第3夜.踊る胸と仔猫
「えっ?あ、はい。どうぞ。」
突然の俺の言葉に彼女は戸惑いつつも、とりあえず許可してくれた。
透けるような白い肌に、薄く色づいている頬。
長いまつげに、キュートな鼻。
たまご型の小さな顔にはまんまるで大きな瞳がのっていて、その瞳はくるくると動いている。
落ち着いた茶色のロングヘアーは緩やかにウェーブしていて、彼女が動くたびにさらさらと踊っている。
きっと猫っ毛なんだろうな。
格別にふわふわしてそうな髪の毛は、思わず触れてしまいたくなる。
まるで仔猫みたいな人だ。
思わずよしよしと撫でたくなってしまうような。
「ごめん、名前教えてくれないか?俺、さっきみんなの自己紹介全然聞いてなくて。」
少しでも彼女と話したくて、自分から話を振る俺。
普段は女と喋るのなんて面倒くさくて、こんなこと絶対しないのに。
「銘崎 華音・・・です。」
やっぱり彼女はこの合コンに乗り気じゃないのか、すぐに会話を終わらせようとする。
「へぇ、銘崎サン、ね。突然隣来ちゃって悪いな。けど俺さ、今日のコレ参加してるの、不可抗力で。仲間と普通に飲みに行くつもりだったのに来てみたら女の子がいてさ。苦手なんだ、こういうの。だからちょっと非難させて?」
ははっと苦笑もトッピングして、俺は女に飢えてる狼サンじゃないよアピール。
嘘はついてないし。
でも悪いことしてる気分になるのはなんでだろうな。
「そうなんですか?私も人数合わせで連れて来られちゃって。」
明らかに彼女もほっとした様子。
やっぱりこの合コンには元から乗り気じゃなかったみたいだ。
「お互い強引なヤツを友達に持つと苦労するな。まぁ、コレも何かの縁ってことで。仲良くしよう。」
さりげなく装って、連絡先を聞いた。
警戒心が強そうだから教えてくれないかも、と思っていたけれど案外あっさり教えてくれた。
彼女の一挙一動に目を奪われて、胸が熱くなる。
彼女からふわっとただよう甘い香りに身体も熱くなる。
なにやってんだよ、俺ってば高校生のガキじゃあるまいし。
そんなことを考える俺を余所に、躍る胸はいつまでたっても治まらなかった。




