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第15話:ストーカー養成学院05


 ともあれ言うべきは言わねばならないだろう。


「とっても美味しい」


「……本当?」


「インディアン嘘つかない。良い子に成れる」


「……なら……よかった」


 安堵するような……というか実質安堵して胸をなでおろすフォース。


 どうせまた、


「美味しくなかったら上泉が離れていくかも」


 なんて杞憂を思い煩っていたのだろう。それくらいを読める程度にはフォースの感情はわかりやすい。人と接する上では足を引っ張るその性質も、男女で二人きりの状況ならば途端に女の武器へと早変わりするから不気味だ。


 ――だからって手を出すつもりもないけどさ。


 あらかた片付けた後、食後のコーヒーを飲みながら僕はテーブルの対面に座ってコーヒーを飲むフォースに聞いた。


「フォースはさ」


「……何でしょう?」


「何だか知らないけど友達出来ないの?」


「……うん」


 くしゃりと歪むフォースの表情。


 言葉を間違えた。さすがにこれは僕が悪い。


「大丈夫。僕は絶対裏切らないから」


「……うん」


「でも魔術は使えるんでしょ?」


「……そう……だけど」


「学院にいるくらいだ。ストーカーに成れる人材ではあるわけだよね?」


「……うん」


「なにゆえ劣等生?」


「…………」


 表情に自虐……というより自責を乗せてフォースは言葉を選んでいた。


「……上泉も……魔術師でしょ?」


「そらまぁ」


「……なら……魔術の基礎は……押さえてるよね?」


「何を以て基礎とするかにもよるけど」


 なにせこっちの準拠世界と違って基準世界では魔術師はレアだ。少なくとも僕は僕以外の魔術師を知らない。


 ついでに言えば魔術の素養が血統で決まるならば僕が、『上泉伊勢守信綱』を襲名し二代目となることはなかったろう。何せ五百年ぶりの先祖返りである。


 閑話休題。


「……魔術は……大気中の魔素を……吸収して……魔力に変換して……コトを為す」


「だね」


 確かに基礎だ。


「……変換効率……ってわかる?」


「何じゃらほい?」


 裏上泉文書にはそんなものは記載されてなかった。


「……要するに……魔素を吸収して……ソレを……どれだけ魔力に……変換できるか……っていう指標」


「あー……」


 つまり。


「燃費みたいなもの?」


「……うん」


「一人一人違うの?」


「……うん」


 肯定されてしまった。まぁ他に魔術師を知らない以上、僕は比較対象を持てず知りえようもなかったのだけど。


 魔素の変換効率ねぇ……。


 僕自身はあまりに強力な魔素の濃度に辟易している部分があるけど、こっちではこれが普通なのかしらん?


「……私は……劣等生。……魔素から……抽出できる……魔力が……極端に低い」


「そなの?」


「……そなの」


「魔術は使えるんでしょ?」


「……基礎的なモノしか……無理」


「ははぁ」


 だいたい見えてきた。


「でもダイレクトストーカーは扱えるでしょ?」


「……それくらいは……まぁ。……というか……スケールリミッター……を無視して……やっと一人前」


「スケールリミッター?」


 首を傾げる僕。


「何それ?」


「……話が……逸れるけど……いい?」


「四方山話に遠慮は必要ないんじゃないかな? それに僕自身ダイレクトストーカーと云うものを良く知らない」


「……うん」


「言ったでしょ? 右も左もわからないからこの世界のことを教えてって」


「……うん」


 コクリとわずかに頷くフォースだった。


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