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第30話 『物騒な少女』

20190412公開



「取敢えず以上だ。何か質問は有るか?」


 里見狩猟士会会長ハンターギルドマスターの説明が終わって、質疑応答の時間になった。

 一瞬の間を置いて、若い(高校1年生くらいに見えるから20台半ばくらいか?)狩猟士ハンターが手を挙げた。


「ギルマス、状況は把握した。で、俺たちはこれから何をすればいいんだ?」


 まあ、確かにこれからの事には触れてないから分からんわな。

 多分、これからそれを話し合う気がするけどな。


「それをこれから話し合う予定だ。その為にも全員の情報を一致させる必要があったので、まずは状況説明から始めた訳だ」


 うん、里見会長は優しいな。

 

「ちょっと良いかの?」


 おっと、ここでお爺ちゃんズチームのリーダーの川崎さんが手を挙げた!

 発言前にこっちをチラッと見た理由は分からん。


「カワサキさん、どうぞ」


 狩猟士会会長ハンターギルドギルマスといえども、大ベテランの先輩には敬意を以って接する様や。

 まあ、川崎さんはこのスカー村の狩猟士会ハンターギルドの重鎮というか大御所的な存在やからな。


「ふむ、今の説明には無かったので補足させて貰うぞい。軽装甲レックスが出た時に、メッセージが流れたじゃろ。その後、誰か試し撃ちをした者はらんか?」


 川崎さんの声はそれほど大きくは無かったが、俗に言う『通る声』なんやろう。

 全員の耳に届いた様だ。

 みんなの反応は近くに居るチームメイトと目を合わせて首を振る事だった。


「ならば、実際に使ったわしから情報を出すとしよう。ハチキュウの高速モード弾は角度さえ良ければ軽装甲レックスの装甲皮にもダメージを負わせる事が可能じゃ。現にそれで儂らは1頭仕留めたからの」


 この発言に対する反応は一瞬の静寂後の「オオゥ」という言葉では無い感嘆の声だった。

 

「それは本当か、ジッチャン?」


 そう発言したのは、最初に質問したニイちゃんだった。川崎さんの孫だったんや。いや歳からしたら曾孫かもしれんな。


「ああ、本当だぞ。儂も半信半疑だったが、角度さえ合えば1発でヒビを入れる事が可能じゃ。弾着を収束させれば軽装甲レックスの装甲皮と言えども抜ける。問題が有るとすれば、連射が遅くなる事と、ピコマシンの消費が大きい事かのう」

「すげえ」


 でも、ここで落ちが入った。


「おう、もう1つ問題が有ったな。3等級以上で無ければ使えんかったわい」


 ロビーに居る狩猟士ハンターの半分以上がガックリと来てた。

 まあ、気持ちは分かる気がせんでも無い。

 4等級以下の狩猟士ハンターにとって、自分は対軽装甲レックスでは戦力外通告を受けたようなもんやからな。

 そうは言っても、3等級以上の狩猟士ハンターが半分近くも居るのはここくらいちゃうかな?

 4等級狩猟士でも十分に稼げるしな。むしろ等級を上げた方が税率が上がるせいで不猟の時は大変やからな。まあ、世知辛いんは日本も一緒やで、若人たちよ。



「そこで、獣災に対する基本方針、及び獣災が起こるまでに何をすべきか、担当をどうするのかを決めたい。何か意見が有る者は居るか?」


 里見会長が話を進める為に発言した。

 まあ、基本方針は決まってると見ていいやろ。

 寺田さんがかなり動いてたからな。

 ウチも知らんかったけど、寺田さんって若手ではかなり期待されている狩猟士ハンターらしい。

 狩りの腕も良くて、それにマネージメント能力も長けてるって評価みたいや。

 そんな期待の星がなんで新人狩猟士ヒヨコハンターの研修をしていたかと言えば、犯行動機は美紀という名のヤツらしいで。 

 どうも、ウチは第2次学校在校中から目を付けられていた様や。

 証言者は村唯一の文具店で偶々(たまたま)再会した先生や。

 寺田さんにプッシュしといた、と爽やかな笑顔で言われた時にはさすがにイラっとして表情筋が0.1㍉も動いたで。

 あ、寺田さんの情報もその時に教えて貰ったんやけどな。

 


「被害を1番減らす手なら村に籠城だと思うんだが?」


 そう言ったのはウチの知らん狩猟士ハンターや。


「いや、それではジリ貧だ。救援の目途も無い状態では村の外に居座られるともたんぞ」

「それに防壁も、大獣災レベルならいつまでもつか分からん」

「かと言って、外で迎え討つと言っても、飲み込まれてお終いだぞ」


 議論は一気に過熱した。

 30分くらい話し合いは続いたが、それくらいにはほぼ意見は出尽くしたみたいや。

 一瞬の沈黙が降りた瞬間を狙ったかの様に、川崎さんがキラーパスというか無茶振りをして来た。



「うーん、ここは1つ、若いモンの意見も訊こうか。災獣殺しのお嬢ちゃんの意見はどうじゃ?」



 一斉にウチに向けられる視線が怖いっちゅうねん。

 ウチ以外の人間やったら、泣き出すで、ほんま。



「まずは東の林の害獣と災獣を殲滅しましょう」



 ウチの二つ名が2つに増えた瞬間だった。

 『災獣殺し』に追加されたんは『殲滅娘せんめつむすめ』やった。


 どんだけ物騒な女の子やねん・・・・・・





30話までお読み頂き、誠に有り難うございます。


 30話到達記念として、ブックマーク・評価・感想投稿をされてはいかがでしょうか?

 効果はmrtkが喜ぶというささやかなものですけど(^^)



P.S.

 2度と出来ないであろう5日間連続更新が終わりました。

 この後はゴールデンウィークが終わるまで更新は少なくなるかも・・・

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