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第40話 『第二次東の林殲滅戦 再突入』

20190528公開



△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽


 東の林を北に見ながら行進をして来た俺たちは、進行方向の変更と隊列の角度を調整する為に一旦停止した。

 菱形の隊列の北側の頂点に位置するのは小さな少女だ。

 その少女を基点として、120度に広がっていた角度をこれから60度に変更する予定だ。昨日は30度の角度で突入したが、今日は2倍に広げた角度で突入するからだ。

 少女の短笛に従って、直角に身体の向きを変えた。これで行進から突入の1段階前に移行完了だ。

 また短笛が鳴って、角度の変更の為に隊列が動く。まあ、少女のすぐ後方と言う位置なので、俺の移動距離はほんの1歩分だ。4人の隊列リーダーが声を張り上げて指示を出している声が後方から聞える。

 その声が収まったのは30秒後だった。

 

 前方の2辺の隊列の角度を、昨日の30度から60度に変えるという事は、あくまでも昨日の狩りは、隊列を組んだ状態での実戦を前提とした習熟訓練という事だったんだろう。

 改めて、少女の実力に依存していた事に気付かされる。

 そして、少女の二つ名も変わった。

 新しい二つ名は『獣災潰し』だ。


 昨日の帰還時に待ち構えていた村のみんながその言葉を言い出した時には、何の事か分からなかった。

 だが、万が一の時の警戒役として村に居残った妹と弟が教えてくれた。

 台風よりも悲惨な犠牲を出す『獣災』を『潰す』ハンターとして、ハンターギルドが吹聴ふいちょうしたそうだ。

 正直、俺がこの少女の立場だとしたら、そんな二つ名で呼ばれる事に耐える自信が無い。

 『災獣殺し』ならば、まだ耐えられる。

 むしろ、そう呼ばれる様に頑張ろうとさえ思う。

 実際に災獣を狩った事の有るハンターチームはそれなりの数が居るからな。それを個人で成し遂げた、という点は快挙とは言え、有り得ない話では無い。

 だが、『獣災』は別だ。

 台風の被害を個人の力で喰い止める様なものだ。

 それこそ、『プラント様がつかわした援徒クリストス』のオダ兄妹きょうだいに匹敵する様な偉業としか思えん。

 だが、少女は、自分が『獣災潰し』と呼ばれている事に気付いても、表情も変えずに一言愚痴っただけだ。


 『風評被害や・・・』



 重ねて言うが、俺はそんな二つ名で呼ばれる事に耐える自信が無い・・・ 



△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽



 後ろから聞えていた隊列を組み換える指示を出す声が止んだ。

 さあて、第2ラウンドの開始や。

 昨日は30度に絞っていた前方2辺の隊列の角度を今日は60度に広げた。

 前にも使った半径50㍍のアナログ時計の例えで言えば、長針が00分で、短針が2時の位置になる。

 みんなが受け持つのが2時から5時と9時から12時で、合わせて240度や。ウチが受け持つのが残り120度になる。少しは負担が減る筈やけど、実際の所は不明や。

 なんせ、昨日よりは林の奥まで進む予定やからな。


 子育ての最中のメスの害獣や災獣は攻撃的になる事は常識とされている。

 昨日の晩の話し合いでもその点に関する危惧は出てた。

 その辺を実際に経験していないから実感が湧かんけど、川崎さんも寺田さんも重要視していたくらいやからな、油断だけは禁物や。

 そう言う訳で、中央部からやって来る害獣と災獣を相手取る事になるウチの負担をやわらげる意味も有っての角度変更や。


 それと、奥深く差し込む為に最初から菱形の隊列で突入するのも昨日との違いや。

 ちなみに菱形と言っても、歪な形になる。ウチが受け持つのが120度やけど、最後尾の殿しんがりは90度になる様に、後方2辺は角度と長さを調節してる。

 実はその事で、昨日の晩の話し合いが長引いたんや。

 理由は、角に当たる人選が難航したからや。

 先頭の角を受け持つんはウチしかおらんけど、残り3つの角も結構重要なポジションや。

 特に左右の角に就く狩猟士ハンターは75度の範囲を受け持つ事になるし、襲って来る頻度も多いやろ。だから生半可な実力では務まらん。一応、何人かの候補は居ったけど、選ぶ段になって意見が分かれたんや。

 いっその事、隊列リーダーを当てるという案も出たけど、それをすると指揮系統が乱れ易くなるんで、ウチが却下した。隊列リーダーは戦列に加わらんと後方で指揮して貰った方が乱れ難いからな。

 最終的に、狩りの実力だけでなく冷静さや視野の広さ、昨日の実績、意欲を考慮して選出した。

 まあ、ウチはそれぞれの狩猟士ハンターの実力や人となりは分からんから、ほとんど口を出せんかったけどな。

 そうそう、殿しんがりの人選は左右の角に比べてあっさりと決まった。

 立候補者が居って、ウチを除く満場一致で承認されたんや。



 林に入る前の襲撃は無かった。

 もしかしたら、昨日の影響かも知れんな。例えば、この辺りの害獣や災獣が昨日殺した害獣の死体を漁りに行ってるとかな。

 肩すかしやけど、ここで集中力を切らせば簡単に危険な事態になるやろ。

 みんなも集中力を維持したまま、林に侵入している様や。

 昨日と違う事が、却って良い方に作用してるんやろう。


殿しんがり、入った!」




 さあて、蛇が出るのか、ミミズが出るのか、それとも手に負えない様な龍が出るのか、藪を突いてみよか・・・




40話までお読み頂き、誠に有り難う御座います。


 40話まで読み進めた記念に、ブックマーク・感想・評価をするのは如何でしょうか?

 まあ、反応が無いとは思いますが、これまでも5話ごとに書いて来たんで様式美として一応書いておきます(^^)

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