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第24話 『転生しても摂り過ぎ注意』

20190327公開



 視線を感じたんで振り返ったら、お爺ちゃんズチームの川崎さんがウチを見詰めてた。

 その目には、前世を含めても初めて見た様な色が有ったけど、それが何かはウチには分からんかった。

 何故かは分からんけど、一つ頷いた後で川崎さんは丘の麓に目をやった。そこには自分達で殺した軽装甲レックスの死骸が横たわっていた。

 


「信じられん・・・ こんなにあっさりと殺せるなんて・・・」


 そう呟いたのは豊田トヨダさんだ。

 お爺ちゃんズチームで一番若い豊田さんやけど、外見は50歳台前半でも中身は80歳後半の筈や。

 そんな大ベテランだからこそ、軽装甲レックス駆除の難しさを知ってるんやろ。

 


「馬車に向かおうかいな? もう3人が着いた頃だろうが、手助けは数が多い方が良かろう」


 川崎さんがみんなの顔を見渡しながら提案した。


 そう。実は本田さんチームの内、3人を丘陵地帯を大回りさせて先に馬車の所に向かわせていた。

 あくまでも危険な状況で無ければという条件で、馬車の周りに固まっている狩猟士と合流させる為にや。

 怪我人が多数出ていたけど、ハチキュウに残り少ないピコマシンを回す為に医療補助魔法ヒールを使えなかった筈や。

 残存ピコマシンがそれなりに残っている3人が加わる事で、重傷の狩猟士が助かるかもしれんかったからな。



「そうですね。獣珠テソロは明日の採取で良いでしょう」


 寺田さんが一瞬空を見た後、そう言った。

 それから、狩り(もう狩りというレベルや無い気がするんやけどな)の邪魔にならない様に外していたバックパックを拾い上げた。

 ウチも自分のバックパックを拾おうとすると、本田さんが声を掛けて来た。


「オクダといったか? 本当に狩猟士ハンターに成りたてなのか?」

「ええ、本当に狩猟士に成りたてですよ」

「信じられん・・・ 自分に向かって突進して来ている災獣、ましてや軽装甲レックスを相手に一歩も引かずによくもまあ立ち向かえるものだ」

若気わかげいたり、ってやつです」

「言う事まで13歳らしくないんだが?」

「ピチピチです」


 うーん、ここでニッコリ笑えれば良かったんやけど、残念や。

 若気のイタリーや、若気の往ったり来たり、とかのレパートリーも有るやけど、多分言っても意味不明やろな。残念や。

 大体、ウチの辞書には緊張という言葉は無いんや。

 苦情はウチを生んだ出版元に言って欲しいけど、20光年彼方やし、しかも数千年前の過去やし、無理やろな。

 そう言えば緊という漢字絡みの言葉も無かったわ・・・

 いや、緊密なら有るな。

 ウチと香織カオリンは緊密や。だてに2歳の時から一緒に育ってないで。 



「ホンダ、言いたい事は分かるが、言っても何も変わらんぞ。確かに第2次成人を迎えたばかりの13歳とは思えん落ち着きだがな」

「教官、ピチピチが抜けてます」

「ああ、そうだな。悪かったな。ピチピチは必須だったな」

「分かって頂ければいいんです」 

 

 ドヤ顔をしたけど、誰も分からんやろな。ウチの表情は香織カオリンくらいしか区別出来んからな。

 早く帰って、香織カオリンを安心させたいんやけどなぁ。

 きっと、今頃は心配してくれてる筈や。

 心配・・・してくれてたら嬉しいな・・・

 なんか、急に自信無くなって来たんはなんでやろ? 


 まあ、どっちにしろ、かなりヤバい状況に陥りつつあるのは事実や。

 なんせ、夜が迫って来てるからな。

 ここは丘の上やからお日様がまだ照らしてくれてるけど、平野部は急速に夜に染まりつつある。

 その証拠に、馬車の辺りに何本もの松明が焚かれ出した。


 状況収束を知らせる信号弾魔法を撃った後で移動したウチらが馬車に着く頃には、ほとんど夜になってた。

 

 そして、主に夜に活動する獣も居ると言うのはこの星でも変わらん。



 △▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽


「どうしますか? ここで夜を明かしますか?」


 訊いた俺の質問に対するカワサキさんの答えは、ここでの野営を選択する、だった。

 

 これは仕方が無い面が有った。

 重傷者が多過ぎたのだ。

 一歩間違えれば、死んでいてもおかしくない怪我をしながらも、命を繋げる最低限の医療補助魔法ヒールしか使えなかったせいだ。

 最終的には、呆れる程の大量のピコマシンを医療補助魔法ヒールに込めたオクダの力技で死者は出なかったが、それでも安静が必要な狩猟士ハンターは6人に上った。


 野営する事に不安は無い。

 3等級狩猟士ベテランハンター以上なら、まず西の草原での狩りを経験しているからな。

 だから、ここに居る狩猟士ハンターで野営をした事の無い者の方が少ない。

 強いて問題点を挙げるなら、北の森で狩りをした帰りのチームばかりでテントや防寒具を持って来ていない事だったが、馬車の持ち主の行商人が代用可能な商品を放出してくれた事で急場は凌げそうだった。

 まあ、2頭の軽装甲レックスに襲われたにも拘らず生き残れたのは、命懸けで軽装甲レックスを近寄らせなかった狩猟士ハンターのおかげなのだから、感謝の印としては妥当なところだろう。


 

 △▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽



 みんなには内緒やけど、ウチは初めての野営にちょっとワクワクしてる。

 そりゃ、香織カオリンに会えんのは悲しいけど、明日には会える。

 代価として得られる野営の経験はその悲しさに十分に見合う価値が有ると思うんや。

 先輩狩猟士のノウハウを知るだけでも美味しいと思うで。

 例えば、夜行性の害獣としても知られる草原ラプトルの接近を知る為に仕掛ける鳴子やけど、今回の様に手持ちが無い時の代用品として何を使うか? とかや。

 他にも、初日で必要性を痛感して常備品に加えたロープも、太さが違う物を2種類以上用意していたり、夜警の順番を決める時にどの時間帯が人気が無くてなすりつけるのが大変かを教えてくれたりとか、ノウハウが大漁や。

 今回の軽装甲レックス駆除に係わった中で最年少ながら、単独で撃破したウチを可愛がってくれたというのは有るやろうな。

 それと、ウチの医療器具と力技で押し通した医療補助魔法ヒールで助かった狩猟士の同僚さんも可愛がってくれたからな。

 モテ期か? モテ期が来たんか?


 そうそう、初めて食べた干し肉が、ネット小説で散々書かれていた様に堅かったのもええ体験やった。

 まあ、それ以上に塩辛い方が閉口したけどな。

 あんなんばっかり食べてたら、血管がボロボロなったり、高血圧になったり、ドロドロ血液になったり、脳卒中を起こしそうやで。

 カリウムを多く含んでる食品と一緒に摂るとか、なんか考えとかなあかんな。

 異星に来てまで生活習慣病に気を付けなあかんなんて、生活感有り過ぎや。

 主人公が生活習慣病に気を付ける異世界転生小説なんて、読んだ覚えが無いけど、これこそ事実は小説よりも奇なり、ってヤツやろか?



 まあ、冗談はさておき、ウチは1番最初に夜警当番を割り当てられたんや。

 最初に夜警を済ませると、そのまま朝まで寝れるから、1番楽な順番ってヤツや。 



 さあて、張り切って夜警当番するで。




お読み頂き、誠に有り難うございます。

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― 新着の感想 ―
[一言] 「まあ、冗談はさておき、ウチは1番最初に夜警当番を割り当てられたんや」 13歳の少女を無理やり参加させられたような討伐なのに、夜警当番回って来るんだ。
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