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第103話:舞い降りる剣05

「教会の一種だな。特に終末論を振りかざして人類総死亡が救いだと説いている団体。教会協会とは理念が沿わないからかなりマイノリティなんだが、特に呑魔を肯定するあたりでちょっと認識としては生きることの悦びからズレているぜ」


「終末論ねぇ」


 ふむ。


「呑魔というのは?」


「何回か見たろ。魔術師が魔人化したの。ああいう人間としての本質を見失って神秘に至った人間をこそ終末教会は御本尊とするんだぜ。中でも伝説とされる魔人化のさらに上。魔王化とまで為れば教義の体現者とまで持ち上げられるぞ」


「魔王化……」


 ちょっと夢に見たビジョンを想い起こす。あの時の誰が魔王の業を背負ったのか。


「さあ。皆々。ハルマゲドンによって絶対悪は良心に勝ってこの世を滅ぼすのだよ!」


「救われるには魂を差し出して死の安寧に身を委ねることだ!」


「畏れることはない! 元々死に苦痛は存在しない!」


「ただ祈りの下に深い眠りが死を誘うのだからな!」


「ああ、この苦界でも夢を見る死のビジョンこそが全ての幸福の一律だ!」


「皆々終末に於いて眠るように息を引き取ろう!」


「あの世に大聖堂を建てて鎮魂の御座を造りたもう!」


「死こそが救済なり!」


「汚泥の生にしがみつくほど我らは苦しみを抱えるのだ!」


 ご高説有り難いね。


「なんでこの場で自殺しないんでしょう?」


 生きることに意味を見出せないならシュプレヒコールしてないで首かっ切ればいいのに。


「この世界そのものを滅ぼす。ある種のメサイアコンプレックスだぜ。自分が死にたいんじゃない。終末教会は人類を討滅したいんだな」


「可能ですかぁ?」


「うーん。フィーネ当たりならヤって出来んではなかろうが……な」


 終焉の魔女ね。


 紅茶を飲んで、苺タルトを注文します。


「実際に彼女もコナはかけられているようで」


「フィーネの答えはぁ?」


「『死にたいなら勝手になさい』――とさ」


「らしいねぃ」


「わたくしがどうかしましたの?」


「にゃー。御機嫌麗しゅう」


 御本人来ちゃったよ。テラス席に同席して、アルマとフィーネが注文します。清算表は共有で。多分支払うのはジュリアンでしょう。


「フィーネは終末教会にとって教祖にも近い位置取りなの」


「やれと言われれば出来はしますけどね」


 桜色の長い髪をスルスルとかき上げまして。艶やかで液体のように滑る手入れの行き届いたピンクの髪は……多分ソレだけでヒロインに相応しい。まぁその対面で同じ桜色のスベスベの髪を持っている女装男の娘アルマも疑似的にはヒロインに相応しいんだけど。そう考えるとジュリアンは金髪だし、多分私が一番重いのでしょうか。濡れ羽色とはいえ黒髪ロングなので見かけの質量はおそらく随一。染めるのも手ですかね?


「まぁアレと」


 とデモ行進をしている終末教会を眺めつつ、


「同じ旗を仰ぐほど世界に疎ましさも感じていないもので」


「この世が終われば恋も出来ませんしね」


「ぶっ」


 飲んでいた紅茶をフィーネが吹きました。


「うーん。マーベラス」


「にゃに? フィーネは恋してるにゃ?」


「トール!」


「女の子なんだから恋の一つだってするでしょうよ。普遍的に一般論を語ったまで

で、私としても格別なことを申したつもりもござんせん」


「トールも恋ってしてるにゃ?」


「それはまぁ。ジュリアンは静謐で格好良いですし」


「ジュリアンも踏まれ隊……と?」


「いや。俺様そんな性癖持ってないぞ」


「もったいにゃい……」


「多分マイノリティはアルマの方だろ」


「でもファンクラブ結成するくらい人材集まってるし」


 私が順次踏むかは別の問題でしょうけども。


「やや。其処に居るのは終焉の魔女!」


 しばし御歓談しつつ、デザートを嗜好し、茶を嗜んでいると終末教会の信徒が此方に意識を向けました。まぁ控えめに言ってはた迷惑。


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