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第45話:乙女に神風の舞い降りて08


「あ」


 っという間に二週間が過ぎた。


 今日はミシェルの占有権をかけて決闘を行なう当日。


 ちなみに状況については概ねミシェルの言うとおりだった。


 ミシェルと僕の決闘と違ってコロセウムで行なわれる決闘の見学に来たのは学院の生徒や講師……それから興味本位の野次馬がちらほら。


 さて……僕はというとアリアに魔力を注いでダイレクトストーカー神風へと変質せしめ、それに搭乗していた。既にリンクはしている。ダイレクトストーカーは人間の運動信号をクラックしてマンフレームに伝えることで動く。


 であるため僕は僕ではなく今は神風と相成っているわけだ。


 漆黒の全身は鎧武者を模したもの。


 ミウラ折り……というものを知っているだろうか。折り紙の実践論が人工衛星のパネル展開において利用されているというアレだ。


 神風の装甲も折り紙の原理に近い。


 多層構造。


 波打つ甲冑型装甲。


 大気中の魔素は魔術師の表面積が広ければ広いほど魔素をより多く吸収する。そのためのダイレクトストーカーだ。


 で、ある以上スケールリミッターの観点において神風を超えるダイレクトストーカーは存在しない。


 イメージリミッターとして剣の魔術しか使えないのが難点ではあるけど元より僕は上泉伊勢守信綱の先祖返り……つまりは生粋の剣士である。故に不便は無いのだった。


「……本当に……勝てるのかな?」


 隣のサラマンダーがそう言ってきた。サラマンダー……それは本来ミシェルが駆り火の属性を示す赤色にオリハルコンを変色せしめるはずではあったけど今は搭乗者が違うためサラマンダーの色は赤ではない。


 緑色だ。風の属性を意味する色。


 つまり搭乗者はフォースである。


 背中のジェットは火の属性を持たないフォースには意味の無い代物だろう。


 オレンジのレーヴァテインの様に魔術の翼を展開できるなら話もまた違うだろうけど、そこまでの器用さを僕はフォースに求めていない。


 風属性なら飛べそうなもんだけども……。


「大丈夫」


 そんな思考なぞおくびも見せずに僕はフォースを励ました。


「教わった通りのことをやれば勝てるよ。そのためにフォースは頑張ったでしょ?」


「……あう」


 こういうところは可愛らしいと思える。今のフォースの姿は妖精的なフォルムをしたダイレクトストーカーなんだけどさ。


 で、今の状況がどうかというと神風とサラマンダーにリンクしたまま僕とフォースは決闘の合図を待っている最中というわけだ。


 神風の手には退魔剣正宗が握られている。


 サラマンダーは武器を持っていない。つまり純粋な魔術勝負をするつもりなのだろう。


 それから相手を見やる。汎用量産型ダイレクトストーカーであるアームが二機。燈の国の主力兵装でありコスパの高い量産品だ。


 特徴が無いのが特徴という何とも虚しい外観をしているけど哀しいかな……それも量産型ロボットの運命と言えるだろう。敵対するダイレクトストーカーたるアームの色は青と黄。つまり水属性と土属性の魔術を使うであろうことは明白だ。


 オリハルコン自体は魔力を通さない限り白金を保つ。そして魔力を感知してストーカーの扱う魔術の色に変化するわけだ。


 僕の黒色にはどういう意味があるのかわからないけど、少なくとも相手のダイレクトストーカーの色については簡単に考察できる。


 青は水属性。


 黄は土属性。


 そしてフォースは風属性。


 水は土に弱く、土は風に弱い。当然それはフォースもわかっているわけで、むしろその優位性がプレッシャーに相成ってさっきから怯えているというわけだにゃん。


「……本当に大丈夫?」


「だいじょうブイ」


「……でも」


 わかってるよ。


「僕が青色のダイレクトストーカーを相手取るからフォースは黄色のダイレクトストーカーをお願い。風の属性をもてば勝てるでしょ?」


「……信綱に勝算は……あるの?」


「負ける気は全くしないね」


 心底本音だったのだけど、


「安く評価してくれるな」


 青の方のダイレクトストーカーの御者が言葉を吐き捨てた。


 とは言われてもね。


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