第18夜.オオカミな彼
「詩藤さん・・・?」
驚いて名前を呼ぶと、それに答えるように絡まっている腕がぎゅっとしまった。
背後で、詩藤さんが私の肩に顔を埋めている気配がする。
「・・・行くな。俺のモノになれ。」
耳元で、そう甘く囁かれる。
詩藤さんの声は少し掠れていて、どことなく色っぽい。
シャワーを浴びてそのまま出てきたのか、しっとりとした感触の腕に、濡れた髪。
熱い吐息は私の耳を掠めて、身体をゾクリと震わせる。
うそ・・・。
『俺のモノになれ』って・・・。
思考停止状態に陥っていると、徐々に詩藤さんの唇がいろんな場所を食み始める。
頭の先からやさしいキスを降らせているかと思ったら突然、かぷり、と耳たぶを甘噛みされ、その瞬間、体中に電気が走った。
「・・・華音?」
畳み掛けるように、耳元で詩藤さんの艶かしい声。
好きな人にこんな風にされて、私はもうトロトロだった。
「・・・愛してる。・・・返事、ちょうだい?」
その間も詩藤さんはイタズラをやめない。
いつしかその唇は私の耳に舌を絡めていた。
ずるい。
相手に返事を求めておきながら、その返答を考える隙さえ与えてくれない。
こんなにも私はあなたに夢中なのに。
それでもあなたは私にはっきりと言葉で言わせようとするの?
「華音・・・っ」
切なそうな声音で私の名前を呼ぶ。
ぎゅっと私に絡まっている腕は、言葉以上にその想いを伝えているかのようだった。
「・・・私、も。」
漸くしぼり出せた言葉は、たったそれだけだった。
それでも、小さな小さな私の声は、しっかりと詩藤さんの耳にも届いていたようだ。
言葉を告げた途端、詩藤さんは私の身体を回転させて、文字通り、噛み付くようなキスを落とした。
深く、激しく、そしてとっても甘い、そんなキス。
玄関の真ん中に立っていたはずの私は、いつのまにかドアに寄りかかって上から覆いかぶされるようにして詩藤さんのキスを受けていた。
激しすぎるキスに私の膝は身体を支えきれず、カクリと折れた。
そんな私を見かねたのか、詩藤さんは口の中では舌を縦横無人に動きまわらせながら、器用に靴を脱がせた。
なんて器用な人なんだろう!
自分では抵抗する力さえも残っていなかったから、されるがままにしていると、
「華音も玄関よりスプリングの利いたベッドの方がいいだろ?」
なんて言って、抱きあげられてベッドルームまで連行されてしまった。
更新を二ヶ月も滞らせてしまって、申し訳ありません。
待っていてくださった読者の皆様、ようやっと、って感じですかね。
ちなみに、今話で完結・・・、なんてことはなく、これからストーリーが展開するって感じなので、どうぞこれからもお楽しみくださいませ。