第79話:私の愛馬は凶暴です09
「トールは本当に可愛い」
「ありがとうございますぅ」
「だからアンドロギュノスに乗れる」
「意識的にもイケるでしょう?」
「トールとアンドロギュノスに乗ると、とっても気持ちいい……」
「私もですよぅ」
人と意識を重ねることは、あるいは肉体接触以上に興奮を覚える。
「イったんだぜ?」
「ドライの方向で」
「?」
「なんでもございません」
ジュリアの耳を舐めます。
「あ……ん……」
「心地よいですかぁ?」
「トールに触られると……自分でするより興奮するぞ……」
良い傾向です。ジュリアの愛らしさは、私だけが知っていればいい。
「ジュリアを独占できるのは私の特権ですねぇ」
「幾らでも抱いていいから」
「そこはおねだりして欲しいですねぇ」
「トールは経験あるのか?」
「それなりに。童貞も処女も捨てていますしぃ」
「処女も?」
「もちろん女性も抱きましたけど。男性にだって抱いたり抱かれたり。その辺魔術師って奔放なんですよぅ」
「えーと。おにんにんで?」
「ええ。まぁ」
「ふわぁ」
あ。ジュリアは腐女子の才能がありますね。
「じゃあ例えばアルマとか……」
NTRまで備えますか。
「可愛いですよねぇ。抱いても良いし抱かれても良いし」
「むー」
「ああ。失礼をば。ジュリアが一番可愛いですよ」
「ねっチューしょ~」
「またイキたいんですかぁ?」
「だってすごく興奮する。トールを抱きしめてる感触がすごくフワフワするぜ」
可愛いことを言ってくれます。
「胸を触られるのも、なんかビクンってなるし」
「性的に興奮してるんですよぅ」
「俺様がこんな女だって知らなかった」
「まぁ遺伝子には逆らえませんしねぇ」
女性であれば男性を求めるのも至極当然だ。
「トール可愛い」
私を男として見ているのかは議論の余地があれど。
「んん……っ……」
「ちゅ……ぁ……」
そしてまた私たちはキスをします。
アンドロギュノス。性的に完全の存在。そうなれないが故に男は女を、女は男を求めるのですから。
この世にある愛の根本は性衝動に由来して。別にソレを穢れているとは私は思いません。プラトニックに幻想も持ちませんし。だってそもそも子どもを残すのが生命の純粋な起源ですから。先に性欲があって、そこから愛に派生する。セックスすることに不誠実と文化や文芸は言うのでしょうけど、愛の中心にはどうしても欲求を据えるのが私の認識で。
「トールぅ……好きぃ……大好きぃ……ッ」
「エチエチな気分を盛り上げてくれますね。ジュリアは」
「だってこんなの感じたこと無いし。トールが初めてだぞ。俺様をこんなにしたのは」
「皮膚が張っていますねぇ」
「だってこんなに興奮するんだぜ?」
――いけない子。
耳元で囁きます。
「あ……」
ビクン……と、またジュリアの身体が震えます。まさか言葉責めでいくとは。
「俺様こんなエチくなってトール引かない?」
「可愛いですよぅ。ジュリアのそんなメスの表情が。私にだけ向けられるモノだと知れば」
「メスか? 俺様……」
「興奮するでしょう?」
「うん。いっぱい」
この女の悦びを今までジュリアは知らなかった。ジュリアンとして……男として振る舞っていた。その自制が崩されると……あとはなし崩しに私に依存した。ああ。本当に可愛い。いくら可愛く女装しても、本当の女の子には敵わないと私が思える瞬間です。
「だからジュリアももっと私を感じてください」
「もっと?」
「もっと」
「感じすぎて死んじゃうよ?」
そんなにですか。まぁキスで達するくらいですしね。
「ほんと有り得ない。ねぇトール。トールの前でだけ俺様は女の子で良いかな?」
「だから私のヒロインなのでしょう?」
「えへぇ。トールのヒロイン……」
ちゅ、とまた唇が重ねられました。
どうやらキスで達することに中毒になっているみたいで。




