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第7話:信綱、異世界へ行く07


 翌日。僕は過去最悪の目覚めを体験した。牢屋の中での起床である。


「なんだかな」


 両の手にはめられているのは魔素を受け付けない『フリクションメタル』と呼ばれる金属でできた手錠だ。これをされている限りにおいて僕は魔術を使うことが出来ない。つまり優位性の確立を出来ていないわけだ。別に魔術にべったり頼っているわけでもないから不便はないんだけど……さ。


「さて……」


 牢屋を見る。


 僕一人の個室。トイレはボットン便所。良く言って牢名主。事実は囚人。


「はぁ」


 溜息をつくほかない。まぁ事情としてはプライベートを侵害したのだ。治安のために殺されても文句は言えないのだけど、それにしたって……。


 カチャリと手錠が鳴る。


「逃がさんぞ」と僕には聞こえた。魔術さえ使えればこんな牢屋は出ることが可能なのだけど、異世界トリップの身としては他に行くところもないので囚人の身に甘んじている。まぁ御飯を食べさせてもらえるだけマシと云ったところか。


「くあ……」


 欠伸が出る。くしくしと眠気に目をこすっていると、


「上泉」


 と声がかかった。


 当然牢屋の外から。


 燈色の髪に燈色の瞳を持つ美女……パワーである。お供に兵士らしき武装した人間が二人ほどついていた。パワーは牢屋のカギを開放して、


「出ろ」


 と僕に命令してきた。


「へぇへ」


 僕は手錠をされたまま牢屋を出る。連れて行かれた先は(後に聞いたことだが)パワーの執務室だ。それから執務机に着席し、手錠をつけたままの僕をソファに座らせる。


「貴様らは外で待て」


 護衛の兵士にパワーは当然とばかりに命令する。


「は……しかし……」


「二度目は無いぞ?」


「了解しました」


 了解されちゃったらしい。


 パワーの護衛である兵士二人は部屋の外に出た。パワーの執務室には僕とパワーの二人だけ。黒と燈の視線が錯綜する。


「さて……」


 パワーが机に両肘をついて顎を支えると問うた。


「お前は何者だ?」


 根本的な質問を。


「永世中立的な一般市民です」


 他に答え様がない。


「一般市民が魔術を使えるはずもなかろう。それもダイレクトストーカーの魔術に抗するほどのアンチマジックを」


「……………………」


「はっきり言って狂気の沙汰だ」


「狂気の沙汰ほど面白いって言いません?」


「快か不快かは後ほどだな」


 ですか~。


「いったいどういう原理だ? ダイレクトストーカーを一時的にとはいえ機能不全に追い込むなど」


「適切な状況判断と適当な戦闘能力を持っていれば可能かと」


「本気で言っているのか?」


「無論」


「ふむ……」


 パワーは一度天井を見上げて、それからまた僕の黒い瞳を覗き込んだ。


「話を最初に戻すぞ。お前は何者だ?」


 こりゃ誤魔化せないな。


 やれやれ。


「異世界から来ました」


 ぶっちゃけた。


「異世界?」


「さいです」


 真摯に燈色の双眸を覗き込む。


「ふむ」


 と唸った後、


「まぁそれについては後の議論として」


 納得したわけではなかったらしい。なんでよー。


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