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第27話 『大獣災』

20190409公開



『大獣災』・・・

 日本で言うと大震災に匹敵する災害や。


 これまでに2回起こってる。

 コピペ召喚者を生む切っ掛けとなった『ヘキサランド大獣災』が500年前、植民途中のテラ族とディノ族全てが滅んだ『ディグラリス島大獣災』が300年前に起こってる。

 それぞれ千の単位の死者が出た。

 原因は2つとも基本的に同じや。

 害獣と災獣の餌となる草食動物の出生率が急上昇する事で異常繁殖が起こる。潤沢に餌が供給される事で害獣と災獣が遅れて異常繁殖する。

 数ヶ月から半年程はその状態が続くけど、草食動物の異常繁殖が突如終了する。

 異常繁殖した害獣と災獣が草食動物を食べ尽くすのに1ヶ月足らず・・・

 草食動物を食べ尽くした害獣と災獣は新たな餌を求めて大移動を開始する。

 その先に人類が居れば、災害の発生や。


 まあ、兆候を掴むのは実は難しくない。

 草食動物の餌となる草や木の芽、木の実が1番最初に異常繁殖するからな。

 それに気付けば、少なくとも数か月の余裕が生まれる。

 それだけあれば、防備を整えるか、最悪の場合は避難する事も出来る。


 だけど、今回は最初の兆候を掴むのに失敗したと見てええやろう。

 まさか冬の間に植物の異常繁殖が起こっているなんて誰も思って無かったからな。

 普通なら春になってからや。

 

 多分、今は草食動物の異常繁殖の最終段階や。

 あと1ヶ月ほどで食べ尽くされて、大獣災の最終段階に移行する筈や。

 この件に関して、星系間移民船プラントはほとんど関与しない事は余り知られてない。

 テラ族、特にプラント教はヘキサランド大獣災時に『プラント様がつかわした援徒クリストス』をコピペ召喚した事から、星系間移民船プラントによる救済処置が行われると思っているけど、そんな事は無い。

 あの時はテラ族の全てがヘキサランドに居たから、下手すれば全滅しかねなかったから強引な手段に出ただけや。

 今ではテラ族は二桁以上の地に根を張っている。

 1つや2つくらい全滅しても、テラ族は生き残るんやから、傍観するに決まってる。

 その証拠に『ディグラリス島大獣災』では、後になって初めて意味が分かる様なあやふやな神託しんたくしか出してない。


 まあ、ヘキサランドのプラント教本部にる『プラント様に仕えし至高巫女様』には神託が下されているかも知れんけど、それがテラ族が移住した全ての移住地に在る教会に通知が届くのは先の話や。

 ウチにも通知を出さんかった事から、ウチ自身の立ち位置も推測出来るんやけどな。

 いや、ホットラインが有るから、とっとと連絡して来いと云う事やったんかもしれんな。



「どういう事だ、オクダ? 何故、大獣災が来ると分かる?」


 寺田さんが喰い気味に訊いて来た。

 

「聖典の第5章『ヘキサランド大獣災』、第8章『ディグラリス島大獣災』の記載を思い出して下さい。現状に当てはめれば、早ければ1ヶ月以内に大獣災が来る事が分かりますよ。まあ、MINIMIをみんなが使える様に祈った時に神託ぽい事を言われたんで、やっと気が付いただけなんですけどね」

「何故、オクダが神託を下されるのかを訊いても教えてくれんのだろ? それでなんと言われたんだ?」

「『数多あまたわざわい』だけが辛うじて分かりました。夜警をしながら考えていたんですが、それって大獣災の事だと考えれば、腑に落ちませんか? ちなみに、こんな事は初めてですよ」


 寺田さんはプラント教の聖典の該当する箇所を思い出そうとしていたが、熱心な信者では無かった様だ。

 表情を見ると、完全には思い出せなかったみたいや。 


「多分、豊田さんなら持って来ていると思いますよ。毎朝、教会に祈りに来られるくらい熱心な信者さんですからね」

「分かった。情報提供に感謝する」



 寺田さんが慌てていると思われない様に気を付けながら早足で馬車の方に戻って行った。

 また1人になったウチは、今度こそ個人用暗視装置JGVS-V8をマウントに取り付けて、夜警任務に戻ったけど、意識の半分は大獣災対策に割かれてた。

 ウチが召喚出来る自衛隊の装備品リストをスクロールして行くと、或る装備品が目に留まった。


 看護師だった前世ではそれに触った事は無い。

 でも、塀の上に巻かれている風景は見た覚えが有る。

 記憶を辿ると、紛争地域や戦争映画で使われていた風景が出て来た。

 必要なピコマシンも、ハチキュウなどの武器に比べてかなり少なめや。

 そりゃそうだ。元は只の針金なんやからな。

 とは言え、ずっと召喚し続けるのは、効率が悪過ぎやなぁ・・・


 うん、ここは困った時のあしながさんや。

 


《もしもし、あしながさんですか? 美紀です。夜分遅くすんません》

《いや、気にしなくても構わないよ。それでどうしたんだい、美紀みき君?》

《ちょっと確認したいんやけど、そっちに鉄条網って有ります?》

《有る筈だが、量は調べないと分からないな》

《ちょおっと、融通してもろてええやろか? こっちで使いそうなんで》

《何に? って訊いても良いかい?》

《いえね、ちょっと大獣災が起こりそうなんですわ、これが》

《な!?》





 2日後、通常の補充物資に加えて、鉄条網やH形鉄柱など、普段では載せない物資を積載した定期船がとある港から出航した。

 到着は10日後の予定だった。



 

お読み頂き誠に有り難うございます。


新たにブックマークをして頂いたお二人様、本当に有り難う御座います m(_ _)m

更新しないでおこうかと思い掛けていましたが、お二人様のおかげで更新出来ました(^^)/

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