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第46話 『第三次東の林殲滅戦 ロクヨン』

20190621公開



 今日の突入は林の南西からや。

 西と南から突入した後やから、こっち方面は少しは減っている筈や。もしかすれば北と東のエリアにった連中がこっちに来てるかもしれんけどな。それはそれで構わへん。手間が減るってもんや。

 2回の突入で削れたのが2割として、出来れば今日は一気に同じくらい削りたいところやな。

 まあ、無理では無いやろ。みんなも戦列を組んだ狩りに少しは慣れて来た筈やし。

 そうそう、好材料として、昨日の休みで英気を養ったせいか、みんなの気力が充実してる点も見逃せん。

 特に2回目の突入は結構しんどかったから、良いリフレッシュになったんやろ。

 でも残念ながら、ウチはちょっとだけ乗れてへん。

 おかしいやろ、あんだけ用意した牛肉がたったあれっぽっちしか残れへんって?

 どんな胃袋してんねん。

 香織カオリンと2人でコツコツと作ってた焼き肉のタレモドキもほとんど無くなったしな。

 次の休みにまた仕込まなあかん。

 結構メンドイやけどなぁ。

 それにタレの味とコクに関わる重要な材料のコリナラの実が手に入るか心配やな。

 



「ふむ、思ったよりは大きい林だな。それにここから見えるだけでも、手入れがきちんとされているのが分かるな。隊列を組んだ狩りを行うには向いてそうな林だ」

「さすが、2等級狩猟士エリートハンターですね。その通りです。新しい戦術を北の森でいきなり試すのはさすがに難しいですしね」

「ここで慣れておけば、北の森とやらでも使えそうなのか?」

「正直なところ微妙ですね。今の5倍くらい投入して隊列を有機的に連携させれば十分な安全が確保出来る気がするんですけどね」

「くくくく、500人のハンターを投入する狩りか?! 想像するだけで始祖の時代の英雄譚の様で心躍るな。そして、さらっと言ったが、それを構想してしまえるお嬢ちゃんに驚きを禁じ得んな」

「お褒め頂き、アリガトウゴザイマス」


 うん、イタリア人(仮)こと太田氏が饒舌だ。最初の無口さはどこ行った?

 どうも、この人、英二氏曰く初対面の人間には無口だし、気に入らないと無口のままらしい。

 ウチの事は、焼き肉のタレの製作者の片割れという事でお気に入りにブックマークされたみたいや。

 どんだけ、食道楽なんや?



 今日の配列は少しだけ変えている。

 なんせ、1等級狩猟士トップクラスハンターが1人と2等級狩猟士エリートハンターが3人も追加になったからな。

 本当なら角番かどばんを任せたいところやけど、連携の問題も有るんでウチのすぐ後ろ斜めのポジションに入って貰った。

 加山兄弟はその後ろに組み込まれたけどなんとかなるやろ。若手の注目株だけあって順応力が高かったからな。

 この配列にしたのには当然ながら理由が有る。

 予定では林の中心に近付くからや。

 中心部付近には子供の害獣を育てている母親が居ると予想されてる。

 問題は、その母親がバーサーカーって事や。

 元々オスよりも大きな体格で、更に子育て中は凶暴になるって、『母は強し』にも程が有るやろ?

 子育て中は完全に尻に敷かれる事になるオスは、母子を食わせる為にひたすら餌を狩りに行くらしい。

 ちょっと、メスの害獣が羨ましい気がしないでも無いな。誰かに食わせて貰えるなんて、憧れへんか?

 それはともかく、そういう習性も有ってこれまでに狩った害獣は全てオスばかりや。

 『鬼嫁』と遭遇する可能性が高いだけに、今回は前方の戦力を強化しといた方が良いという、里見狩猟士会会長ハンターギルドマスター以下狩猟士会ハンターギルド上層部全員の判断や。

 ま、『獣災潰し』という偶像アイドルの身の安全も大事やから仕方ない。



「さあて、そろそろ行きますよ」


 そう宣言して、ウチはホイッスルを鳴らした。



 今日も林に入る前に襲ってくる害獣も災獣も居なかった。

 密度が下がっている証拠なんかもしれんな。

 と、思ってたら、林に入った瞬間にいきなり災獣が真正面から襲って来た。

 小さめの森林重レックスだったけど、ちょっと可哀そうなくらいにあっさりと倒された。

 ハチキュウの2倍速高速モード弾とロクヨン4丁からの集中射を受ければ、さすがに出オチか! ってなるわな。


 そう、英二氏たちのチームは全員が64式7.62㎜小銃がもとになったロクヨンを召喚してる。

 一般的な狩猟士ハンターが召喚するのは89式5.56㎜小銃を基にしたハチキュウや。

 でも、害獣相手なら使い勝手の良いハチキュウやけど、災獣相手ではパンチ力に欠けるのも事実や。

 その点、ロクヨンはパンチ力が有る。

 なんせ、弾頭の重さが7.62×51㎜ NATO弾では10㌘、89式5.56㎜普通弾では4グラムと、2.5倍も違うからな。

 ロクヨンの方が初速が遅いんで多少は差が減るけど、銃口を出た段階の運動エネルギーで比べると3300ジュールと1770ジュールやから数値的には1.8倍を超える差が有る。 

 だから、主に災獣を狩る2等級狩猟士エリートハンターと、主に害獣を狩る3等級狩猟士ベテランハンター・4等級狩猟士ボリュームハンターを分ける壁は、召喚可能な魔法ファイノムの差とも言える。


 ま、現在は3等級狩猟士ベテランハンターならハチキュウの高速モード弾を使えるから、魔法ファイノムの威力そのものは上回ってる。

 でもなあ、素のままで高いパンチ力のロクヨンを使える2等級狩猟士エリートハンターの方が実際は撃ち慣れてる分だけ有利やと思うで。

 


 え? ウチ? 乙女としてはどうなんや? と思わざるを得んけど、ウチのハチキュウの2倍速高速モード弾はロクヨンの倍以上の威力を誇るで。

 もしかして、ウチが一番の鬼嫁かもしれんな・・・ 結婚してないけど。



お読み頂き、誠にありがとうございます。

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