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シチュエーションボイス

桜の花が散る前に

作者: 月夜黒

こんばんは 

ごめんね、こんな時間から来てもらっちゃって 

今日は、特別に病院側から許可出たから朝まで泊まってくれるんだよね

こういうのいつぶりだろ 

いつも夜は1人だったから、嬉しいな


君が泊まっていってくれる日に今日を選んだのには理由があってね

今日はほら、満月でしょ?

それにほら、この時間の桜の花もすごく綺麗で風情があって、どうしても君とみたくなっちゃってさ……

ほら、見てよ外 

めちゃくちゃいい景色でしょ 

私太陽の元で咲く桜も好きだけど、この時間の桜が一番好きなんだ 

なんて言うのかな、夜の繊細で静かな雰囲気にこそ桜の雰囲気が合うって言うか…………伝わるかな?

だからこそ君と見られて、凄く嬉しいよ 

来てくれてありがとう 


私ね、最近よく思うんだ 

私に残された時間ってすごく僅かで、この桜と満月もあと何回見られるかわかんないけど……ううん、もしかしたらこれが最後かもしれないけど…………

でもさ、本当はそんなこと関係なくて 

君にとっても、私にとっても、この一瞬は今しかなくて、二度と繰り返されない 

明日があって、明後日があってもそれは今日じゃない 

どれだけこの先があってもさ、今この瞬間を楽しめるのは今だけなんだ 

だからこそ、この何気ない日常もこの景色も、こんなに愛おしいんだって 

すごく…………そう思う 

きっとこの時間が永遠に続くなら、君と景色を見るだけのこの時間もこんなにかけがえのないものには感じないと思う 

でも私にとっても君にとってもこの時間が繰り返されることはなくて……だから私には今この時間がとても幸せなんだ……

……………………



あのね、私君のことが好きだよ 

きっと今この瞬間、私はこの世で誰よりも、君のことを愛してる 

それくらい、君のことが好き 


でも、できることなら……もっと君と居たかったなぁ

もしも奇跡が起きて私が元気になったらって、いっぱい考えたんだ 

散歩でもしながら、もっと近くでお花見とかもしたかったし、おしゃれなカフェとか動物園に行ったり、カラオケでひたすら喉がかれるまで歌ってみたりとか……

普通の子みたいにさ、いっぱい、したいことあったんだよ……

これから先のことも沢山考えた 

大学に行って……仕事を頑張って、結婚して子供を育ててたくさん思い出を作って……


生きてたらどんなことがあったかなって、色んな未来を想像したんだ 

夜が来るとそんなことを考えずには居られなくて……きっとそれだけでひとつの物語ができちゃうくらいにはたくさん考えたんだよ 

桜の花はきっと見飽きちゃうかもしれないけど、いっそ時が止まって君との時間が永遠だったらなって、何度も、何度も考えたよ

それくらい私、君のことが好きなんだ

ごめんね、こんなこと言われても困るよね

でも、この想いを誰にも知られず私と消えてしまうのが怖くて……

叶わないってわかってるし返事も要らないから、私が君のことをこんなふうに想っていたって、憶えていて……

ごめんね、急にこんなお願いして

最後の最後に、背負わせちゃって


君は本当に優しいね こんな、最後まで身勝手な私のために泣いてくれるなんて 

でもね、今は本当に悪いことばかりじゃなかったって思ってるんだよ 


私には君の日常を詳しく想像することが出来ない それはもちろん、楽しみも苦しみも 

知りたくても、知ることが出来なかった 

でもそれと同じように、私のこの小さな一室での日常は、君にもきっと想像できないものが沢山あると思うんだ 

私のいる場所はこの狭い一室だけど、私の世界はここだけじゃない 

君もさっき見たでしょう?ここからの綺麗な景色を

 

昼間は華麗に咲く桜が見えるし、通り過ぎていく人たちや飛んでいく鳥を眺めるのもなかなか楽しいものなんだよ 

それに空だって、よく見れば毎日違う表情を見せてくれる 

夜になればほら、こんなにも綺麗な景色が見えるでしょ 

あのお月様はね、私と同じなんだ 

触れることも会話することも出来ないけど、いつも空の上からみんなを見守ってる 

ほら、こんなにも沢山の小さな世界がここには詰まってるんだ 

いつも私に新鮮さと楽しさと、少しの寂しさを与えてくれる 

この窓から見る景色は、いつだって私のかけがえのない友達だよ 

それに君やママがしてくれる外の話も私にとっては宝石箱のようにキラキラしていて、聞いているだけで楽しいものなんだ 

私は外を自由に歩くことは出来ないけど、こんなにも外の世界と繋がってる 

それは他の誰かにとっては当たり前の日常でも私にとってはかけがえのないもので、特別な感情をくれるものだった 

私が君の日常を知らないように、ここには君の知らない楽しさや幸せ、いつも私の心を温めてくれるものが沢山あるんだよ 

私の人生は確かに手に入らないものの多い人生だったかもしれないけど、だからこそたくさんのものを大切にできた 

だから、私の悲しい部分だけを想像して泣かなくてもいいんだよ 

私は、こんなにも幸せだから 



沢山話しちゃってごめんね 

いつも夜はこの静けさが少し寂しかったから、色んなお話できて楽しかったな 

ふわぁ〜(あくび)

夜更かしはダメって言われてたのに、時間も忘れて喋っちゃった 

もうねむねむだよー

君も眠い?

そっかそっか、じゃあそろそろ寝よっか

君もこっち来て、一緒にお布団入って寝る?

なんて笑笑

君といるとついつい喋っちゃうね笑

そろそろ体に触るぞって、そんなに心配してくれなくて大丈夫だよ笑

でもそうだね、遅くまで付き合ってもらっちゃったし、そろそろ寝るよ

今日はほんとに色々ありがとう

おやすみなさい


…………もう寝ちゃった?(小声)

あのさ、よかったら寝るまででいいから手、繋いでてくれないかな

なんて、君に甘えすぎだよね……ごめんね

忘れてくれて大丈夫だから笑


あったかい……

ありがとう、君にはいつも助けられてばかりだね

今日はいい夢が見られそうだなぁ……

おやすみ……











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