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第3話  『獣珠』

20190202公開



「ほら、見てみろ。着弾が顔に集中しているのが分かるか?」


 うん、グロい事は良く分かったで。

 4つ有る目の内、3つまでが潰されてた。

 その他にも顔面の皮膚と筋肉がかなり抉れていて、頭蓋骨もあちこち見えてる。

 おかげでスプラッターや。 

 誰や、こんなにしたヤツは? もっと上品に仕留める様に勧告と指導すべきやな。

 

「オクダ、よく咄嗟にMINIMIに切り替えたな。しかも5秒以上の連射をほぼ顔に集中して当て続けるなんて芸当、ベテランでも難しいぞ」

「きっと、火事場のくそ力、ってヤツだと思います」

「今時そんな古い言葉を言うヤツなんて居ないぞ? お前、何歳だ?」

「はい、ピチピチの13歳であります、教官!」


 寺田さんの返事はプッという噴き出し音やった。

 そっか、火事場のくそ力は死語寸前か。

 偶にこういう事が有るから言葉には要注意なんや。

 前に日常茶飯事にちじょうさはんじって言ったら、誰ですか? って真剣な顔で訊かれたからな。

 居残り佐平治かよ!  

 古典落語かよ! って、心の中でツッコミを入れたけど、口にしてたらヤバかったで。



「さて、災獣の匂いと、その血の匂いが揃った場合、何が起こるか分かるか? オオヤマ?」

「えーと、分かりません」

「答えは1週間ほどの空白地帯が発生するという現象だ。理由は分かるか、サカグチ?」

「臭いからですか?」

「まあ、1週間も放って置いたら匂いもキツイがな。答えは、災獣さえも殺す存在がそこに居た、という理由だ」


 なるほど~、とか言う声が聞こえた。

 ウチも思わず、何かのボタンを押したくなった。 へェ~ へ~ へ~ へ~


「災獣を殺せる存在は少ない。11年前に現れた『角付き』か、痕跡だけ見付かっている未確認の超災獣級くらいだろう。ああ、それと2種族の人類もか・・・」


 『角付き』・・・

 ウチの今世の両親を殺したヤツや。

 色々な資料を読んだけど、ウチは災獣の突然変異と睨んでる。

 

「そんな存在が居る場所にノコノコと近寄ったら自分も殺されると、害獣にも分かるって事だ。だから、しばらくは安全と言える」


 そう言って寺田さんはみんなを見渡した。

 ニヤっとした後、晴れやかな顔で言った。


「だから心置きなく、獣珠テソロを取り出せるぞ」


 いやあ、地獄やったね。

 これが草食動物ならマシやけど、肉食動物の内臓の中には当然やけど、消化中の動物が収まっている訳や。

 未熟な技術で内臓を捌いたもんやから、やっちゃった訳で・・・

 本来なら胃腸は獣珠テソロとは関係無い。

 人間で言う肝臓に近い臓器に、獣珠テソロは作られる。

 害獣の場合、直径1㌢から2㌢の真珠の様な光沢の有る丸い珠が1個作られる。

 そして、災獣の場合は直径4㌢から5㌢の獣珠テソロが複数作られると言われてる。

 で、地獄を見た後、やっと見つけた獣珠テソロは4㌢級が2つやった。

 害獣の獣珠テソロなら日本円換算で1万円から10万円近くになる。

 災獣の場合は? 一気に上がって、1個で80万以上や。2つで160万円以上・・・

 これはヤバいな・・・

 最初の狩りで、こんなに儲かってしまうと、勘違いするヤツが出て来るで。

 現に、香織カオリンを除く同級生の顔が緩み過ぎてる。


「さて、今日の経験から、こう思ったヤツは手を挙げてくれ。ハンターって、儲かるんじゃね? って」


 ウチと香織カオリンを除く5人はお互いに目を交叉させた後、全員がおずおずと手を挙げた。

 

「では、儲からないと思ったヤツは?」


 ウチと香織カオリンが手を挙げた。


「なんで、儲からないと思う。オカ?」


 香織カオリンは一瞬だけ時間を置いて答えた。


「多分、ミキが居なかったら、全員があんな状態になってるからです」


 そう言って指差したのは、半分消化された草食動物の後ろ足だった。

 

「もっと実力が付かない限り、災獣には遭遇したくありません」


 香織カオリンの言葉に、自分達がそうなったら、と想像したのだろう。

 5人の内3人が、また戻した。


「オカ、そういう考え方のハンターの方が生き延びるぞ。さあて、今日の狩りはこれまでだ。死体を埋めて、撤収するぞ!」



 こうして、ウチらの初めての狩りは波乱の内に終わった。







お読み頂き、誠に有り難うございます。

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