第71話:私の愛馬は凶暴です01
「はへ? トール親衛隊?」
で、転校から数日後。ジュリアンとホットサンドを食べていると、そんなイミフな固有名詞がこっちの耳にも届いて。
「そうです! トール嬢を崇拝する組織を作りたいのです!」
何を仰っているんだろう此奴。
しばし青空を見上げて黙考。提案した男子生徒はこっちにキラキラした目を向けていた。
「私は然程大層な存在ではありませんけどぅ」
「でも超可愛いじゃないですか?」
「あら。ありがとうございます」
「特に髪が綺麗で……テイスティングしたいです」
「うわぁ」
「あ、その蔑みもポイント高いです。踏んでくださいませんか?」
「調子に乗らないでくださいぃ」
抗議として男子生徒の足を踏む。
「ありがとうございます!」
そう来るかぁ。
「なのでトール様に踏まれ隊の結成を認めていただきたいのです!」
「さっきは親衛隊って言ってませんでしたぁ?」
「トール様に踏まれたいんです!」
「変態」
「ありがとうございます!」
どれだけマゾなのかと。
「そんなわけで哀れな子羊に崇拝の対象を持ち上げて貰えれば……」
「ジュリアンはどう思いますぅ?」
ホットサンドをガジガジ。
「人を踏むぐらいならセーフ」
「本気で言ってますのぅ?」
「でも愛は無い方が良いぞ」
無論湧きようもないんですけども。
「とにかく私はジュリアンのパートナーですのでぇ」
「ジュリアン氏。独占禁止法に抵触しますぞ」
「だってトールは可愛すぎるし」
「ですよねー!」
彼らで盛り上がっていた。ホットサンドをガジガジ。
「その御御足がカモシカのようで……」
「覗かないでください」
キュッとスカートを抑えます。
「もちろんトール様の下着を覗こうなんて破廉恥な真似はいたしません」
というか男だとバレてしまうので。
「踏んでください!」
とジャンピング土下座二回転一回捻り。
「気持ち悪いです。生きている価値在るんですか? ガチで蟻走感覚えるんですけど、これって訴えたら勝てるレベルですよね? ほんとその異常性癖で私に近付くなんて存在そのものがセクハラと言える害獣以上にはた迷惑な畜生ですよね」
土下座してきた男子生徒の頭をかかとで踏んでグリグリと踏みにじります。
「ああ……。トール様……」
「名前呼ばないでください汚らわしい」
「ありがとうございます!」
そんなわけで『トール様に踏まれ隊』がここに結成されました。




