表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
18/50

第18話

20190313公開



 ハンター稼業3日目はラプトル5頭、アロ2頭を狩った段階で打ち止めになった。

 7頭もの害獣を捌いて、穴を掘って埋め終る時間を考えるとそれだけで夕方になってしまうやろうからな。自分達のペースを知らない内は無理な狩りは避けた方が良いという寺田さんの判断や。

 害獣を捌いていると、周辺に別の害獣が居ないかを確認してくれた鈴木さんたちが戻って来た。

 まあ、こういう事も本来は自分達でせなあかん訳や。

 ソロや少人数で狩りをする狩猟士ハンターが少ない理由の1つや。

 狩るだけならソロでも出来るけど、その後の作業が危険になるって事や。



「なんかおかしいと思わんか?」

「何がですか?」

「いや、東の林にしては獣影が濃いと思わんか?」

「確かにラプトルとアロが同時に7頭も出て来るのは珍しいですね。北の森並みかそれ以上ですからね」

「それと、あと気になるのは、ここに来るまでに見掛けたイベリコやウーの数が多い様な気がする。この林にこんなにたくさん居たか?」

「そう言われれば、昔に来た時よりも多い様な気もしますね」

「気にし過ぎかもしれんがな・・・ 念の為に狩猟士会に話だけでも入れとくか・・・」


 寺田さんと鈴木さんの会話が微かに聞こえて来たけど、以前との比較が出来んから判断に困るな。


 とはいえ、害獣の数が多いというのは獲物が増えるメリットも有るけど、危険度が跳ね上がるという事も分かる。

 例えば、4頭のラプトルの群れを余裕を持って相手にする事が出来る4人組の中堅ハンターチームが居るとして、1頭増えた5頭を同時に相手にするだけで危険度が上がるのは感覚的に分かる。 

 ラノベ作家でミリオタでもある加奈っぺの受け売りやけど、或る条件では戦力の比較は二乗して考えるって言ってた。

 ハンター4人VS害獣4頭では余裕と言う条件やけど、ハチキュウ無しで戦う場合は互角くらいちゃうか?

 でも、ハチキュウという飛び道具を使ってるウチらハンターの場合は二次法則とやらになって、計算に二乗が出て来るんやった筈。

 4の二乗は16で、飛び道具の無い害獣は4のままや。

 4VS4では無く、16VS4と考えたら、ずいぶんな余裕が有る事が分かる。

 それから、生き残る戦力を出すには、16と4の差が12やから、それを√(ルート)すれば良かった筈。

 3.4か3.5かそこらくらいか?

 おっと、思ったより納得の数字が出たな。

 害獣4頭を全て仕留めた後に残るハンターの人数が計算上で3.4人から3.5人って意味や。減った分は怪我でもするとしとこか。

 そして最初の仮定に戻る訳や。

 ハンター側の4はそのままで、害獣は5になる訳や。

 16引く5は11やから、√(ルート)したら3.3くらいでほとんど変わらん。


 でも、ここでラプトルが5頭に増えた数的有利を活かす為に群れを分けたらどうなる?

 罠と言ってもええくらいの挟み撃ちをして、ハンターを分断して2VS3+2VS2に持ち込んだら?

 4-3=1、4-2=2・・・

 3頭を相手にした2人は片方が殉職して、2頭を相手にした方は1人怪我という結果にならんか?

 

 結構な確率でハンターの1人が死ぬか大怪我してしまうって事やな?

 もし、害獣が6頭になったら?

 この計算やったらチームの半分の2人が殉職確実や。


 まあ、あくまでもお遊びみたいな計算や。

 ハチキュウを使用した時にはハンター側の戦力が上昇する点を考慮に入れてないし、そもそもラプトルが接近出来るのか?という点を考慮に入れてない。

 でも、経験不足や油断や不注意で至近距離まで接近されたら、意外と外れてない気もするな。

  

 うん、ウチらも不断の勉強を重ねて、狩りの最中には集中力を切らさない様にせんといかんな。



 狩猟士会ハンターギルド会館に戻ったのは午後5時くらいやった。

 先に狩りから帰って来てた先輩狩猟士が13人ほど居た。お爺ちゃんズチームも帰って来ていて、ウチらが会館に入ると、手を挙げて挨拶してくれた。


 今日の獣珠テソロ買取価格は、7個合計で7ゴル7シルになった。

 1人当たり1ゴル1シルやから、この狩猟士会ハンターギルド所属の狩猟士の1日の平均的な収入と言える。


 でも、ウチと香織カオリン以外の5人の顔に一瞬やけど不服そうな表情が浮かんだ。

 狩りからの帰りしなに寺田さんと鈴木さんが2人掛かりで『幸運過ぎたヒヨコの罠』の危険性を教えてたけど、残念ながら完全に理解しきれんのやろう。

 災獣3頭を狩ると言う破格のデビューをしてしまっただけに、割り切るのに時間が掛かるかもしれんな。



 1ゴルと1シル硬貨を分け終る寸前やった。

 会館のドアが手荒く開けられて、1人の衛士が飛び込んで来た。


「3級以上の狩猟士は居るか!? 北の街道側で災獣出現の信号弾魔法が挙がった!」


 一瞬の間が有って、寺田さんが答えた。


「俺は3級だ。それで現れた災獣は単独か、複数か?」

「複数だ! 人的被害も出ている。もう少ししたら駆除要請が出る筈だ」


 衛士はそれだけを伝えると、また出て行った。

 入れ違いに5人の狩猟士ハンターチームが入って来た。

 重傷者が出たのか、上着を使った簡易担架で運ばれている人の姿も有った。


「災獣2頭が街道側に出た! 街道を走っていた荷馬車が襲われた。現在、周辺に居たチーム2つが対応しているが、ヤバいかも知れん。増援に出れる狩猟士は居ないか?」

「さっき、衛士が来て、もう少ししたら駆除要請が出る筈だと言っていたが?」

「それじゃ間に合わんかもしれん! 出たのは森林重レックスじゃない、軽装甲レックスだ!」


 短距離なら時速50㌔近い走力を発揮し、進化の過程で皮が硬化して装甲を纏った様に見える事から、名付けられた災獣だった。


 

 人間のテラ族を好んで襲う事から、草原で最も恐れられている災獣だった。

 


お読み頂き、誠に有り難うございます。


 

 5:5評価を下さったイケメンもしくは美女の読者様が出現(^^)

 これで、評価平均が4.5、4.5まで上昇しました。

 これまで評価して頂いた皆様も合わせて、感謝申し上げます m(_ _)m

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ