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第1話  『始まりの朝』

20190201公開






美希ミキ、起きた? 顔を洗いに行こ?」


 そう言って、隣のベッドから声を掛けて来たのはオカ香織カオリちゃんや。

 年齢はウチと同じ13歳で、昨日一緒に第2次成人を迎えた子だ。

 同い年なんやけど、本当は違う。

 ウチには41年分の日本で暮らして来た記憶が有るからな。


 息子のかけるに教えて貰って、休憩時間によく読んでたネット小説で人気の異世界転生が自分の身に振り掛かるとは思いもせんかったで。

 異世界転生と言っても、ファンタジー世界というよりはどっちかというとSF寄りかな?

 ラノベ作家稼業に進んだ加奈っぺに聞けたら分かるんやろけど、20光年も離れてたら訊けんわな。


 そうそう、コッチでのウチの名は奥田オクダ美紀ミキって言うんや。

 由緒正しい家系らしいけど、今のウチはいわゆる孤児ってやつや。

 そして、香織カオリンもウチと同じ孤児院で育って、今日から一緒に命懸けのお仕事をする腐れ縁や。



「ミキは大物だなぁ。緊張してるように見えないよ」


 井戸の水も大分温ぬるくなって来たなぁ、と思いながら顔を洗っていると、香織カオリンがポツリと言った。


「そうか? これでもキンチョーしてんで?」

「いやいや、その顔は緊張してるというよりドヤ顔だから」

「ははは。でも、緊張してるのは事実やで。ちょっと他人より面の皮が厚いんで分からんだけや。って、誰が厚化粧やねん、ほっといてんか!」

「うん、緊張してるなんて嘘だと思う」


 うーん、前世が関西人だから、つい、ボケをかますのが本能みたいなもんやから、しゃあないわな。

 ついでに、ツッコミがらんから、ついつい1人コントをしてしまうのもしゃあない。


 ウチが記憶を取り戻したのは2歳の頃やった。

 ベットの周りを家族に囲まれて、みんなの空気から、ああ、もう、駄目なんやぁ、病気しんどかったけど、これで楽になれるんやったら、それはそれでかまへんかぁ・・・ 今まで何十人何百人と患者さんの最後に立ち会って来たけど、患者さんから見たらこんな感じなんやぁ などと思っていたら、いきなり周りの空気が変わってたもんな。


 それまで押し殺す様な忍び泣きが聞こえてたのに、いきなり幼児のガチ泣きに変ったんやから、思わず呆然としたのを覚えてるで。

 泣き声がする方に顔を向けると、この世の終わりとでも言わんばかりに泣いてる幼女がった。

 在りし日の香織カオリンやった。

 で、「なまいきや」と言いながら、その香織カオリンの頭を殴ってるヤツが居った。

 思わず立ち上がって、その男の子を横から突き飛ばしたけど、ウチは悪くないはずや。

 それだけやったら、反撃を喰らうかもしれんから、馬乗りになってポカポカと殴った(ほんまにポカポカとしか言いようがないパンチやった。まあ2歳児やしな)のも、しゃあないことや。

 おかげで、ウチを見るみんなの目に恐れが混じったのは困ったけど、直後にウチに抱き付いて来た幼女のせいでそれどころやなくなったんや。

 まあ、転生デビューがいきなりのマウント勝ちというのはウチの黒歴史や。


 顔を洗い終わったら、孤児院の厨房に向かった。

 本当なら第2次成人を迎えたら孤児院を出るのが普通やけど、ウチら2人は家賃と食費を入れるという条件で引き続き住まわして貰う事になってる。部屋が空いてる間だけやけど、かなりありがたい。

 お金だけでは申し訳ないんで、食事を作るのも手伝う事にしようと香織カオリンと決めてるんで、厨房に向かってるって訳や。


「あ、ミキネェとカオリネェだ! なあ、なあ、ミキネェ今度MINIMI見せてよ!」

「こら、アイサツが先でしょ。おはようございます、は?」

「えー、オハヨッス」

「ちゃんとアイサツできない子にはミキが見せてくれないよ」

「おはようございます」

「はい、おはようございます」

「オッス」

「ミキ、あんたが手本を見せなくてどうするの?」

「えぇえぇぇ。しゃあない、見本を見せてあげるわ。ごきげんよう、みだしなみはきちんとね。プラント様が見ていらっしゃるわよ」

「なにそれ?」

「知らない? 一部ではこっちが正しいんやで」

「変なの! じゃ、今度MINIMI見せてよ!」


 そう言って、ウチらより3つ下の金髪碧眼の天使の様な男の子が井戸の方に走って行った。

 まあ、あれくらいの男の子ならMINIMIを見たがるのは分かる。

 日系人ならほぼ全員が89式5.56㍉小銃ことハチキュウを召喚出来るので、同級生からハチキュウを見せて貰っているやろう。

 ただ、MINIMIまで召喚出来るのはごく少数だ。

 そのごく少数の1人がウチや。他は一部の名家に居るかどうかや。


 それはそうと、香織カオリンはやっぱり先生向きの人材やな。

 残念ながら財布の問題で第3次学校に行けんかったけど、これからの1年間で貯金を作って1年遅れでも行かせる積りや。まあ、これは香織カオリンにも言っていない。香織カオリン自身もその積りでハンター稼業を選んだけど、1人で貯めるより2人で貯めた方が確実や。

 香織カオリン、きっとええ先生になるで。

 で、ウチは今世では憧れのスローライフとやらを目指してるけど、どうなるんやろ?

 まあ、なる様にしかならんわな。



「おはようございます、ゴンザレス教士」

「おはようございます」

「あ、カオリ君、ミキ君、おはようございます。手伝いに来てくれたのかい?」

「はい」

「ああ、それは助かる」


 厨房に着くと、そこにはゴンザレス3等教士がみんなに配るパンを切っていた。

 50歳くらいに見えるが、実年齢は80歳近い。遺伝子操作によるアンチエイジング効果半端ないで。 

 本当を言えばもう1人教士が居るけど、産休を取ってる。

 まあ、そのおかげでウチらが出て行かんで良くなったからラッキーと言える。

 慣れた作業やから、すぐに朝食の準備は終わった。


 当然の様にみんなと朝食を頂いた後、遂に村の外に出る事にした。



 △▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽


 うー、緊張する・・・・・


 一応、身を守る術は学校で習った。

 何回か授業で村の外に出た事も有る。だけど、その時はむしろ害獣に遭わない場所を選んでいた。

 ハチキュウも授業で沢山撃ったし、色んな知識も習った。

 でも、授業と実戦は別モノだ。

 今日からは、害獣に遭遇して、殺して、体内から獣珠テソロを取り出して、買い取ってもらって初めて仕事として完了になる。


 安心材料としては、最初の10回は先輩ハンターの指導が付く事だ。

 私やミキみたいな駆け出しが5等級で、指導してくれるハンターは3等級以上だから心強い。

 もう1つの安心材料は、私の隣を歩いているミキだ。

 この子は昔から頼りになる。本当に同い年かという位に頼りになる。

 それと、血筋の影響か、同級生がハチキュウしか召喚できないのに、ミキだけMINIMIも召喚可能だ。

 1度だけ、授業で撃った事が有ったけど、圧倒的な火力だった。

 ミキが一緒に来てくれるだけで安心安全の度合いが一気に上がるのだから、本当に頼りになる。 


 外に出る為の東門前でハンター職を選んだ同級生たちを見付けた。

 15人居た同級生でハンター職を選んだのは7人だ。のこりの8人は進学したり村の中の仕事に就いた。

 私も本当は村の中の仕事を選びたかったけど、進学する為のお金を稼ぐにはハンターを選ぶしかなかった。何としてでも軍資金を貯めなきゃ。


 

 △▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽



 うーん、みんな緊張してるなあ。

 ま、当然と言えば当然か。

 むしろ、緊張しろよ、ウチ・・・

 まあ、前世でも緊張とは無縁だったし、2度目の人生だし、どこか達観しているのが原因やな。

 

「ようし、みんな集まったな? 念の為、点呼を取るぞ」


 昨日初めて顔を合わせたベテランハンターの寺田さんがやって来てすぐに点呼を取り始めた。

 点呼が終わると、今度は各自の装備の点検や。

 まあ、装備と言っても全員がハンター協会からレンタルした硬化レザーアーマーを着て、水や昼飯のパンやタオルや包帯としても使える布を入れたリュックサックを背負っているくらいや。ウチだけは前世の職業の影響で追加のあれこれを入れてるけどな。

 そうそう、腰のベルトには解体用の剣鉈を下げてるな。

 え? 忘れた? 

 小倉カズ君、それはマズイって。

 そういう細かい事から平常心を無くすんやで。はぁぁぁ・・・


「カズ、これ、貸しとくで。ウチ、もう1本、剣鉈持ってるからな。でも、ちゃんと返してや。おとんの形見やからな」


 小倉カズ君、助かったからって、そこまでお礼を言わんでええで。

 あれ、寺田さんがウチの顔を見て、表情が和らいだ?

 もしかして、ハンターやったおとんとおかんを知ってるんかもな。



 さあて、死なない程度に頑張ろか。






お読み頂き、誠にありがとうござます。


 基本的に週に1~2回ほどの更新ペースの予定です。

 ただし、

 ブックマーク&評価&感想を頂ければ、投稿ペースが上がる可能性を否定出来ません(^^;)

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