第40話:乙女に神風の舞い降りて03
「お兄ちゃん?」
はいはい?
「魔力を頂戴」
「さっきあげたでしょ」
ちなみに僕ら……お風呂に入っています。さすがに貴族専用の寮部屋ということもあって風呂も広く、ついでに甲斐甲斐しくミシェルの使用人が尽くしてくれる。で、そんな広い浴場に僕とフォースとミシェルとアリアで入っているというわけだ。
最初は僕が一人で入る予定だった。が、そこにアリアがついてきた。ジト目になるフォースとミシェル。あまりに居心地が悪かったためフォースとミシェルも一緒に入浴することに。
状況に流される僕の悪癖がここでも活きてくる。美少女かしまし娘とお風呂なんて並みの青少年ならば垂涎ものだろう。僕の性欲をなめてもらっては困る。ねじ伏せるには多量の気合いを必要とした。まぁ結果的に水着着用での入浴に落ち着いたわけだけどアリアはともかくフォースとミシェルは出るとこが出て引っ込むとこが引っ込んでいる。しかも水着はビキニ。エロエロだ。性欲マシマシつゆだくだくで。
閑話休題。
「なんでアリアはちんちくりんなんですか!」
「それが一番無害だからに決まっているでしょ」
他に何を言えと?
「お兄ちゃん、いいですか……」
「何さ?」
「アリアはトテチタニウムです」
「知ってる」
「お兄ちゃんの魔力とイメージ次第で幾らでも千変万化しますよ?」
「それも知ってる」
「お兄ちゃん好みのボンキュッボンへの変態も可能なのです!」
「んなことすると僕の性欲が抑えきれなくなるから駄目」
「抱いてほしいんです!」
「ていうかトテチタニウムって子ども作れるの?」
「当たり前じゃないですか。今現在においては一般的な人間と構造は変わらないんですから。本来なら金属に分類するのさえ間違っている存在なんですよアリアは」
六十四へぇ。
ちなみにアリアはスクール水着姿である。僕がアリアに魔力を供給してスク水姿に変えたわけ。当然胸部には、
「ありあ」
と名前が施されている。
ベタだ。
「お兄ちゃん?」
「何さ」
「今こそアリアをボンキュッボンに……!」
「却下」
「あうう~」
悔しそうなアリアであった。
知ったこっちゃないけどね。
「……信綱?」
「信綱?」
「なにさ。お二方?」
フォースとミシェルが問うてくる。
「……欲情しない?」
「欲情しませんか?」
浴場だけに?
ごめんなさい。
今のカットで。
「そりゃまぁ魅力的ではあるけど……」
「……抱いて……いいよ?」
「信綱になら……」
「貞操の意識の薄い女の子は好きじゃないな」
童貞が何言ってんだって話ではあるんだけど。
「だいたい何を期待してるか知れないけど……」
いや、知ってはいるんだけど……それはともあれ、
「僕のイチモツは謙虚なソレだよ?」
のしをつけてほしいくらい。
「……そなの?」
フォースがコックリと首を傾げる。
そなのです。
「本当ですの?」
このミシェルの言葉は僕にではなく僕の体を洗ってくれた使用人への質問だ。
「嘘です」
余計なことを……。
「上泉様のソレは凶悪の一言です」
「…………」
何だかなぁ。
無常を覚える僕だった。
「……凶悪」
「ということは」
燈と赤の瞳に剣呑な光が宿る。
「言っておくけどキャストオフする気はないからね?」
「……そんなこと言わず」
「観念なさい」
少しは恥じらいを持ってほしいなぁ。




