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第35話:月は何故落ちてこないのか?13


 女王様……オレンジは全身をライダースーツで固めると、長いオレンジの髪をポニーテールに括った。だよだよ言っている可愛らしい姿はそこにはなく、凛とした佇まいの女王が君臨していた。


「何してんの?」


「何ってダイレクトストーカーに乗るんだからそれなりの格好を、だよ?」


 まぁそこは突っ込むまい。


 僕とオレンジとアリアは王城に誂えられているダイレクトストーカーの整備庫に来ていた。


 十二機のダイレクトストーカーが並んでいて、どれもオリハルコンで出来ているため白金のそれだった。聞くに王城の整備庫に置かれているダイレクトストーカーは十二機全てがエース級の特注機であるらしい。


 実際簡素な人型を持っていた学院の汎用量産型ダイレクトストーカーたるアームと違い、王および王に仕える騎士の駆るのだろう機体は刺々しかったり重厚な印象を受けたり巨大な甲冑騎士を想起させたりと様々だ。


 魔力の質によって人の……というよりストーカーの得意な魔術は違うらしい。必然ストーカーとダイレクトストーカーの間の齟齬を発生させないための調整も必要となるし、ダイレクトストーカーの全身にストーカーの魔力を行きわたらせるマジックサーキットも特別仕様。


 そして国民の血税によって最高級の整備がなされているというわけだ。


 王城の整備庫のダイレクトストーカー一機で歩兵一個師団に匹敵すると言われている……らしい。聞いた話であるためどこまで真実かはわからないけど、ダイレクトストーカーの凄みについては既に経験している。


「これは女王陛下。如何なる用でございましょう?」


「レーヴァテインを起動させるんだよ。必要時間は?」


「今すぐにでも」


「信用するんだよ」


 整備班に向かってコクリと頷き、ポニーテールを揺らして僕を見る。


「信綱だよ?」


「何?」


「これが私のダイレクトストーカー。『世界を終焉に導く炎』あるいは『鮮血の騎士王』ことレーヴァテインだよ」


 そう言って一機のダイレクトストーカーを指差してみせる。全長二十メートルの白金のダイレクトストーカーがそこにはあった。印象としては永野先生がデザインしたような甲冑騎士風のロボットだった。スラリとしたマンフレーム。箇所箇所で細い四肢。装飾華美な装甲。その手には細長い長剣が握られている。


 オレンジは自身のダイレクトストーカー……レーヴァテインに触れて魔力を通す。魔力を供給されたレーヴァテインが動く。立っている状態から片膝をつき、剣を持っていない方の手をオレンジに差し出した。


 僕には、「乗れ」と聞こえたけど間違ってはいなかったらしい。というかコクピットのブレインマシンインタフェースを使わず魔力の供給だけで限定的とはいえダイレクトストーカーを動かすオレンジが何者だ?


 悠然とレーヴァテインの手に乗るとオレンジは外的接触でレーヴァテインを動かし、その手をコクピットのハッチのある胸元までもっていかせる。それからコクピットに呑まれる。ハッチが閉まると同時に本格的にブレインマシンインタフェースで以て魔力を通しレーヴァテインを支配したのだろう。基礎の色であった白金のオリハルコンがオレンジの魔力によって深紅に染まる。それがオレンジの魔力らしい。世界を終焉に導く炎……鮮血の騎士王……基準世界では異説ではあるけど炎の巨人スルトの持つ神話世界を焼き払うとされている伝説の剣の名……即ちレーヴァテインである。


「強い」


 それだけは確かだ。少なくとも受けるプレッシャーはミシェルのダイレクトストーカーであるサラマンダーと比較するのも馬鹿らしい。フォースの姉にして国境紛争の指揮を執る将軍パワー……その駆る紫色のダイレクトストーカーたるハイパワーと同等かそれ以上。深紅の機体は二つ名の通りの鮮血を思わせ、灼熱の業火を想わせる。


 レーヴァテインから声が聞こえてきた。


「信綱だよ?」


 オレンジの声である。どうやって発声してるんだかね。


「なに?」


「王都のはずれにあるダイレクトストーカーの決闘場に行くんだよ」


「ほう」


 学院の決闘場のようなものかな?


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