第13夜.今宵の運
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詳しいことは活動報告のほうに記しておりますので、どうかご理解くださいませ。
これからもどうぞよろしくお願いいたします。
「会社でね・・・・・・」
今日の華音は少し饒舌だ。
それに、酒を飲むピッチもはやい。
どうやら会社でムカついたことでもあったようだ。
「マスター!おかわりぃ~。」
目を潤ませ、頬も真っ赤にさせているのに、華音はまだマスターに酒を強請りつづける。
さすがにこれだけ酔っているとマスターも困った顔で、俺が『もう酒は出さないでくれ。』とアイコンタクトをすると、ホっと安心したように微笑んだ。
「詩藤しゃ・・・ん。わた・・し、もっと飲みた・・い・・・。」
む~っと唇を尖らせてねだる華音はひどく可愛らしい。
しばらくして代わりに、と出されたグラスに入っている液体が酒でないことすらもはや認識できなくなっているようで、夢中でこくこくと飲んでいる華音。
その瞳はとろんとしていて、ひどく庇護欲をそそる。
完全にやられちまっているな、俺。
今までこんなことなかったのに、と少し自嘲気味に鼻を鳴らすと、そんなことをやっている自分の滑稽さに笑いがこみ上げてきた。
うとうとと眠る体制をとり始めた華音を横目に、俺は一気にグラスの中の液体を流し込むと会計のために立ち上がった。
◇◇◇
俺にもたれかかってすやすやと眠る華音は、なんというか、すごく・・・・・・かわいい。
タクシーに揺られながら家に帰っている途中、やっぱりそんなことを考えていた。
本当は眠ってしまっている華音を自宅に送っていくべきなのだろうが、あいにく(本音を言えば幸運なことに)俺は華音の家を知らない。
だから、仕方なく(だって他に方法がないからな。華音を外に放り出しておくこともできないだろ)俺の家に連れて帰ることにした。
店を出るまでは、目を覚まし、よたよたと自力で歩いていたものの、タクシーに乗り込むと再び眠り始めた。
こくこくと舟をこぎ始めた華音をきゅっと俺の方に抱き寄せると、甘えるように擦り寄ってきた。
これはこれでたまらない。
思わずにやける口元を左手で隠し、窓の外の景色を眺めながら、俺は今宵の運のよさを思った。