第42話:乙女に神風の舞い降りて05
「もうお止め下さいミシェル様!」
「その言は聞き飽きましたわ」
「どういう展開?」
「……あう」
順番にミシェルの取り巻き、ミシェル、僕、フォースの言です。僕がミシェルの取り巻きに不審を覚えていると、フォースが語ってくれた。
「……あの……ミシェルが……女王陛下の提案で……私の……魔術の指導に……あたっていたんだけど……それが……ミシェルの取り巻きさんたちには……面白くない……光景で。……だから……私とミシェルとを……引き離そうと……してるの」
にゃ~る。
「なはは。くだらないなぁ」
アリアの言葉と表情にはとびっきりの皮肉がついてきた。
「へっぽこはへっぽこ同士がお似合いです! 上泉が戻ってきた以上、フォースの指導は上泉に任せて構わないではありませんか!」
理論にすらなっていないのだけどつっこむべき所だろうか?
「話になりませんわね」
ミシェルは切って捨てた。
「だいたい誰を以てへっぽこと言いますの?」
挑発。
明明白白だ。
「フォースと上泉が、です」
取り巻きの一人が明言する。
「ほう?」
眉をひそませるミシェルだったけど、どう考えても演技でしかないだろう。
「フォースはパワーお姉様の妹御ですわよ? その秘めたる才能は類を見ませんわ。実際に私の指導の下、一ヶ月でワンワード魔術を習得しました。末恐ろしい……晩成の大器と言えますわね」
「現時点の話です」
「それを克服し成長するためのストーカー養成学院でしょう?」
ところで今更なんだけど、この国の人間は『ストーカー養成学院』という発音に疑問を持ったりしないんだろうか?
「それとも何か? あなたの魔術師……ストーカーとしての能力は戦場で成果をあげられるほどのものとでも?」
「それこそ……っ……学院の生徒ですから誰でも条件は一緒でしょう?」
「ええ。そしてフォースも一緒ですわ」
ニコリと表面的な笑みを作るミシェル。シニヨンに纏めた赤い髪が鮮やかに光る。赤い瞳に宿るのは嘲弄のソレだ。取り巻きさんたちは気づいてやしないだろうけど。
「何より女王陛下とパワーお姉様に御言の葉をもらった以上……私はフォースを立派なストーカーにしてみせますわ。きっとあなた方が手を出せなくなるほどの」
「……っ」
言葉を失う取り巻きさんたち。
「では上泉は……! せっかくの魔術を近接戦闘に集中させてるへっぽこでしょう? 何を以て保護なさるのです!」
「それこそ議論の余地なぞありません」
…………。
「なはは」
楽しそうだねアリアは。
「マジックサーキットをオーバーフローさせるほどの変換効率を持つ人間ですわよ? おそらく当学院最強と言っても過言ではありませんわ」
「過言です!」
過言じゃないかな?
「なら試してみればいいのですわ」
何を?
「決闘をしてどっちが優れているか決着をつければ話は早いでしょう?」
いやいや。
なんでそんな面倒なこと……。
そんな僕の思いも知らず、
「わかりました」
取り巻きは頷いた。
何がわかったんだろう?
「では決闘で白黒つけましょう」
これは取り巻きさんたちではなくミシェル。
ちなみに誰と誰が?
「無論、信綱およびフォースと十把一絡げが」
あ~。
「なんだかなぁ……」
困っちゃってポリポリと頬を食指で掻く。
「逃げはすまいな上泉?」
「正直に言えば面倒くさい」
心底本音だ。
「ミシェル様と一緒にいていいのは我々だけだ」
「オレンジの言を尊重しないと?」
「女王陛下を愚弄するか!」
ただのちんちくりんだろう。少なくとも僕にとっては。
「なはは」
アリアが笑う。
「別に忌避することもないでしょ?」
簡単に言ってくれる。
「お兄ちゃんは強いんだから、その強さを示せばいいだけじゃないかな?」
確かに状況に流されやすい僕ではあるんだけど……。
でもさぁ。
なんていうかさぁ。
「それに何の意味があるの?」
他意なく言ったつもりだったけど、
「ダイレクトストーカーをまともに動かせない欠陥品がよくも!」
十把一絡げを刺激してしまったらしい。
「決まりですわね」
コックリとミシェル。
あの?
僕の関知外で話が進んでいませんかにゃ?
「ダイレクトストーカーの調整および操縦の慣れ、それから決闘の準備期間を含めて……二週間後で良いですわね?」
「構いません」
十把一絡げが頷く。
「茶番だ」
僕は一言で切って捨てた。
「仮に十把一絡げが全員で襲い掛かっても負ける自信が無いよ?」
「愚弄するか! 上泉!」
「端的に事実を口にしただけなんだけどにゃ~」
「なら逃げはしまいな?」
「ダイレクトストーカーだって巡り巡って学院の備品でしょ? 負け戦に使うのは推奨できないなぁ……」
「お前がそれを言うか……!」
それについての反論は無いけどさ。
なんだかなぁ。
状況に流される感じがあるよね。僕の悪癖だ。




