第5夜.青い薔薇
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彼女と出会ってから約一ヶ月。
あれからちょこちょこと連絡を取り合っていて、結構冗談も交わせる仲になった。
コンクールもすでに終わっている。
結果は一位。
日本では新人ピアニストの登竜門とまで呼ばれているコンクールだったが、俺が学生時代に受けていたヨーロッパのやつに比べたらそんなに難しいコンクールじゃなかったから別に飛び上がるほど喜んだりはしなかった。
ただ、憂鬱なことにヨーロッパだけに留まっていたアレがついに日本まで浸透してしまった。
『Blue rose』
もともと大学は日本じゃなくてドイツの音楽院に行っていた。
俺は、向こうの方では院主催のコンサートやらコンクールやらで結構有名になっていた。
その時につけられた通り名が『青い薔薇』。
もちろん向こうでは『Eine blaue Rose』やら『Un bleu a augmenté』やら『Un azul subió』とやら呼ばれていたんだけど。
冷たい青。
堂々と咲く豪奢な花弁。
見る者を魅了し、しかし、触れようとした者にはその鋭い棘で痛めつける。
侵略不可能な絶対領域を持つ神聖な孤高の華。
院の頃の友人がおもしろがって付けた名。
俺はこのあだ名が大っ嫌いだった。
『朔夜のピアノってなんか冷たくて鋭いよな。でも輝いてるから触れてみたくなる。そんなの不可能なのに。あぁ、まるで青い薔薇だな。』
その時は、なんだよそれ、褒めてんのか貶してんのかわかんねぇよ、と笑い話にしていたが、どうした事か、それはあっという間に院中に広まっていた。
それだけならまだ良かった。
俺がヨーロッパで少しずつ演奏会に出たり、コンクールに出たりと露出し始めるとまたその名が俺を付きまとい、結局欧州中に『青い薔薇』は広まってしまった。
聴衆は俺に『青い薔薇』でいることを求めた。
鋭利で、残酷な音。
それこそが俺の魅力で、人々が魅了される音なのだ、と。
聴衆は俺の音の変化を許さなかった。
自分の音が欲しかった。
鋭利な音に自分自身が傷ついていた。
だから、日本に帰ってきたのに。
青い薔薇。
またお前はその茨で俺を縛り付けるのか?