第83話:私の愛馬は凶暴です13
「トール嬢。終焉の魔女と決闘とは本当ですか?」
「トール様。あの機械神を動かすなんて」
「トール殿。あまりにも美しい。踏んでください!」
「トール閣下。ディフェクターだけでなくこっちにも愛を!」
「トール女史。今度お茶でも一緒に!」
「トール卿。私と結婚してください!」
謹んでごめんなさい。
「てなわけでトールは人気者だな」
グイとジュリアンがリードを引っ張ります。私は首輪をつけられていました。ちなみに学院ではしっかり女子制服。このスカートのフワフワが偽装女子としての感覚を盛り上げます。ほら。マリリン・モンローもスカート翻せばエチエチに見えるし。
というわけで、
「貴様ぁ! トール嬢を解放しろ!」
ビシィと裁判ゲームの角度で指差すモブリアンの詰問がジュリアンに飛びます。
「だってトールは俺様のだし」
で、グイとリードを引きつつ、こっちの腰に手を回します。
敵役似合ってますね……あなた。
「その可憐な腰に腕を回すな!」
「そうだそうだ!」
「トール様は我ら踏まれ隊の共有資産である!」
「お前様も踏まれるだけで我慢しろ!」
「僕らだってトールに踏まれたいにゃ!」
あのー。アルマ氏。そこでモブリアンに混ざって批難するの止めてくれます?
「にゃんで?」
「お立場というのがございましょう」
「トールに踏まれるためなら全矜持を擲つにゃ!」
ご立派。ドMの鑑。
ヤクザキックで顔面を蹴り、そのまま倒れたアルマをグリグリと踏みにじる。
「いい加減にしてくれませんか」
「にゃー。幸せ……」
そりゃ御機嫌麗しゅう。
「ズルいですぞアルマ卿。いくら円卓とはいえ、チャンスは踏まれ隊平等に!」
「トール嬢。吾輩も踏んでくださいませ」
「なんなら脱ぎますぞ」
「自分なんて椅子の代わりに座って貰っても構いませんよ?」
「なんの! 小生など灰皿代わりにタバコを押し付けられたって!」
そんな性癖を持っていませんから。
「なんなら別に見繕った方が早いのでは?」
「「「「「トール閣下だから意味がある!」」」」」
えー。
「ま、実際可愛いしな」
うんうんとジュリアンまで頷く始末。
「自覚はありますけど、そんなに可愛いですかぁ?」
いや、経験上それなりに恋愛事情はこなしてきましたけど。
「まず肌が綺麗!」
「染み一つない!」
「そばかすはあってもいいけど、トール殿にはそれすらも一分もない!」
まぁ肌ケアはしっかりしてますしね。
「瞳が綺麗!」
「ブラックパールの様に輝いている!」
「しかも意の霊が乗ってキラキラしている!」
「二重まぶたも高得点!」
人を認識する上での特異点ですよね。
「髪だって綺麗!」
「カラス色の髪なんて奇蹟そのもの」
「色合い的に重いはずなのに、血が流れるように躍動している!」
「鮮やかな光の反射は陶器にも劣らない!」
「しかも反射している光がサファイアの蒼にも似ていて!」
これも気にかけている点だ。そもそも男女……乙女の命だし。
「しかも身体が黄金比で細い!」
「抱いただけで手折れてしまいそう!」
「生まれの奇蹟が物語る!」
「華奢なのにお尻が大きいとか反則!」
「その御御足で踏まれることが男のロマン!」
そこはまぁ抱かれた経験上、そこそこ自負は在って。
なんでも僕を抱いた人間は、それだけで征服欲を満たすそうな。
「さすがいい体つき」
で、その実例がジュリアンだ。さっきから私を抱いてネコのようにあやしている。




