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共鳴魔法


 龍は翼も鱗もボロボロな状態で絶命していた。シスベルもA級の魔物が一撃で倒されるなど夢にも思わなかったのだろう。ましてや黒騎士相手ではなく魔法士に。


「嘘でしょ……魔法士が、A級を一撃だなんて。それに過去に1級魔法士の称号を得た人は全員調べあげてるのにあなたのことは知らないわよ!」


「あーそれたぶんもらってその場で返上したからだろうね。魔法士団の中で1級になっちゃったら面倒なことしかないから。陛下からも了承済みだし」


「あの女狐女王……!」


「それで?もう終わり?」


 挑発するスミス。魔教団も魔物もほぼ壊滅状態となっていた。


 シスベルも悔しいのか魔物の上で地団駄を踏む。


「まだ残ってるんだから!呼べばまだ……」


「そこまでだ」


『ッ!?』


 シスベルとシン達の間に巨大な黒い壁が出現し別離される。


「どうやらここまでみたいね。じゃねシン。またね」


「スミス先生!」


「うっさい!《灼熱地獄》!」


 左手から火の玉が生まれ黒い壁にぶつけるもスっと消えてしまう。


「ッ!?」


「なら俺が!」


 スミスの魔法が効かずアレスが《炎帝》を振りかざそうとするとスミスに止められる。


「無駄だ。あれは魔力を吸収するから幾らやっても意味ないぞ」


「そーゆーこと。バイバイ」


 黒い壁の向こうでシンに向かって手を振るシスベル。すると黒い壁が消えると同時にシスベルも消えた。


「逃げられましたね」


「仕方ない。怪我人はいるかー。動ける奴は転移場所まで行けー」


「でもあれは壊されたんじゃ…」


「ここに来る前に直しておいた」


「あっ、そうですか。だってさシン。あれ、シンは?」


 フェリスが呆れつつさっきまでシンが立っていた所を見ると見当たらなかった。するとユアンが


「シン君なら全力疾走で帰ったよぉ。アレス君も一緒にぃ〜」


「はやっ!?じゃなくて私もエンネア様のところに戻らないと!」


「あっ、置いてかないでよぉ〜!」


「元気だなー子供って」


 慌てて走るフェリスを追いかけるユアン。他の生徒達も戻り始める中担任一人だけ座り込んで一服した。


「あやべ。起動の鍵あたし持ったまんまだった。まっ、誰かしら取りに来るだろ」


 それから一時間程して王立学院に戻ることが出来た。



「はぁ、シンはユリスにべったりだし散々だったよ。あなたもそうでしょ?」


 シスベルが森の中でクマの背に乗り毛並を撫でる。


『システィー様の目は誰かを哀れむような目じゃありませんでしたから』


「私がそんな……でも……ありかな」


 微笑むとクマから降りて頭を撫でた。


「あなたには魔法を解いてあげるから好きに行きなさい」


 《使役》の魔法は任意で解除する場合必ず対象に触れていなければならない。


 解除したにも関わらずクマはシスベルに体を擦りつける。


「ちょ……もしかして、シンに言われたこと。そう、なら好きについて来なさい。どうせしばらくは羽を休ませるつもりだから」



 襲撃事件から三日が経過し学院への通学制限が解除されいつも通りの日常に戻ろうとしていた。


 その間に、中止となった試験の再審結果としてミゼイリアの方から再試験はなく、襲撃者に立ち向かった勇敢な諸君に、と言って騎士には星を授与し魔法士見習いには魔石を贈った。学院にいた王侯貴族にはというと、「レベスタを支える末裔であればこれぐらい当然だ」としてまさかの何も無い。とは言ったもののアルベルトが納得するとそこまでの騒ぎになることはなかった。


 勿論活躍した人は他とは違ってくる。シンも星を三つ頂き、黒騎士昇格試験に大きく近づき、アレス、フェリス、ユアンも同じように活躍したことが認められ第一位に昇格。しかし何故かユアンだけがシンと同じ数の星を持っていた。


「あんた私と対して活躍変わってないのに評価おかしくない?」


「私は元々陛下やリアナさんから色々頼まれてたからぁ、第二位の時から星八つまで集まってたんだよぉ〜」


 それを聞いたフェリスは案の定激怒。徹底的に事情を聞かれるのであった。


 落ち着いた日にはミゼイリアが労いの意味も込めて学院全員に王城内での特別パーティーに招待し、夜会にはユリス達もドレス姿で参加おり、今現在とても目立っていた。


「ねぇシン、私たち凄く見られてる気がするんだけど…」


「皆ユリスの美しさに見とれてるんだよ!」


「お前が一人で撮影会をしてるからだろ!」


 先程からシンはカメラを構えかれこれ一時間ぐらいユリスに色んなポーズをさせてはカメラに納めていた。ユフィーも侍女として、メイドとしての仕事があり忙しくようやく戻ってこれたかと思うとこの始末である。


 怒鳴り声を上げながらカメラを没収する。


「あんたねぇ、少しは場所を考えなさい」


 白いローブを着たフェリスがドレスを着飾ったエンネアと一緒に来た。騎士は学院のローブが指定らしい。


「フェリスはエンネア様のこと撮らないの?」


「そうよフェリス!たまには私のことを引き立ててよ!ほら、珍しく髪も下ろしてみたのよ」


 エンネアは桜色の髪をいつもと違うストレートにしており大人びた雰囲気を漂わせた。毛先を掴んで揺らして見せる。


「エンネア様の黒歴史を増やさぬよう尽力しているんです」


「ひどい!」


「相変わらずエンネアだけは騒がしいわね」


「あっ……ユミル様」


 声質でユアンと口にしようとしたシンだが目に入った胸元ですぐに誰だが気づいた。


 視線に勘づいたか首を傾けて意味深な笑みを見せる。


「シン君?今どこで誰と区別したの?」


「騎士ユアンはどうしたの?一人なんて珍しいね」


「あの子ならいるわよ。ほら、騎士フェリスの後ろ」


「ばぁ!」


 ユアンが指を指すと隠れていたユミルがフェリスの背後から驚かすようにひょっこり出てきた。しかしフェリスはピクリとも反応を見せず首だけ動かしてジト目で睨む。


「あれぇ?」


「あれじゃないわよおっぱい詐欺師ぃー!」


「いぃ〜やぁ〜」


「仲良くなってくれて良かったわね」


「ぶぅー」


 首を傾げると胸を揉むように捕まえる。


 親しみ深さにユミルはクスリと笑う。エンネアから見れば少し羨ましい状況らしく口を尖らせる。


「そう言えばユミル、あのことエンネアにも言ったんだよね?」


「えぇもちろん」


 ユリスが聞いたのはシンの持っている魔剣のことだ。学院に戻って主人の安否を確認した後フェリスがすぐに二人を問い詰めたのだ。その時あっさり自白、というかシンとしても彼女には説明したいと言う気持ちがあった。


 それを聞き事の重大さを知るとフェリスもよそよそしくなってしまったがやはりユアンまでも知っていることが許せずしばらく不機嫌だった。エンネアにはユミルから説明することにしたらしく、それなのに気にしてる素振りがない事が気になりユリスは問いかけたがすぐに頷かれる。


「ちゃんと聞いたわよ?でも何がすごいとはよく分からないのよね。フェリスのA級と何が違うわけ?」


『え』


 エンネアの発言にシン以外の全員が凍りついたように固まった。シンも何故か「あー」と納得しておりフェリスとユフィーの表情がさらにおかしくなる。


「エンネア?わたくしが言うのもなんだけどシン君の魔剣色々とおかしいことに気づいてないのかしら?」


「そう言っても私彼の魔剣の力()()()()()()()()()()()


「エンネア様!?以前シンとアレスの決闘見てなかったんですか!?」


「あれ?アレスと決闘してたのってフェリスじゃ…」


「ちーがーいーまーすーよー!何で肝心な事また捏造しちゃってるんですか!」


「え!?じゃあフェリス誰と決闘してたの!?」


「誰ともしてませんから!」


「なるほど、フェリスが言ってたのはこういうことか」


「シンも何勝手に納得してるの!?」


 連続でツッコミを入れるフェリス。勢いで疲れたのか息がきれてきている。


 その後ユリスが風に当たってくるとバルコニーに出たのでこの場をユフィーに任せシンもバルコニーにでた。


 夜の風は冷たくシンはローブをユリスに被せた。


「どうしたのユリス?疲れちゃった?」


「ううん。ちょっと耽りたくなちゃって。シンがいなくてユフィーが頑張ってくれていたのに、私はあの場で何も出来なかった。最後はシンが守ってくれて」


「騎士として、主を守れたことを誇りに思う、だよ。それに僕があの時感じたの、魔法でしょ?」


 シンの言葉にユリスは目を見開いて見つめた。すぐにふふっと笑う。


「《共鳴》の魔法。信頼や信用、そんな感情を置ける相手と心を共有する魔法。意識しなくても感情を強く抱くと発動しちゃうんだと思う」


「心を通わせるなんてとっても素敵な魔法じゃないか」


「お父様もそう言ってくれた。でもね、感じたくもない相手の嫌な感情を感じたり、また相手に感じさせる魔法は誰とも引き合わせてくれない」


 瞼を薄め下を見つめる。そんな横顔を見てシンは咄嗟にユリスの手を掴む。


「そんなことない。僕はユリスの全てが知りたい、ユリスに僕の全ての知って欲しい。だからこれからも僕はキミと通じていたい」


「シン………」


 真剣な眼差しと嘘偽りのない感情が《共鳴》を通じてユリスの心に流れ込む。


 ハッとなってシンは手を話した。


「ご、ごめん」


「いーよ。それに」


 ユリスは片目を瞑り指先をシンの口元に当てる。


「ユフィーも似たようなこと言ってたからね」


 見惚れるシンだがすぐに手を掴んで離す。


「先輩なだけあるね」


「二人って実は相性よかったり?」


「ご冗談はおやめくださいユリス様。ネジの付き方が人より異常な男となんて御免こうむります」


「そこまで言わなくても……。あっちは大丈夫?」


「あちらはあちらですから問題ありません」


 唐突に横から入るユフィー。


「そうだシン。この前の襲撃のことを改めて話したいことがあると騎士に招集が来ている。今からミゼイリア様のとこへ行ってこい」


「それって私達は?」


「呼ばれているのは騎士だけとのことです」


「分かった。すぐに戻るよ」



 王城の応接室にて四人の騎士が呼び出される。シン、フェリス、ユアン、アレス。待っていたのは国王ミゼイリアと黒騎士リアナ。


「用件を先に言わせてもらうわ。あなた達には隣国、ロ・ルグニカ魔導国に出向いてもらいたいの」


「ルグニカ魔導国ですか?私達がって事は……もしかして学院同士の交流会ですか?」


「そうだ。()()()()()


 フェリスの問いかけにリアナが答える。


「ルグニカでも我々同様魔教団の襲撃を受けたらしい。被害もこちらより甚大と聞くが、実は学院に内通者がいたらしくな」


「私達と同じですね」


「そう。だからってわけじゃないけどこの際ルグニカとは和平を結びたいのよ」


「それはまたいきなりですね。それにさっき表向きって言いましたよね?和平を結ぶのにわざわざこっそり交渉するんですか?」


 ミゼイリアがリナアと代わって口にする。シンが意見すると横でフェリスが肘打ちした。


「そんなことも分からない?レベスタとルグニカは水面下では結構バチバチしてるの。気安く和平なんて持ち掛けたら返って裏目に出るのは必然。それでも毎年この時期にはお互いの学院から数人送り合って交流会を開いてるの。だからミゼイリア様は交流会に乗じて和平交渉に乗りだせ、と言いたいのよ」


「ありがとう騎士フェリス。ちょっと余計な言い方だけど大まかに言えばそういうことよ」


「仰ることは分かりますけど、何故俺達騎士にその話を?俺達には俺達の主人がいます。はっきり言わせてもらいますがアルベルト様から離れて別の国に行けと言うなら自分は断らせて頂きます」


「アレス君言うねぇ〜」


「僕も同じ意見です。またユリスと離れるなら全力で拒否します」


「シン言い方!」


「構わないわ」


 注意するフェリスをミゼイリアは静止させる。


「勿論あなた達のご主人も一緒よ。でもあの子達ならまずこの話断らないでしょう?この話の肝はあくまでもあなた達騎士。だから先にあなた達に引き受けてくれるか聞きたいの。個人的に騎士シンには言ってもらいたいのだけど」


「何故ですか?」


「魔剣のことよ。正直シンの魔剣《魔帝》はよく分からないことだらけなのよ。一万年一度として所有した者が居らず、他と一線を画す魔力を持つ魔剣。ただそれだけに能力は不明。魔技も覚えた見たいだけどそれも膨大な魔力を利用したもので肝心な能力では無い。それとも魔力の多さこそが《魔帝》なのか。それをはっきりさせたいの」


「待ってください。シンが持っているのは世界に四本しか存在しない魔剣なんですよ。まだ《開門》も会得していない未熟な状態で他国に行かせるのは危険なのではないですか」


「だからあなた達四人を呼んだのよ。ルグニカにもこちらの被害状況はある程度伝えてあるけどシン個人の能力が伝わることはなにも。代わりに今期最も早く《開門》に至った《炎帝》の魔剣使い、騎士アレスの事を過大評価しておいたの。幻を生み出す《幻狼》、毒を作る《毒牙》。シンが混じって誤魔化すには丁度良い組み合わせじゃない?」


 四人は呼ばれた意味を理解した。


「最後に僕からいいですか。ルグニカには《魔帝》の本当の力を知れる何かがあるんですか?」


「いるのよルグニカにも。あなたと同じ魔剣の所有者。ロ・ルグニカ魔導国に保管されたS級魔剣、《雷帝》に選ばれた騎士がね」

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