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第26話 『プラント様が遣わした援徒』

20190408公開



「笑わないで聞いて欲しいのだが、俺はオクダを『プラント様がつかわした援徒クリストス』と疑っている」


 寺田さんはウチに個人用暗視装置JGVS-V8を返しながら、低い声で呟いた。

 もしかしたら、ウチ以外の人間やったら表情が動いたかもしれんな。


「別に笑わないですけどね。違うと断言出来ますよ」




 星系間移民船プラントが行った過去の地球の情報採取は微かな痕跡を残すだけで終わる筈やった。


 ウチが地球で不治の病で入院している時に、かなりテレビを賑わせた謎の事件が起こった。

 閉店時間直前の或る小さなスーパーの店内を満たした謎の発光現象や。

 ウチも暇に飽かせてテレビを見てたから結構知ってるつもりやったけど、真相はこっちに転生した後に教えて貰った。

 防犯カメラにも映った、店員と客合わせて60人が遭遇した怪事件の原因は、星系間移民船プラントによる素粒子レベルの情報採取の副次的な現象やった。


 最初のコピペ召喚や。


 その時に採取された情報の中に元自衛官が複数居た事から、星系間移民船プラントは何度も自衛隊の装備品を狙って情報採取を行ったみたいや。

 なんせ、星系間移民船プラント自身に装備されてる兵器は星系間航宙用やから宇宙レベル(進路上の小惑星を、光速の数パーセントで衝突しても障壁で跳ね返せるくらいの大きさに粉砕するレベル)で使う為のモンやし、倉庫に収納されている兵器や道具も、超高度隔絶技術オーバーテクノロジー製品やから威力と効果が大き過ぎて、この星に降ろす事に問題が有ったからや。

 1頭の害獣を殺すのに、山や森を吹き飛ばすような兵器は害でしかないし、高出力で高機能な個人装備用の未来兵器など種の絶滅にしか繋がらんわな。

 歴史的遺産として積載されていたウィンチェスターライフルとコルトガバメントを攻撃用の魔法ファイノムとして移住者が使える様にしたけど、力不足なのは明白やった事も理由に挙げられる。


 自衛隊の装備品は、そういう点では丁度良い威力と効果やった訳や。


 ウチが死んだ後に行われた2回目のコピペ召喚は、ずばり完全武装状態の陸上自衛隊の部隊を狙い撃ちにしたもんやった。

 1回目と合わせて90人のコピペ召喚で止まったのは、1回目に召喚された日本人が星系間移民船プラントと交渉した結果や。

 そりゃあ、コピー元になった人間は怪現象に遭遇した後も地球でそのまま暮らせるにしても、この星にペーストされた人間は拉致されたのと同義や。

 いくらこの星に移住した人類が滅亡寸前まで追い詰められていても、やってはならん事や。


 まあ、最終的には90人のコピペ召喚者の努力と犠牲も有って、危機を脱した。

 その過程で生まれたのが、コピペ召喚者を表す『プラント様がつかわした援徒クリストス』という称号やった。

 簡単に言うと救世主や。


 でも、ウチは彼ら彼女らコピペ召喚者とは違う。

 転生者やからな。



 星系間移民船プラントによる情報採取の影響は思わぬ所に現れた。

 それが2人の転生者発生や。

 度重ねた情報採取の影響によって、あの時代の日本と時空間的なパスが出来た事は確認された。

 でも、人類最高の知識と技術を持つ星系間移民船プラントでさえも、何故転生者が発生するのかは未だに解明出来てない。

 どれだけシミュレートしても、理論の構築が出来んそうや。

 

 

 まあ、ウチとしては死んだ後にもう一度人生をやり直せてるんやから、儲けモンや。

 ほら、「生ける伝説の芸人さん」も言ってるやろ?

 『生きてるだけで丸儲け』ってな。




「誰にも使えない魔法ファイノムを使えて、戦闘力も桁が違う。それこそプラント教の聖典に記された『プラント様がつかわした援徒クリストス』の特徴だ」

「と言われても、違うんですよね。第一、私が援徒クリストスとするなら、生まれて来ない筈です。あの方々は成長した姿で顕現したのですから」


 伊達に教会に併設された孤児院で育ったんやないで。

 これでもプラント教の聖典は丸暗記してる。

 最初はゴンザレス3等教士の教育で知ったけど、内容が内容やからむさぼる様に勉強したで。

 しかも第1次成人の儀の時に、星系間移民船プラント自身から歴史に埋もれた裏側まで脳の記憶域に埋め込まれたんやからな。

 援徒クリストスに関しては、テラ族で1番詳しいで。


「200年前にも織田家の分家に私と同じ様な人間が生まれましたけど、その人と同じです。突然変異と思いますよ。もしくはプラント様の気まぐれかも」


 寺田さんはじっとウチの顔を覗きこんだ。

 ウチもJGVS-V8をマウントに取り付ける作業を止めて、両目で見詰めかえした。

 星明りの下で行われた目による探り合いは数秒で終わった。


「そうか・・・ 悪かったな、変なことを言って」

「いえ、お気になさらずに」


 寺田さんの方が先に目を逸らした。


「本当に13歳とは思えんな」

「ピチピチの13歳ですよ」


 苦笑いを浮かべた寺田さんがきびすを返して馬車に戻ろうとした時に、ウチは爆弾を投げ込んだ。



「来ますよ。大獣災」






  

お読み頂き有り難うございます。


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