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第76話:私の愛馬は凶暴です06


「さて。ジュリアンは今でもサクラメント使えないんだよにゃ?」


 ――ぐ。


 霊魂武装。魂の錬鉄。


「みたいですね」


 ちなみに私とアルマの声が何処から出ているのかも気になるところ。


「トールは使えるかにゃ?」


「そもそも魂という観念を信仰してはおりません」


 ガシャンガションと両腕を開いてハリウッド俳優ばりに肩をすくめる。


「そもそも必要なので? そんなちっぽけな魂の器が」


 さっき見たけど、アルマとフィーネの霊魂武装も人間相応だ。こんな巨人に意識乗っ取られて使える物か。


「ああ。其処からかにゃー」


 論より証拠とばかりにサクラナガン・ルージュが典礼剣をマテリアライズする。さっき見たものと形状は一緒だったけど、大きさは比較にならない。相似するとはいっても刀身が十メートル後半となれば立派にダイレクトストーカーの武器と言える。


「なん…………」


「スケールアップの法則ってにゃ」


 スケールアップ。


「改めて認識しただろうけど、ダイレクトストーカーに乗れば認識が肥大化するにゃ。ソレはつまり魂の肥大化にも繋がる。にゃので魔術もダイレクトストーカーの大きさ相応まで強化されるんだにゃ。小さいモノは大きいモノへ。短いモノは長いモノへ」


「スケールの大きさがそのまま魔術の出力をブーストする……と?」


 ――その認識で合ってるぞ。


 ふむ。


 ガシャンと機械の腕を差しのばす。


「――後鬼霊水――」


 マジックトリガーを引く。機械神の腕に絡みつくような水の奔流が、そのままスケールを大きくしてサクラナガンを襲う。アルマの魂事物がソレを切り裂いた。


「そういうわけだにゃ」


 ――トール御得意の異界魔術もダイレクトストーカーの体積比率まで倍化されるわけだ。だいたい十倍から十五倍程度か。人間の身長の平均からダイレクトストーカーの全長まで単純計算で比較すると。


「ぅゎぉ……」


 ただ巨大になったというだけで、そんな倍率が有り得るのか。そして魔術のブーストをそんな単純な方法で実現せしめるとは。たしかに思い付かなかった。基本的に私の世界の魔術師が魔術の威力を上げるときは、相応のトランス状態と思い込みの贄を必要とする。魔力が何なのかは此処では論じないけれど、自分の肉体を大きくすることで人の認識を拡大して魔術を強化するというのはあっちの世界では有り得ない裏技だ。さすが異世界。


「にしても後鬼霊水でコレなら迦楼羅焔は使わない方が良いのかな?」


 ――相応暴れる程度なら此処でなら何とでもなるぞ。恒常性があるから破壊尽くしても再生するし。


 なんだその世界不思議発見。


「となると、そっちのアルマ……あなたのサクラメントも倍化するので?」


「まぁね。僕のサクラメントは地平剣ホライツォント。距離を支配する剣だ。ダイレクトストーカーに乗ってスケールアップの法則に則れば地平の彼方に在る山脈すら切り分けることができるにゃーよ」


 サクラナガンがヒュンと典礼剣…………地平剣ホライツォントを振る。


 ――距離を支配する剣。つまり地平線の彼方まで御本人の認識する風景に対して線を引くように切り裂くことが可能なサクラメントだ。こと対多兵器としては最強の一角に数えられてるぜ?


「そんなご大層な存在だったのか。アルマって。踏まれることを良しとする男の娘かと」


「男の娘だし。踏まれて良しだし。ついでに最強ではあるね」


「妹御は?」


「あれは強いとかそんなレベルを超えてるから」


 ――山脈を一閃で切り裂く地平剣ホライツォントすらも霞んで見える最強。それがあのフィーネ=クォーネ嬢だ。終焉の魔女と呼ばれる最も月に近いストーカーだぜ。


「月」


「さて。ではやりますか」


「ていうか戦って良いので? アンティークとしてもかなり価値在りそうなんだけど」


「元々ギガントマキアって言ってにゃ。ダイレクトストーカー同士は戦うことで魔術儀式を執り行う。今回は例外だけど、本来は戦力と言うより武装巫女としての役割がダイレクトストーカーに求められるところだーにゃ」


「それって楽しいの?」


 ――ストーカーとして大成すると願いが叶うからな。


「願い……ね」


 願望機ストルガツキー。


「じゃあ少し試運転してみるにゃ」


 ヒュッと風切る音。典礼剣がこっちを襲う。意識が其処に倣う。ギリギリのところで私はソレを躱します。それから施設で普及されたダイレクトストーカー用の剣を構え。


「ところで、ダイレクトストーカーの運用ってお金が掛かるのでは?」


 アルマに問います。


「整備費用だけでも馬鹿になりませんよね?」


「うん」


「こんな争いごとで壊して良いんですか? 修理で済むならまだいいでしょうけど……不可逆に壊れてしまった場合、遺産の喪失にも近いように思えますけど」


「ああ。トールはその辺に詳しくないのか」


「?」


 ――結論から言ってしまえば杞憂だぞ。


 ジュリアンも苦笑を声に滲ませて。


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