第49話:乙女に神風の舞い降りて12
閑話休題。
そんなわけで実際にダイレクトストーカーを動かして国境を守っている熟練の兵士と、オムツもとれていない新米以下の学院生が、ダイレクトストーカー同士で戦う(というか一方的にいびられる)訓練が現在の状況。
ちなみに一応僕もパワー砦のダイレクトストーカーにいっぺん乗ったばってん相も変わらずマジックサーキットがオーバーフローする結果だったばい、まる。
結局のところトテチタニウムでアンキャパのマジックサーキットを実現せねば僕はダイレクトストーカーを操ることが出来ないらしい。そんなわけでアリアを神風に変換して搭乗。
斬撃剣村正は危なすぎるので封印して、退魔剣正宗で訓練として敵対している軍人さんと矛を交えている次第だ。遠距離からの魔術は全て正宗で弾き、しびれを切らして襲い掛かってきたダイレクトストーカーの一撃を避け、隙だらけになったソレに向かい、
「四番サード……!」
と呟きつつ正宗をバットの要領で握り込み、
「ホ~ムラ~ン!」
と夕空目掛けて打ち飛ばすのだった。カキーンというには鈍い金属音と共に軍人さんのダイレクトストーカーは場外となる。
「次」
神風でクイクイと手招きをするけど、既にホームランされたダイレクトストーカーは四機。
残りは三機。
内一機は僕の魔力によるオーバーフローでマジックサーキットを完全破壊され修復には一週間かかるとのこと。
つまり計七機がパワー砦を防衛しているわけだ。
これにはパワー専用機であるハイパワーも含まれる。
そんな貴重なダイレクトストーカーをこれ以上消耗させるのは砦としてはマズイとのことで戦術上僕のダイレクトストーカー訓練は免除された。
残念。
アリアは元より事情を斟酌されているため(僕が供給した魔力の貯蓄分くらいはダイレクトストーカーを動かせるだろうけど)免除。
ミシェルはオリハルコンの白金をワインレッドに染めてダイレクトストーカーを動かしていたけど奮闘虚しく……というところだ。
この辺は実戦経験の差が如実に表れる。
フォース?
言うまでもないでしょ。
そんな風に兵士としての心構えを植え付けられているというか叩き込まれているというか……いっそ「虐められているんじゃないか?」とフォースとミシェルが思ってもしょうがない訓練の日々が三日ほど続き、
「では哨戒任務に就いてもらう」
指令室に呼ばれた僕とかしまし娘はパワーの命令によって哨戒任務……という名の威力偵察に出ることになった。
部屋にいるのは僕とかしまし娘とパワーとそれから威厳をもった筋骨隆々な大男が一人。
筋肉達磨は名をハンプティといい地位は大佐らしい。
「こっちがハンプティ大佐。諸君らと共に哨戒任務に就く兵士だ」
ザッと軍靴の音を立ててハンプティ大佐は敬礼した。
合わせて敬礼する僕たち。
「本当はね……。お姉ちゃんがフォースとそのおまけの哨戒任務に護衛としてついて行きたいんだけど……」
どんだけシスコンなんだこの将軍。
というかフォース以外はおまけなのかしらん?
「少将は砦の指揮官であり同時に砦最強の軍事力でもあります。いかにダイレクトストーカーが護衛につくとはいえ何が起こるかわからない以上、少将が砦を離れるわけにはまいりません!」
敬礼したままハンプティ大佐が言った。
「まぁ実際私のダイレクトストーカー……ハイパワーと生身で戦って勝てる上泉がいるから蒼の国がダイレクトストーカーを持ち出してきても憂慮は無いんだがな」
「是」
と大佐。この人も中々苦労人らしい。さてさて、
「では今日は哨戒任務の詳細を確認した後に休養。実行する明日に備えよ。解散!」
「イエスマム!」
僕たちは再度敬礼した。




