第4夜.スマートな彼
はぁ・・・・・・。
もう、何でこんな所に着いて来ちゃったんだろう。
私は今、小洒落たイタリアンレストランにいる。
本当は会社を出た後まっすぐ家に帰って、撮りだめしていたドラマを見ようと思っていたのに。
同期の子から「華音ちゃーんっ!おねがい!人数が足りないのー。」と泣きつかれて、参加するだけなら、と言ってしまったのだ。
隣には私を誘った同期の女の子。
その子の隣にあと2人女の子が座っていて、さっきから積極的に場を盛り上げている。
目の前には三人の男性。
三人とも高校からの友達なんだそうだ。
ちょうど私の席と対角に位置するところ、向かい側の一番端の席は未だ空いている。
少し遅れてくるみたい。
「華音ちゃんってすごいカワイイ名前だねー。」
前にいる男性は、目の前にいる女に話しかけるのが使命だとでも思っているのか、さっきからどうでもいいことばかり話しかけてくる。
「はぁ、ありがとうございます。」
私はそれを適当にかわしながら、ひたすら壁の花に徹していた。
◇
そうして凌ぐこと半刻。
「お、来たな!朔夜ー。こっちこっち。」
ようやく四人目の男性がやってきた。
彼を見たとき、きっとここにいる女の子みんな目を見開いただろう。
実際に、彼が来る前と来た後じゃ女の子のテンションが全然違う。
すっと通った鼻筋。
切れ長の目。
洗練された仕草。
何かスポーツでもしているのだろうか、見事な逆三角形の身体。
そしてなによりさっきから色香を放っている薄いくちびる。
この人はきっとあらゆる女性を虜にしてしまうだろう。
とても、とても印象深い人だった。
◇
「隣、非難させて。」
突然だった。
それまでぼーっとしていたから、突然彼が隣に現れたようだった。
控えめに話し出す彼の話を聞いてみたら、どうも彼はこの合コンに自分の意志で参加したわけじゃないらしい。
とてもいい人だった。
別に女を探しに来たわけじゃないからなのか、ほかの人と違って必死さを感じさせず、とてもスマートな人だった。
会話も上手だし、すぐに私は彼と打ち解けた。
出会ってまだ少ししか経っていないのに、私は何のためらいもなく気づいたら連絡先を教えていた。