第2話 『初めてのハンティング』
20190201公開
本日2話目の公開です。
村の外に出たら、さっそくそれぞれが魔法を発動させた。
ウチも取敢えずはハチキュウの召喚を選んだ。
同級生たちがちょっと残念そうな顔をしたけど、いきなりMINIMIを召喚するのは無駄ちゅうもんや。
だいたい、銃本体だけでも7㌔くらい有るんやで?
か弱い女の子をなんやと思ってんや。見世物違うで。
第一、ハチキュウって十分に役に立つで?
単発で撃って良し、連射も出来て、しかも3発ごとに止めてくれる機能もあるんやで?
重さもMINIMIの半分くらいやし。この細腕を見てみ? 軽い方が似合うやろ?
「よし、全員、召喚は終わったな。まだ村を出てすぐだが、油断をしない様に。過去の事例では村から100㍍も離れていないところで害獣に村人が襲われた事も有る。分かったな?」
「はい」
ふーん、そんな近所で襲われたか・・・ 初耳や。
寺田さんの話を聞いたみんなも、緊張感を上げたみたいやな。
でも、ちょっと緊張し過ぎちゃうかな?
香織なんか、顔色が真っ青や。
「先生、その村人はどうなったんですか?」
ウチが質問したら、寺田さんがホウっと言う顔をした。
「無事に撃退した。まあ、ハグレの害獣だったからな」
「そうなんですね。有り難う御座いました」
そんなオチやと思ってたで。
第一、防壁の上に衛士さんが居るから、普通はそんなに接近させへん。
きっと、村が出来たばかりの頃の話ちゃうかな。
最近は村の周りでは害獣を狩ることはほとんど無いらしい。
まあ、草原に居たら格好の的やからな。
だから、基本的には東に歩いて30分の距離に在る林か、北に歩いて1時間の場所に在る森が狩場になってる。
初めての狩りと言う事で、どうやら東の林に向かうみたいやな。
寺田さんの話が効果を発揮したのか、みんなが気を緩める事無く東の林に着いた。
「さあて、これから本格的に林に入るが、最重要な事は何だと思う?」
寺田さんの質問にみんなが考え込んだ。
まあ、授業では危険に近づくなという教えやからなぁ。
「君、何だと思う?」
十分に考えたと判断したのか、寺田さんが小倉君を当てた。
「襲われない様にする、ですか?」
「惜しいが、不正解だ。先手を取る、という事だ。先手を取られた場合、受け身になって主導権を奪われる。上位のハンターの中にはワザと隙を作っておびき寄せるグループも居るが、初心者で先手を取られると盛り返せなくて詰むぞ。だから常に周囲に注意して、先手を取られない様にしろ」
「はい」
「慣れてくれば、地面や草や木に残った痕跡から、いつ、どんな害獣が、どこに向かったか、が分かる様になる。更に慣れてくれば、何故か、も分かる。そうやって経験を積んで行けば、自然と狩りが安定する。ただし、先手を取られた場合の事も常に頭の中に入れておけ」
「はい」
うーん、タメになるなぁ。
林に入って30分ほどしたくらいやった。
寺田さんの顔が緊張感を帯びた。
かなり小さな声でみんなに呼び掛けた。
「一旦、停止。嫌な空気が漂っている事が分かるか?」
空気を読む事に掛けては地球一と言って良い日本で育ったウチやで。
そう言われてすぐに気付いた。
なんと言うか、静か過ぎるんちゃうか?
林に住んでいる生き物全てが息を潜めている気がする。
こっそりと、ハチキュウからMINIMIに召喚し直した。
気配が発生したのは突然だった。
100㍍と離れていないところにいきなり殺気が発生した。
待ち構えてたんやろ。積もってた葉っぱがパッと散って、恐竜に似た肉食獣が姿を現した。
げ、あれ、害獣違う、災獣や。
大きさが全然違う。
「各自、連射、撃て!」
寺田さんが号令を出す前にウチの指は引金を引いていた。
1秒間に10発以上の発射速度を誇るMINIMIが吼えた。
空気が変わった5秒後に引金から指を離したが、同級生みんなが呆然とウチを見てた。
照れるから、そんなに見詰めんといてや。
「凄いな・・・」
寺田さんが前のめりに動かなくなった災獣を見ながら呟いた。
お読み頂き、誠に有り難う御座いました。