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第11話 『凄まじい』

20190215公開



 第2次学校の先生サマをしている友人が言った言葉が脳裏に甦った。


『オクダはすごいぞ。ハンター志望らしいので、もし見掛けたら気にしてやってくれ。まあ、アイツが簡単にやられるとは思えんがな』



 酔った席で、その言葉を言った友人の目は笑っていなかった。

 そして実際に一緒に行動して感じた事は、『すごい』では足りない、という事だった。

 

 すごい、というより、すさまじい、という言葉の方がピッタリ来る。



 昨日の災獣に対した時もそうだ。ハンターになって初日とは思えない反応だった。

 初めて害獣を間近で見たハンターは覚悟していてもどうしても身体が硬直する。

 これは、生存本能から来る反応なので仕方が無い面が有る。

 ましてや、いきなりの災獣だ。

 どう考えても行動を起こすには時間が掛かる。

 それをあっさりと乗り越えたばかりか、火力で押し潰すなんて、常識では有り得ない。

 第一、俺が引き金を引く前に、もう撃ち始めていたくらいだ。

 完全な待ち伏せを食らった状況で、すぐに反応出来る神経が信じられん。


 20年以上ハンターをやって来たが、災獣をこれほど簡単に殺してしまうハンターなんて見た事も聞いた事も無い。

 いや、読んだ事は有るな

 ヘキサランドで500年前に起こった大獣災の折りに召喚されたオダ家の始祖とその妹だ。

 『聖人』としてプラント教があがめている兄の方は、ジエイタイ最強の部隊出身だった事も有り、個人での災獣討伐数は2桁半ばに達する。

 妹の方も誇張されているかも知らんが、同じ人類と思えない様な逸話に事欠かない。

 そういえば、オダ家と言えば、200年前にも怪物の様な強さを見せた子孫が居たな。

 その他にも凄いハンターは幾度と無く現れたが、オクダはハンターになって2日目で、それらに匹敵する実績を残したという事は間違いない。

 手榴弾なんて存在は知っていても召喚出来ない魔法を使えたり、上半身をブレさせずに走って難易度の高い的を撃ち抜いたり、ツッコミどころ満載としか言えんが・・・・・

 情報をどう扱うべきか、真剣に考えざるを得んな。

 

 俺がちょっと考え込んでいたら、声を掛けられた。

 俺たちが助けた3人組のハンターチームのリーダーのカトウが治療を受け終えて声を掛けて来た様だ。


「助かったよ、テラダ。もし救援が無ければ、俺たちは確実に全滅していた」

「お礼ならオクダに言ってくれ。あの子が居なければ、俺たちも全滅していたかもしれんしな」



 俺たちが見詰める中、オクダが右手を空に向けた。

 あ、やば・・・

 状況収束を知らせる信号弾魔法を撃つのを忘れてた・・・



 △▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽



 状況収束を意味する信号弾魔法を撃った直後にハンターチームがやって来た。

 さすが、スカー村のメイン狩場の北の森というところやろか? ハンター密度が濃い証拠や。

 


「ウオ、でか!?」

「2年ぶりに災獣を見たな。こんなにデカかったっけ?」

「いや、デカいというより、体格が立派なのでは?」

「あ、カトウさん。カトウさんたちですか、この災獣を狩ったの?」


 見たところ高校生くらいの4人組のハンターチームや。

 多分、歳は20歳代半ばから後半やろうから、10年以上、下手したら15年くらいのキャリアを持っている筈や。

 取敢えず、ここは何食わぬ顔で新人ハンターらしくしとかな。


「あー、違う違う。俺らはむしろ喰われかけてた方だ。テラダが引率してた新人研修中のド新人チームが倒してくれた」

「マジっすか!?」

「ああ、マジもマジ」

「今年のルーキーは豊作ですね。ツバ付けておこうかな。で、誰がお勧めですか?」


 その言葉に対する返事は微妙な空気だった。


「え、どうしたんですか?」

「いや、多分、争奪戦になると思うぞ」

「は?」


 その微妙な空気を破ったのは、新たに到着したハンターチームだった。


「おいおい、こっちでも災獣が狩られてるぞい?」

「マジかいのう?!」

「さっきのと合わせて2頭も出るなんて厄日じゃな。いや、狩ったんならお祭り騒ぎかいな?」

「お、カトウじゃん。オメエらか、狩ったんは?」



 2組目は50歳代に見えるハンターチームやった。

 日本で言えば現役を引退している御歳のお爺ちゃんチームだ。

 遺伝子操作の恩恵は凄いとしか言えんな。


「違いますよ。新人研修中のルーキーたちが狩ったんですよ」

「オイオイまじかいよ」

「よし、ツバを付けとこう。若いエネルギーも取り入れねばな。で、どいつがお勧めじゃ?」

  


 こうして、倒した2頭の獣珠テソロを取り出すまでに合計5チームが集結してしもうた。

 最後の方は何故か、じゃんけん大会が始まっていたけど、きっとウチとは関係無い筈や。

 勝ったチームが、両手を突き上げて喜んでいたけど、関係無い、多分・・・

 「獲ったZOOOO」って叫んでたけど、ウチは知らん。

 どうしても欲しければ、ドラフト会議でもしたらええねん。ま、ウチは関係無いけどな。 




 うん、明日は休みやから、今日の事は忘れてゆっくりとしよか・・・

 あ、今夜のおかずは豪勢にしよか。

 久し振りにビーフステーキもええな。みんな喜ぶで。





お読み頂き、誠に有り難うございます。


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