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第34話:月は何故落ちてこないのか?12


「初代……つまり燈の国を燈の国と定義づけた魔術師が使った万物に変化する金属。その制圧力を持って燈の国は興ったとされているんだよ。私たち王族はその伝説の魔術師の血を引いているから王族たり得てるってわけなんだよ」


「万物に変化する金属ね……」


「ただし行使には莫大な魔力が必要になるんだよ」


「ああ、なるほど……」


 ようやく分かった。


「もしかして基準世界のことを根掘り葉掘り聞いたのって……」


「うんだよ。おそらく初代オレンジ王は信綱と同一か……あるいは近似した環境にいたはずなんだよ。少なくとも伝承によればトテチタニウムは初代以外に扱えた試しがないレアメタル。である以上魔素魔力変換効率が化け物じゃないと扱えないんだよ。ダイレクトストーカーのマジックサーキットをオーバーフローさせるほどの変換効率を持つ信綱ならって思ったんだよ」


「にゃ~る」


 僕はトテチタニウムに近づく。千変万化する光に目を細めながら触れてみる。


「この金属が……ねぇ?」


「トテチタニウムは伝承が言うに質量および質料を本当に万物に変化させうるだよ。だから正確には元々が金属じゃない可能性まである。そんで信綱の魔力でもオーバーフローしない強力なダイレクトストーカーに変化させられるかもしれない。それを可能ならしめるならば燈の国の貴重な戦力と相成るんだよ」


「ふむ」


 つまり僕専用のワンオフ機が得られるわけだ。それも思いっきり魔力を行使して済むような巨大人型ロボットを扱える。


「これにときめかないなんて男の子じゃないね」


 ロマンの産物だ。


「質量および質料が千変万化するんだよね?」


「肯定だよ。ついでに言えば術者のイメージ通りにだよ」


「ということは……」


 ふむり。


「ご起床くださいお嬢様」


 僕はトテチタニウムにキスをして唇から想像と魔力を注ぎ込んだ。創造および変化は苛烈を極めた。グニャリとトテチタニウムが捻じれて質量および質料を変化させると、それは一人の女の子になった。背丈や年齢はだいたいオレンジと同程度。ちんちくりんの幼女だ。長い髪と優しげな瞳は新雪の様に真っ白く、着ている服はこれまた純白のワンピース。それこそトテチタニウムが変化した姿だった。


「なはは。ようやくアリアを起こす者が現れたんだね。何百年ぶりかな?」


 そう言って白色の幼女は僕を瞳に映す。おそらく黒髪黒眼で漆黒の学ランを着た青少年が見えていることだろう。僕自身が黒をパーソナルカラーとしているため、トテチタニウムのパーソナルカラーを白と定めたのだから。


「お兄ちゃんの名前は?」


「上泉伊勢守信綱。呼びにくければ信綱でいいよ」


「じゃあお兄ちゃんで!」


 まぁそういう希望を持つようにしたのは僕自身なんだけどさ……。


「やっぱり私の目に狂いは無かったんだよ」


 オレンジはオレンジでうんうんと頷いている。僕の魔力にトテチタニウム……アリアが反応したことを言っているのであろうことは察せられる。


「……………………」


 僕はといえばトテチタニウム製の幼女……暫定アリアの頬をつねったり白い髪を引っ張ったりした。


「何するのお兄ちゃん?」


「いや、本当に人間になったのかと思って」


「現段階の構成成分はお兄ちゃんと類似するはずだよ?」


「さっきまで金属だったのに?」


「それがトテチタニウムだから」


 アリアは笑った。万全の笑みだった。


「じゃあ地上に戻るんだよ。私のダイレクトストーカーと模擬戦をしてみよだよ」


「アリアはダイレクトストーカーにも成れるの?」


 今更だけどにゃ~。


「お兄ちゃんが望むならダイレクトストーカーにだってバインバインのお姉さんにだって新しい大陸にだって成れるよ? 相応の魔力は対価としていただくけど……ね?」


 さいでっか。


「信綱には私のダイレクトストーカーを見せてあげるんだよ。だから信綱も信綱の望むダイレクトストーカーを見せてくれると嬉しいんだよ?」


「なんだかなぁ……」


 状況に流されるのは僕の悪い癖だ。


「えへへぇ。お兄ちゃん……っ」


 アリアはアリアでうっとりとして僕の腕に抱きついてきた。とても金属で出来ているとは思えない質量だった。幼女相応に軽いのである。実際に今のトテチタニウムはアリアという女の子に成っているから当然と言えば当然なんだけどね。


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