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第44話 『当たるも八卦』

20190615公開



「それは有り難いし、大変助かるのだが、実際のところ、連携するのは難しいと思うぞ。獣災対策で新しい狩りの仕方を取り入れているからな」


 ソファの方から声が上がった。

 あ、忘れてた。里見狩猟士会会長ハンターギルドマスターったんやった。

 それはともかく、そろそろ昼飯を食べたいんやけどな。その為に村に帰って来たんやしな。

 

「という事で、ウチらはお昼を食べに帰りますので、その辺りの事を話し合っておいて下さい。失礼します」


 そう言って、ドアの方に向かったけど、何故か複数の気配がくっ付いて来た。

 


「どこに食いに行くんだ? なんだったら奢るぞ」


 お、英二氏が今、良い事を言った。

 隣の香織カオリンを見たら、頷いていた。

 しかも笑顔だ。


「なるほど、この村に来たばかりで美味しい店が分からないとおっしゃりたいのですね。そういう事情なら仕方ありません。教会に帰って簡単な昼食にしようと思っていたのですが、特別にご案内をせざるを得ませんね」


 プッという噴出した声が横から聞こえたが、聞かなかった事にする。

 歳を取ると『スルーりょく』も勝手に鍛えられるんやで。



「その口ぶりなら、旨いとこを知ってそうだな」

「お口に合うかどうかは分かりませんが、穴場を知っていますよ」

「期待するぞ」


 誰や、アンタ!?

 初めて聞く声だが?

 思わず振り返ったら、イタリアン(仮)と目が合った。


「ああ、モトジは初めて行く土地のご当地料理が楽しみなんだ。まあ、外れも多いんだがな」


 英二氏が解説してくれた。

 イタリアン(仮)の口に合うパスタが美味しいところって在ったっけ?

 無い。半分開拓村みたいなスカー村にはそんな店は無い。田舎だぞ、ここは。



「まあ、当たるも八卦外れるも八卦、ってことで・・・」


 言い訳にならない言葉を返したけど、反応は意外なものだった。


「お、久し振りに聞いたな、その言葉。昔シンジじいちゃんが言ってたな」


 あ、ヤバい。

 また、うっかりとこっちの世界では使われていない言葉を言ってしまった。

 

「いつ、誰から聞いたかも覚えていないですし、意味も今一分からないんですけど、どうも、外れたらゴメンね、みたいな感じで使ってた記憶が有るんですが・・・」

「そうそう、そんな感じだったな」


 なんか知らんが、英二氏の態度が気安くなってきたな。

 これは油断させる計略やろか?

 ハッ!? これが有名な孔明の罠ってヤツか?

 人生を2つ跨いで遂に初めて喰らったで。


 ま、たわむれはこれくらいにしとこか。真剣に腹が減って来たで。

 


「とりあえず、お薦めのところに行く前に、まずは材料を揃えましょう」

「へー、変わってるな。材料は持ち込みか」

「穴場ですから」



 ウチと香織カオリンを先頭に、7人の集団が南門に向かう。

 予定よりも1人多いのは何故だ?


「えーと、里見狩猟士会会長ハンターギルドマスター、なにシレっと混じっているんでしょうか?」

「いや、穴場と言われれば、行きたくなるだろ?」

「なるほど、自ら財布になりたいと仰る訳ですね? 香織カオリン、毟り取っておしまい」

「うん、そうだね」


 おお、香織カオリンもノリノリになっている。

 今日の昼飯は豪勢になりそうや。

 南門を抜けて、向かった先は養豚場イベリコぼくじょうの隣の牛の牧場だ。

 第4曜日なので市場いちばが休みの為、直接買い付けに向かうのだ。

 孤児院が教会の中に有る為、プラント教の教徒さんとは結構接触する機会が有る。

 教会が主催するイベントはもちろん、協賛で参加する村のイベントの準備なんかも手伝うからな。

 で、ウチはそれらを人脈作りに使わさせて貰った訳や。

 まあ、元が大人やから、コネの重要性を知ってるからな。

 カツを預かって貰えたのも、養豚場イベリコぼくじょうのオジサンと顔見知りやったからしな。

 今から行く牧場を経営してる夫婦とも顔見知りや。お願いすれば精肉済みのお肉を卸して貰える訳や。



 なんせ、牧場には養豚場イベリコぼくじょうと合同で建てた予備の冷蔵棟が在るからな。


 狩猟士会ハンターギルド会館や村の集会場など、公共の利用も行われる施設には、空調施設が設置されている部屋が存在している。いざという時には病室や避難所になるからな。

 日本でなら電気の力で空調するのだが、こちらでは獣玉テソロをエネルギー源とする。

 仕組みは誰も知らない事になっている。肝心な部分は完全なブラックボックスとなっているからだ。

 でも、どうしてこういう機械が普及したかは、テラ族の大人ならほぼ全員が知っている筈や。

 第2次学校の歴史の授業で習うからだ。

 始祖の時代、織田家の始祖が星系間移民船プラントに持ち掛けたのだ。


『害獣や災獣が食物連鎖の過程でピコマシンを取り込んで体内に生成してしまう胆石モドキをエネルギー源にした機械マシンを普及させよう。そうすれば、経済活動の一環として継続的に間引きをする事になる。それによって獣災の危険性を減らせる』と・・・


 ヘキサランドの大獣災を未然に防げなかった星系間移民船プラントは了承した。

 ただし、人類が際限無く活動領域を拡げる事を防ぎ、生態系を含めた自然環境を破壊する事を防ぐ為に、肝心な部分はブラックボックスにして、人類に提供する事にした。

 個人宅や個人的な理由では大掛かりな機械マシンは提供されないが、小型の機械マシンは提供される。人類の数が増えている為に獣玉テソロの需要は旺盛だ。


 ただ、現在のところ、この仕組みに隠された意味を知っている人間はウチくらいかもしれん。ウチは転生者なんで、立場上、星系間移民船プラントから直接教えられたからな。

 織田家でさえ伝わっているかは分からない。

 この星では星系間移民船プラントは神様や。その神様が与えてくれる恩恵を疑うのは不敬になるからな。 


 男どもが5人も居るおかげで荷物持ちには不足しないので、多めに材料を手に入れて孤児院に戻って来たのは1時間後だった。

 

 うん、ちょっとテンションが上がり過ぎて買い過ぎたのはウチと香織カオリンだけの秘密や。

 まあ、余っても、孤児院のみんなと後で食べるから問題無いけどな。



お読み頂き、誠に有り難うございます。

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