第四話「美少女♂な毒舌弟・八王子葵」
「姫―。なーんか同じクラスの奴が姫こと探してんだけど?」
そう言って私の部屋をガチャリと開けて覗き込んだのは_
_私とそっくりな顔をした美少女♂。
双子の弟、葵だ。
彼も開城男子に通っている。
ベットでゴロゴロしながら愛読書の少女漫画を読んでいた私は、その声に顔を上げた。
今いいところだったのに。
「え?誰?つーかノックくらいしてよ」
「堤紘太朗って奴。知らない?」
私の話をまるごと無視してコテン、と首を傾げる葵は、まるでお人形さんのようだ。
胸まで伸びたサラサラの黒のストレートヘアーも横に揺れる。
でも、私の言葉を無視して話を進めるあたりは私の粗暴な幼馴染_夕貴にそっくりである。
影響されあっているのかもしれない。
「そんな人知り合いにいないけど…あー、もしかして、ピアノ弾いてた人?」
「ピアノ?じゃあソイツだよ。藍色の髪の、チャラいやつ」
やっぱり放課後会ったあの人か。
って、随分な言いようだなと呆れる。
まぁ同意するけど。
ってか葵のルームウェアが可愛すぎる。どこで買ってんだろ。
ジェラピケか?でもあのブランド高いんだよなー…。
せめてチュチュアンナ辺りで…。
そんなことを悶々と考え出した私に、呆れたように葵がため息をついた。
「それで、明日の朝、一緒に登校しないかって」
「え?私と?」
まじか。何で?
そう思ったことが表情に出ていたのだろう。
葵は馬鹿にしたように鼻で笑った。
「僕だってわかんないよ。紘太朗が相当物好きだってこと以外」
コイツ…私が何も言わないと思って調子に乗ってやがる。
「とりあえず無理だって言っておいて!今いいところだったんだからさっさと出てけバカ!」
「出てけって、一歩も入ってまーせーんー」
ぐっ…確かに、ドアを開けただけで部屋には入ってない。
あっかんべーと舌を出して、葵はドアを閉めた。
まったく、憎めないところも計算済みなのだろう、あの弟は。
弟が女装男子であることは、開城女子の方にも知れ渡っている。
何しろスカートを履いて男子校に通う人間など、葵しかいない。
それも開城のプリンセスと呼ばれているらしい。
相変わらずの美少女っぷりだ。
外では猫かぶっているのかと思ったが、そうでもないらしい。
計算に計算を重ねる弟は、どうやら小悪魔でもあるようだ。
まぁ、男たちをひれ伏させるその姿は容易に想像ができるし、納得する。
〝八王子〟という比較的珍しい苗字である私たちが双子のであることは皆周知の事実だ。
だから、きっと弟に私について連絡がいったのだろう。
…まぁいっか。
断ったんだし、問題はないでしょ。
私はベットでごろんと仰向けになった。
藍色の彼には申し訳ないが、私は今は男子と色恋をする気にはなれない…というのは建前で、実はただ面倒なだけだったりする。
「それにあの人、チャラかったし…」
チャラ男とか、絶対無理。私は一途男子にしか興味無いのだ。
さーて、漫画を読み進めるとしますか…。
◻️◻️◻️
断ったのだから、問題はない。
そう、思ったのに…!
「おはよう、姫乃ちゃん。今日も可愛いね♪」
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