第94話:星の鼓動は愛09
『こっちは聞いたことのない水魔術。火に対抗したか! しかし相応の威力だぁ!』
「小賢しい!」
終焉剣が振るわれると、切り裂かれた水が全て蒸発しました。
「ぅゎぉっ!」
さすがの威力。終焉の魔女の名は伊達ではありません。
『これだ! 終焉剣の前ではあらゆる事象が無に還る! これを止めない限りディフェクターに明日はない!』
ガシャン! ガシューン!
機械構造が鳴り響き、サクラメントが縦に振るわれます。受け止めたのは、こっちのサクラメント。伝承剣ルミナカリバー。
高らかと啼く金属音。サクラメント同士がぶつかり合い、その神秘性を喰らい合います。
「破ァァ!」
さらにヒュンと振るわれるレッツトエンデ。騎士の剣なのでしょう。そこそこに理に適った剣撃は都合よくコッチを襲います。
「弑ィィ!」
そしてその全てを理によって私は打ち払いました。日本最古の剣術……京八流によって。
「封ゥゥ!」
「帰依ェ!」
『サクラメント同士にぶつかり合い! 剣の間合いで! しかし終焉の魔女にディフェクターは一歩も引かないぞ!』
――いや。対処してるのはトールなんだが。
デスヨネー。
剣の衝突音が打ち鳴らされ、それらの会合の果てにこっちの剣がオルトガバメントを襲います。ガリガリと削られる装甲値。さすがにサクラメントでもABC装甲は抜けないらしいです。まぁ壊しても壊されても損害がデカいのでソレは良いんですけども。
「剣では勝てませんのね!」
「こっちが理を握ってますね」
別に嫌味ではなく単純な本音。
「ではもうちょっとお付き合い願いますわ!」
オルトガバメントのツインカメラアイが閃いた気がして。
「――トルネイド!――」
魔術による攻撃……ではなくコレは。
「破ァァ」
剣術に魔術を織り交ぜています。
「――千引之岩――」
私は魔術障壁で受け止めました。ほぼ同時に反撃。
「――後鬼霊水。秋水――」
水が刃物となって巨人を襲いまして。ABC装甲は抜けないまでも、その維持エネルギーをガリガリと削ります。
『水そのものを圧迫しての攻撃か! こんな水属性魔術があったとは! さすがの魔女も分が悪いか!』
「…………うるさいですわね実況」
ソレは同感。
「チィ!」
そのままではマズいのでしょうけど、とっさの終焉剣で彼女は水を散らします。こっちに言えた義理ではないですけど終焉剣のチートさには舌を巻きます。斬ったモノを終わらせるという意味で、攻撃性の破格さは類を見ません。
「封ッ!」
さらに斬撃。襲い来る攻撃を伝承剣で弾いて、逆の手で相手に掌底を放ち、
「――前鬼戦斧――」
斬撃を威力ごと零距離で放ちます。
「――ディフェンディングアーマー!――」
相手も知っていたか。防御魔術を展開。ザクンと斬撃が防御と相殺されました。
「雄雄ォ!」
さらに振るわれる終焉剣。袈裟切りを受け流し、斬り返しを受け止め、そのまま回転して斬撃を付与。
「――ツヴァイ!――」
ほぼ瞬時にフィーネによる防御魔術の連続展開。私の剣が受け止められます。
マズいッ!
と思ったときには既にレッツトエンデが振り切られ、
――クリムゾンガトリング!
認識でしか聞こえないジュリアンの呪文が弾け飛びます。無構えから放たれた炎の連続召還が怒濤のガトリング砲となってオルトガバメントを焼きました。爆発に次ぐ爆発が彼ダイレクトストーカーを吹っ飛ばし、斬撃ごとキャンセルして間合いを開きます。
チャンス!




