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第61話:少女が見た流星04


「先に頂きます」


「あ、ああ、それじゃ」


 こっちを意識したのか。狼狽えた表情のジュリアンにクスリと笑って、浴場まで着替えを持って。長髪と身体を洗った後、温泉の広い湯船に浸ってふやけました。


「ふやぁ~……」


 お風呂の文化が異世界にもあったのは僥倖でしょうぞ。ジュリアンが籍を置いているところにも温泉はあるそうなので、その点の心配は杞憂に終わりました。


「いい湯ですねぇ。のほほん」


「その……。湯加減はどうだ?」


「ちょうど良いですよぅ。まさに御機嫌」


 そこまで返答して、そこからハタとなりました。ジュリアンの声が聞こえたと言うことは声の主が現われたということで。


「し…………失礼する」


 男の裸体を晒してジュリアンが現われます。鍛えられた身体にスラリとした体形。男ならではの……それはスタイル。


「俺様も一緒に入って良かったか?」


「構いませんけどぅ。都合は宜しいですしぃ」


「そっか。じゃあ――――」


 と、そこまで言って私の裸を見て硬直します。


 何か?


 不可思議に首を傾げると、ボンと真っ赤に茹で上がるジュリアン氏。こっちの股間に全視線を注いで、グワングワンと頭部を振ります。まるで見るなのタブーを破ったかのように。


「キャ――――ッ!」


 乙女のような悲鳴が上がりました。というか乙女そのものでした。金色のショートヘアが揺れて、アイスブルーの瞳が泳ぎます。バタフライで。


 まぁそりゃ男根ついてれば思うところも在り申し。


「男……だったんですか?」


「女だと明言した覚えもありませんよぅ」


 可愛い御尊顔しているのは認めるけども。


「異世界出身で……女装男子で……こっちに損得を求めない……?」


「よく考えると有り得ないことのオンパレードですねぃ」


 ホケッと風呂に浸かりつつ、湯気に近しい温度の吐息をつく。


 きっとこの世に在る恋愛の歪さを、私はちょっと経験している。それは楽しいことばかりじゃなかったけど、でもたしかにトール=アラクネの骨子になるもので。


「う……あ……」


 ホロリと涙の零れるは。


「あれ?」


「うぁぁぁ……うぁぁぁぁぁぁああああぁぁぁぁ……」


 彼のもので。こっちが男根ぶら下げて温泉に浸かっている様を見て涙を流し、慟哭を響き渡らせる。男の自明。女の理。ソレらが何を意味するのかを、今の私には把握も出来なくて。でもきっとその涙にも意味はあるのだろう。


「トール……ッ!」


「はいぃ」


「トール様!」


「はあ?」


 ギュッと抱きしめられました。金色の髪が視界いっぱいに広がります。


「お願い……助けて……」


「あなたを……誰から?」


「俺様のパートナーになってくれ……ッ」


「一から説明してください」






 そんなわけで仕切り直し。




 起伏のある肢体をタオルで包みながらジュリアンは恥じらいつつもこっちに暴露しました。乳房がタオルを押し上げ、腰からお尻の曲線が芸術的。湯気がもうもうと立ちのぼる暖かみの風景に……その肢体はとても映えます。まさに大理石から彫り上げたような黄金比の彫像の肉体美を持つ彼女を何と例えたモノか。ミケランジェロでもここまでの完成度は再現出来ないのではないか……と思わせるに十分な、それはあまりに魅力を振りまく肢体で。豊かで張りのある乳房。下品でないギリギリの大きさのお尻のライン。なにより病的に細い腰が彼女のモデル体型に画竜点睛を決めていました。


「ジュリアン……あなた女だったんですか?」


 ここで漸く私たちは互いに勘違いから解放されました。私の方は胸のない女性と思われがちな男の娘で、ジュリアンは美少年と思わせるに十分威厳のある美少女で。


「でもそれだけ胸があれば気付きそうなモノですけど……」


「幻惑の指輪で誤魔化しているんだ。これを嵌めると性別が偽れるぜ」


 実際に指輪を嵌めると、視覚的には彼女は男の姿になった。あくまで幻影としての効果らしく、実際には男の体に変質したわけではなく、


「ふむ」


 何も見えないジュリアンの胸元の虚空に手を差し出すと、見えないおっぱいがムニュムニュと感触を伝えてくる。また指輪を外すと、彼女の女体が現われました。


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