第47話 『第三次東の林殲滅戦 ハイ』
20190622公開
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あらゆるプロセスが速い・・・
ミキちゃんを一言で表すと、それに尽きる。
シンジじいちゃんは自分自身の級をip7 Plus級と言っていたが、ひょっとしてそれよりも上の級かもしれないな。
マジで本物のバケモンだな。
それと雰囲気だけでなく、射撃姿勢や身体の動かし方もシンジじいちゃんにそっくりだ。
ポロっと、『俺、実は生まれ変わりなんだぜ』と言われても信じてしまうレベルだ。
それか、隠し子か? いや、年齢的に隠しひ孫?
血の繋がりが有って、俺の様に直接射撃や身のこなし方を教えて貰わんと、あれだけそっくりにはならない気がする・・・
いや、無いな。
シンジじいちゃん最大の自慢が、俺は長い人生で1回も浮気をしなかった事だ、と事あるごとに言っていたからな。
もっとも、身体に比べてハチキュウが長いからシルエット的にアンバランスなところは全く違う。
シンジじいちゃんの場合、『ハチキュウが構えの中にスッポリと収まる』という感じだったから、そこだけは大きく違う。
まあ、それでもあれだけ素早く照準を合わせているのにハチキュウに振り回されないのだから、体幹がよほどしっかりとしていて、更にバランス感覚が人並み外れて優れている証拠だろう。
それと、この発射音は2倍速高速モード弾を使っている筈だ。
俺が知っている限り、あれを使えるのはシンジじいちゃんだけだ。確かに地球産神様のアナウンスが有ったが、あれは3等級ハンター以上にしか適用されないからミキちゃんは対象外だ。
益々謎だな。
じいちゃんなら知ってるかも知れないので、今晩にも探りを入れよう。
だが、なんにして、かなり反動が大きくて、連射時にはどうしても照準が上にズレるのに、あんな小さな身体でよくもまあ抑え込めるもんだ。
「ッククク、いいなぁ、コレ。かなりクルな! どうだ、キテるだろお!」
げ、モトジの悪い癖が出た。
偶に酔うんだよな、狩りに。
最近は減っていたから、落ち着いて来たと思っていたが、治ってなかったか?
「楽しんでるか、お嬢ちゃん? 俺は楽しんでるぞ!」
「イタリア人が壊れた? 英二氏、これ、ほっといて大丈夫か? 噛まへんか? いや、噛みませんですか?」
「ミキちゃん、言葉遣いは気にしなくて良いよ。モトジは偶にこうなるけど、ちゃんと狩りは出来るからほっといて大丈夫だ」
「ガンナーズハイってヤツか? まあ、狩りが続けられるんやったら、なんでもええか」
言い終わるや否や、ミキちゃんがいきなりしゃがみこんで発砲した。
うわー、無いな。アレは無い。
俺の位置からは害獣の姿はどこにも見えなかったが、着弾の血飛沫が50㍍先で上がっていた。
とっさにしゃがんで射界を確保するなんて、普通に出来るか?
思いっきりの良さと柔軟な発想力が備わって初めて取れる選択肢だな。
「やるじゃねえか! 俺も負けてられん! 来い、もっと襲って来い! もっと襲って来い獣ども!」
「だから! セリフが変態なんや、イタリア人!」
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おいおい、先頭がえらい事になってるぞ?
昨日来たチームは、災獣しか住んでいない島でトップのハンターチームと聞いていたが、癖が強いな。
まあ、『獣災潰し』も大概濃いがな。
しかし、さすがと言うべきだろう。
チラチラ見ているが、なんだかんだと変な会話をしながらも、5人とも鉄壁の守りを崩していない。
その証拠に、恐ろしいほど発砲音が連続して聞こえて来るが、1匹も接近を許していない。
「おい、加山弟! 先頭は大丈夫なのか?」
ああ、そうか。俺は左利きだから視界が簡単に確保出来るが、後ろの列はちょうど背中越しで死角になるから見たくても見れん訳か。
きっと、みんなも気になるだろうから、敢えて大きな声で答えておこう。
「大丈夫ですよ! 2級や1級のハンター資格を持ってる連中はさすがです。そりゃあ、もう、気持ち良さそうにぶっ放してます!」
「そうか! 分かった!」
あ、どうせなら、『獣災潰し』の事も伝えておく方が良いか?
「まあ、一番気持ち良さそうにぶっ放してるのは『獣災潰し』ですがねえ!」
害獣や災獣がドンドンと周り中から襲って来てるにも関わらず、笑い声がアチコチから聞こえて来た。
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おかしいで。
こんな筈や無かったんやけどな。
あしながさんの孫やから、もっと真面目な人間を想像してたけど、実際に会ったら欧BEIか!やったし、トップクラスのハンターチームの癖に変態が混じってるし・・・
まあ、5等級狩猟士のウチが言うのもなんやけど、腕は確かや。
伊達にトップクラスのハンターチームや無いって事や。
うーん、そろそろ『鬼嫁』の出番な気がするな。
オスどもの襲撃が減って来たし、林に入ってから3時間掛けて2㌔は進んだからな。
どうでもええけど、あと1時間でお昼ごはんの時間やな。
こんな敵地で弁当を広げるのは無理やし、どうしようか?
ああ、お昼ごはんはお預けや。
鬼嫁どもがやって来たで・・・
お読み頂き、誠にありがとうございます。




