第90話:星の鼓動は愛05
そんなわけで私はパペットを着せ替え人形にしました。ドレスやらメイド服やら色々着せて、最終的に私と同じゴスロリに落ち着きます。漆黒のフリフリドレスは黒髪の私だと悪役っぽいんですけど、銀髪のパペットだと薄幸の御令嬢みたいでぐうかわでした。
そんな「二人はゴスロリ」的な感じで肩を並べ、ダイレクトストーカーの整備場に出向きます。私だけでも噂になるんですけど、さらに隣の銀髪の美少女が何なるやとざわめきも大きくなり申し。
「トール氏!」
ヤクザキック。飛びかかってきた顔面を蹴り飛ばし、そのまま蹲るアルマの背中をグリグリと踏みにじります。
「ああ~ん」
「よくもまぁそこまで矜持を擲てますね。生きていて恥ずかしくないんですか?」
「トール様に踏まれ隊!」
「アルマ氏! 一人だけズルいですぞ!」
「我らも踏まれたいんだな!」
「トール嬢! 踏んでくれでおじゃる!」
うんぬんかんぬん。
「マイマスターはお偉い人なのですね」
いや違うから。たしかに人は踏んでいますけども。
「トール女史~」
「トール様~」
「トール氏~」
で、こっちの気疲れも範疇に属さず、「踏んでくれ」とねだるお人よ。
「踏まれたいなら相応の覚悟を見せてください」
「脱げばいいにゃ?」
「ストリーキングに用はございません」
頭の頭痛が痛くなる……と重ね言葉をするくらいの疲労感。
「それでそちらのご婦人は?」
「私の所有物ですよぅ」
「どうも。持ち主様に強いられる道具。パペットと申します」
「はぁ……。カワイイにゃ~……」
で、可愛い物好きのアルマがウットリとします。いやいいんですけど。
「最高級品のオートマトンだにゃ。どこで発掘したので?」
「運命というバスチーユで」
たんに巡り会ってしまっただけだ。
「こちらはストーカーのアルマ。いちおう男」
「ですか。よろしく御願いしますアルマ様」
「どうもにゃー。で、オートマトンを連れて何故此処に?」
「ストーカーになりたいんだってさぁ。私としても応援したくて、実物を見せようかとぅ」
「オートマトンがストーカーに?」
「無理だと思いますぅ?」
「魂が翻訳できないんじゃ……」
「ソフィアの顕現って意味でなら無理筋とは言えませんけどねぃ」
実際にクォンタムギアにはその可能性があります。
「トール!」
「トール女史」
そんなわけでアルマを踏みにじりつつ説明を加えていると、整備場にいるジュリアンとフィーネもこっちに気付きます。
「あれ? そっちのゴスロリは?」
「パペットと申します」
「お兄様の品を下げないでくださいます?」
「御本人が望まれているんですけど」
嘆息。
「トール浮気?」
むー。あからさまに対抗心燃やすジュリアンに萌え。
「可愛い女の子だって可愛い女の子は好きですよぅ」
「僕のことも好きにゃ?」
「お兄様は男でしょう」
私も男なんですけど。
フィーネが首に縄を付けてアルマを引きずり回します。




