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第50話:乙女に神風の舞い降りて13


 さて……「イエスマム」とは言ったものの哨戒任務自体は初めの内こそ大したものじゃなかった。


 何時でも何処でも敵軍に対応できるように装備は軽めにしてあるし、攻撃の手段は概ね魔術。


 その攻撃手段さえ使うことはなかった。


 一日目の哨戒を徒労にして、その日の夜は僕たち揃って火を取り囲み穀物バーを食べ水を飲む。


 水は青いダイレクトストーカー(名をヴォジャノーイというらしい。水の妖精の名だ。ミシェルのサラマンダーなども含めてそれらはフェアリーシリーズと呼ばれていることを大佐の口から聞いた)にて哨戒任務の護衛についていた大佐の魔術で創られたものだ。


 つまり大佐がいて魔素がある限り水分の心配はないことになる。


 穀物バーはそっけない味だけどこの際気にした方の負けだろう。今が軍事訓練であることを思えば。


「……あの」


 と穀物バーを食べながらフォースの燈色の瞳が大佐を捉える。


「どうかしましたか?」


 紳士的に応じた大佐であったが生憎と筋骨隆々で粗野なイメージが丁寧な言葉を地に貶めていた。


 大佐とて兵士であるためしょうがないと言えばしょうがないんだけど。


「……お姉ちゃん……パワー少将は……砦ではどんな人ですか?」


「立派な方ですよ」


 一人酒を呑みながら大佐は返す。


「自分にも他人にも厳しい人ですが、それ故にパワー砦は一枚岩で動き屈強な砦として蒼の国に対抗できているわけです」


「……そう……なの?」


「ええ。ですからフォースさんへの対応を見たときは驚きました。まさかあれほど甘い面が少将にあろうとは……」


「……私にとっては……甘々なお姉ちゃん……なんだけどな」


「ギャップ萌えですね。実際一対三程度の戦闘ならば生身であろうとダイレクトストーカーであろうと他者を寄せ付けない戦力をお持ちです。チェスにおける……」


 こちらの世界にもチェスはあるらしい。


「キングのポジションでありながらキングは最も強くあらねばならないと豪語している人です。そしてそんな最強の力の元にプライドを維持している兵士たちが集まり士気を際限なく高めている。つまり蒼の国との国境線に一筆加えることの出来る能力をお持ちです」


「……そっか」


 パチパチと鳴く焚火を見ながら喜悦の色を燈眼に映すフォースだった。身内を褒められて嬉しくないはずもないだろうけど。


「問題は……」


「問題は?」


 大佐の言葉を繰り返したのは僕だ。


「あまりに少将の功績が大きいため砦の兵士たちが出世できないってことですね。あはははは。まぁほんの愚痴程度ですが」


 頭を掻きながら照れ笑いをする大佐。


「少将には秘密ですよ?」


 悪戯っぽく笑って口止めをする。悪童のような表情と声質。


「さ、子どもはもう寝なさい。明日の哨戒任務の開始も早いですから」


「警戒は?」


「不肖ながら私が相務めます。たとえダイレクトストーカーが襲ってきてもあなた方だけは逃がして差し上げますのでその辺りの憂慮は杞憂です」


 さいでっか。


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