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第5話「朝の邂逅」
断ったのだから、問題はない。
そう、思ったのに…!
「おはよう、姫乃ちゃん。今日も可愛いね♪」
目の前に立っている藍色の彼…堤紘太朗は、へらりと笑いながら家の門の前で立っていた。
何で!?っていうか家の住所を何故知ってるの!?
葵か!葵だな!?
「あれ、びっくりしてるー?昨日葵に伝えておいてって言ったのに~」
もう、葵はーと不服そうな彼に私は動揺を隠せないまま言った。
「でも、断りましたよね…!?」
「いや、寝て起きたら気が変わるかもしれないし、朝家に迎えに行くねーって葵に言ったんだけど」
堤紘太朗はキョトンとしているけど、私にはわかる。
葵のヤロー、わざとだ…!
どうせそのメッセージを堤紘太朗から受け取った後、言わない方が面白いとか考えて言わなかったんだろう。
それを知ったら、私はいつもより早く家を出るに決まっているから。
本当に最悪だ…。
「でもまぁ、せっかくだし、一緒に行こうよ♪」
こうなることまで予想済みなんだろう。
あぁ、計算高い弟が憎い。
逃げることのできない状況にうなだれながら、私は彼といつもの学校への道を歩き始めた。