饒舌になる。
「ああ、こんなところで会うなんて偶然だな。仕事だったのか?」
そしてまたもやしれっとあの時のように彼女の隣に席を移した。