第43話:乙女に神風の舞い降りて06
その日の夜。僕は当たり前だけどお風呂に入っていた。それはともあれ。
「何で君たちまで入ってるの?」
水着を着たフォースとミシェルとアリアに問う。
「お兄ちゃん。質問の意図は明確に」
これ以上なく明確だと思うんですがどうでしょう?
「……私じゃ……駄目?」
何が?
「アリアやフォースが入るというのに私だけが取り残されるわけにはいきませんわ」
だーかーらー……何が?
「別に一緒に入ったからってニャンニャンイベントは起きないんだよ?」
「モーホーですの?」
ぶっ○すぞこのやろう。
ちなみにいつも通りにフォースとミシェルがビキニでアリアがスク水である。
「お兄ちゃん!」
「はいはい」
「魔力とイメージ頂戴!」
「そうだね。アリアを無害な金属に変えれば多少は場も鎮まるかな?」
「ボンキュッボンのイメージを頂戴!」
人の話聞いてるのかなこの子は……。
「そんなことをしたら理性のタガが外れるから駄目」
「……私の……胸でも……足りない?」
僕の右腕に抱きついているフォースがふよんとした物体を僕の腕に押し付けてくる。
「私のとて中々でしょう?」
僕の左腕に抱きついているミシェルがほやんとした物体を僕の腕に押し付けてくる。
「恥じらいを持たない女の子は嫌いだな」
「お兄ちゃんのそーゆーとこ童貞っぽい」
「黙らっしゃい」
……事実だけども言っていい事と悪い事は常に存在する。
僕の胸に抱きつく形でアリアが、右腕に以下略でフォースが、左腕に以下略でミシェルが……それぞれ扇情的な瞳と体つきとアピールで僕を誘う。
「あー……」
トントンと後頭部下位の首筋をチョップ。お湯にのぼせて、女の子にのぼせて、鼻孔の血流が噴き出しかねない。思考強化。運動強化。僕は引き延ばした固有時間の中で一人だけ迅速に動いた。抱きついていたかしまし娘を振りほどいて跳躍。広い浴場のかしまし娘から最も離れた位置にて再度入浴を開始。固有時間が平常に戻る。それからザバンと遅れたように水柱(お湯だけど)が起こり、急にいなくなった僕の姿を求めて目をパチクリさせるかしまし娘だった。知ったこっちゃないけどね。初めに認識を改めたのはミシェルだ。
「別に魔術を使ってまで……」
「普通に振りほどいても意味ないでしょ」
遠近法で軽くあしらう。
「ちなみに僕に近づくなら決死の覚悟を持つことだね」
「……むぅ」
「むぅ」
「お兄ちゃ~ん」
かしまし娘は不満そうだった。状況に流されやすい僕だけど……というかだからこそこういったことにおいて状況に流されるわけにはいかなかった。六根清浄六根清浄。
「ところで」
話題転換。
「決闘ってことはまた貴族やら王族やらが来るの?」
少なくとも以前の僕とミシェルの決闘は王族御前試合にまでなった。一種のお祭り騒ぎだ。ダイレクトストーカー同士の戦いと云うものは戦争としての道具や兵器と云った側面を持つものの、それとは別にロボットロマン的なエンターテイメントとしても人気が高いのは僕とて承知している。こっちの世界に来てまだ日は浅いけどそれくらいは読み取れた。
「いやぁ無いでしょうね」
しかしミシェルはサッパリと否定した。
「何でぞ?」
「あの時のお祭り騒ぎは私と信綱のネームバリュー故ですので」
なるへそ。たしかにパワーとオレンジの意思疎通が無ければ学生の……しかも異世界出身の初心者の決闘なぞ観に来はしないだろう。そこまでミシェルが理解しているかは別として。




