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第47話:乙女に神風の舞い降りて10


「ふぉ~お~すっ!」


 決闘終了後。神風をアリアに戻してサラマンダーを整備庫に格納した後、さてどうしようと思ったところで一人の美女がフォースに抱きついた。


「フォースフォースフォース格好良かったよぉ! 一人であれだけの魔術が扱えるなんて進歩したねぇ! お姉ちゃん感動したよぅ!」


 思考強化。フォースに抱きついた美女はフォースと同じ燈髪燈眼。体躯は出るべきところがフォース以上に出ており引っ込むべき所がフォースと同程度。顔のパーツはフォースに酷似しており、しかしてフォース以上に完成された美を持つ。だいたいフォースの時間を数年分加速させた結果、生まれるであろう架空美女がそこにはいた。思考強化終了。


「パワーお姉様……!」


 ミシェルが息を呑む。そう。それで正解。フォースの姉にして蒼の国との国境を定義するパワー砦の主。パワー将軍がそこにはいた。


「ていうか何でいるの?」


 至極真っ当な意見だったろう。


「姉が妹の応援に来て何が悪いというんだ?」


 フォースとその他で態度がまるで違うねこの将軍。


「砦は放置していいの?」


「大佐に任せてきたから大丈夫だ」


 ちなみにパワーは少将らしいです。


「それよりしっかり友達やってるか?」


「とは言っても……」


 王命で一ヶ月ほど学院と王都とを往復したからなぁ……。


「それについては聞いている。ええと……」


 パワーが白い美少女を見る。


「そっちがトテチタニウムか」


「アリア……って呼んでね」


「うむ。私はフォースの姉のパワーだ。陛下より少将の座を賜っている」


「にしてはフットワーク軽いね」


「現状やることもなかったものでな。それに理由が無いわけでもない」


「そ」


 ちなみにこの会話の間にもパワーはフォースを猫可愛がりしていた。おかげで妹さん……苦しそうだ。豊満なバストに顔を埋められるのは僕としてはご褒美だけど実の姉にやられて喜ぶ妹もいるまい。一種のハラスメントじゃなかろうか?


「フォース?」


「……っ!」


 むぐ、と呻くフォース。息さえできていないらしい。


「ああ、ごめんね」


 やっとこさ理解したパワーがフォースを開放する。妹が咳をして呼吸を整える。


「それにしても良く魔術が行使できるようになったじゃない」


「……信綱と……ミシェルの……おかげ」


「ども」


「……っ」


 僕は平然と、ミシェルは唇を噛んだ。ミシェルの感情は悔恨だろう。


「ミシェルっていえば大貴族ブロッサム家の麒麟児ではなかったか?」


「だね」


 肯定する僕。次の瞬間、肉体が弾けるように動いた。思考強化。運動強化。パワーが一瞬で腰に差した剣を抜いてミシェルに躍りかかったからだ。振り下ろされる剣を僕は無刀取りで止めた。奪った剣の切っ先をパワーの喉元に突きつける。何を考えているんだ……このバカは……。


「何故止める!」


「むしろ何ゆえ動いた?」


「ミシェルとは私の妹をいびっていた当人そのものだろう! そんな害性因子は早めに取り除くのがフォースのためだ!」


「だってさ」


 僕はフォースとミシェルを見る。フォースはおどおどしていて、ミシェルは悔恨に唇を噛み破ろうとしていた。


「……お姉ちゃん……ミシェルを殺しちゃ……駄目」


「何故だ?」


「……友達……だから」


「しかしてフォースは泣いていたじゃない。ミシェルとその取り巻きたちに嘲弄されたっていつも泣いていたじゃない」


「……でも……今は友達。……だから……殺しちゃ……駄目」


 僕は器用に手に持った剣をパワーの腰にある鞘に刺し戻す。チンと音がした。


「ミシェル? 何か弁明は?」


 これは僕の言。


「私はパワーお姉様に憧れていましたの」


 それは知ってる。


「だからパワーお姉様の妹御と同じ学年であることに狂喜しました」


 ああ、なるほど。


「でもフォースはパワーお姉様と違い劣等生でした。私はそれに『裏切られた』と感じましたの。だからフォースが許せなかったのですわ。パワーお姉様の名を貶めるフォースのポテンシャルが憎くてしょうがなかったのです……っ」


 ギュッと拳を握り込むミシェルだった。優秀な魔術師であり軍の最高責任者の一角であるパワー。その妹御であるフォース。そこに隔絶される技量故にフォースはパワー将軍を貶める存在として虐められていた。その筆頭がミシェルだとしても……その発端となる感情は憧れだったのだ。まぁ僕にはどうでもいいんだけど。


「……でも今は……私の魔術の……師匠。……だから……お姉ちゃん……ミシェルを……罰しないで?」


「フォースがいいのなら構わないが……」


 パワーとてフォースの言には逆らえないようだった。シスコンとも言う。


「で? 無いわけじゃない理由って?」


「うむ。もうすぐフォースは遠征実習だろう? その迎えに来たのも含まれる。とはいってもフォースには友達が少ないからな。それについてのことをこちらで何とかしようと思って顔を出した次第だ」


 にゃるほど。


「……大丈夫。……メンバーは決まってる……よ?」


「そなの?」


「……そなの」


「ちなみに?」


「遠征実習の御供は信綱とミシェルとアリア」


 あー……ちなみにアリアも人間形態の時はストーカー養成学院の生徒ということになっている。その辺はオレンジのごり押しで。権力って素敵ね。


「ふむ」


 思案するようなパワーの返事。


「……駄目?」


「とはいわないがフォースはミシェルを許せるの?」


「……許せる……よ?」


「ならば私が言うことはあるまい。明日にはパワー砦に向かうとしよう」


 その前に状況を教えてほしいんだけど?


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