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第16話

20190307公開



 ウチらの視線の先では、草食動物が林の中の開けた場所でお昼寝をしてる最中や。

 4本足で、丸々と太った体格は地球の豚を思い浮かべさせる。

 体高60㌢、全長120㌢、体重も200㌔くらいと豚並みや。

 豚との違いは、鼻が発達する代わりに太くて短い角が生えてる点や。この点はサイに似てる。

 12頭くらいの群れで、全長40㌢くらいの子供も混じってるから家族なんかもしれんな。


 ちなみにこの草食動物をテラ族は『イベリコ』と呼んでる。名前の由来がイベリコ豚から来たって言うのが丸わかりやろ・・・

 この星に植民したテラ族の祖先に小一時間ほど説教したくなるのは当然やと思うで。

 益獣に区分されていて、ディノ族とテラ族共に広く飼育してる。俗に言う経済動物やな。

 成長はかなり早い。生後半年で出荷されるし、妊娠もそれくらいで出来るほどや。

 甘味の有る脂身と柔らかい赤身が特長や。2時間くらい煮込んで食べたら、口の中でホロホロとほぐれるんやで。

 ほんと、ブランド豚並みに美味しいで。地球で売ってたら100㌘250円くらいは出しても惜しくないくらいのお肉や。

 牛肉よりも身近な肉なのも豚肉と一緒や。安いお肉としては鶏肉も流通してるけど、鶏肉よりもちが良いからイベリコの方がよく食べられてる。

 


 北の森と違って、この林ではイベリコを狩るのは禁止されてないけど、寺田さんの話では狩猟士ハンターは基本的に手を出さんらしい。

 何故なら、この林は、万が一、災害とか干ばつとかでスカー村が食糧不足に直面した場合の緊急用の天然食糧庫としての役割も持っているからやそうや。

 そう言われたら、普通は狩るのを避けるわな。

 でも、何事にも例外が有って、村人や一部のハンターは狩ったりするらしい。

 理由は簡単や。

 経済的にお肉が買えない時には背に腹は代えられんって事や。ダリオもちょくちょくお世話になってるそうや。


 で、ウチらが何故、イベリコのお昼寝を見てるかと言うと、この子らを天然の撒き餌として害獣を待ち伏せしてるからや。

 午前中に見付けた森林ラプトルの足跡がここから北に1㌔ほど行ったところに在ったのと、弱い南風が吹いている点から、イベリコの匂いに釣られて来る可能性が有るそうや。

 意外な事に害獣は犬ほど鼻が利かんらしい。

 まあ、目が4つも有るから嗅覚よりは視覚に頼っているんやろ。

 それと、人間の匂いに対する警戒心が薄いというのも大きいか。

 イベリコと人間の匂いが混じっていても、イベリコの匂いだけを追い掛ける習性が有るみたいや。

 多分、本能的なもんやろうけど、いつかは人間の匂いには警戒すべきと学習されるかもしれんな。

 

 1時間ほどじっとしていたら、北西の方向からフクロウの様な鳴き声が聞こえた。

 そっちの方向にはベテランハンターチームの半分の2人が居てる。

 鳴き声の長短を組み合わせた合図も本日学習した内容の1つや。この帯域の音はこの星の生き物には聞こえ難いらしい。

 フクロウの物真似の様な合図が意味するのは、害獣を見付けた・・・や。

 追加で更にフクロウの鳴き声が聞こえた。

 少なくとも複数の害獣が来た事が確定した。

 更にもう一度フクロウの鳴き声が聞こえる。

 どうやら、やって来た害獣は森林ラプトルでは無く、珍しくアロの様だ。

 4頭から5頭の群れで狩りをするラプトルと違って、アロは群れても2頭か3頭や。

 それでも油断は出来ん。

 ラプトルよりも大きいし、力も強い。大きい割には脚も速い。

 性質も獰猛で根っからの肉食獣や。

 災獣程では無いけど、油断してええ相手ではない。


 ウチらが気合を入れ直していると、今度は北東の方向からフクロウの鳴き声が聞こえて来た。

 森林ラプトルを複数発見・・・

 さすがに2種類の害獣が同時にやって来るのは想定外や。

 寺田さんの方を見ると、ハンドサインでウチと香織カオリンを指名した後で、アロを意味するサインを送って来た。

 了解の印に頷いた事を確認すると、今度は坂口理恵リエッチちゃんたち5人にラプトルのサインを送った。

 あ、小倉カズ君だけ、ポカンとした顔をしてる・・・

 寺田さんがもう一度、カズ君にサインを送ったところで、やっと意味が分かったらしい。

 うーん、やはり、ハンター生活3日目の新人ハンターとしたら、こんなもんやろな。

 で・・・・ なんで、一斉にウチを見る?

 いや、ウチを見ても何も芸をせえへんで?

 でも、気になるのは香織カオリンを除いたみんなの顔が緊張の余り表情が固まってる事や。

 無表情はウチの専売特許やねんけどなぁ。

 こんなに緊張してたら実力を出されへん。

 下手に声を掛けられんしなぁ。

 ハンドサインには『ガンバレ』とか有らへんしなぁ。


 しゃあない、非常手段や。

 ウチは拳を握った右手を頭の高さまで上げて、みんなの注目を更に引き付けた。


 よし、今や。



 全身全霊の力を振り絞って顔面の表情筋を動かした。

 前世の記憶が無かったら、きっと無理やったと思う位に大変な作業の末に、やっと微笑み程度に目尻が下がって、口角が上がった。

 それぞれ1㍉は動いたんと違うか?

 必至に頑張って表情筋を1㍉動かしたウチと違って、みんなの表情は劇的に動いた。1㌢は動いたん違うか?

 うん、あの表情は驚愕、ってヤツやな・・・


 そして、一斉に頭を振って、目を逸らした。

 その表情には緊張感がほとんど残ってなかったけど、代わりに、見てはいけない物を見てしまった、という文字が貼り付いてた・・・

 

  

 なんか、やり切れん気がするけど、みんなの緊張がほぐれたんやから良しとしようか。

 ま、香織カオリンだけがウチの努力を認める様に微笑んでくれたから、今回の努力の収支は黒字って事にしといたろ。




お読み頂き、誠に有り難うございます。



 ただ、楽しんで頂けているのか? という点でmrtkの中で不安が広がっています。

 疑心暗鬼の中で執筆するのもしんどいんで、そろそろ見切りを付けるべき?

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