青い空
『忠誠の果てに』
乾いた風が街に吹く。
秋の終わりがそろそろ見えそうな11月。
ミケーネ共和国陸軍第一部隊隊長ローグは、その日空を見ていた。
ミケーネ共和国は人口一億を超える大国で、海に面した豊かな国土で農業を営む静かな国だった。
勿論、そんな国に陸軍など必要はないのだが、国防の要として設置されている。
陸軍は他国との地上戦や密偵、破壊工作などを主とし、腕っ節に自信のある者たちの集団だった。
だが、こんな平和な国だ。
陸軍の必要となるようなことなど起こらない。
それ故、普段陸軍は交通整理や事故処理、福祉活動に従事している。
無論、最初からこんな平和だったのではない。
つい何年か前、ミケーネ共和国は隣国と大戦が絶えない危険な国だった。
この平和を得るために、何年の歳月が流れ、また何人の犠牲を払ったのか分からない。
ログはその射撃の能力の高さを買われて第一部隊に編入した。
数年の後、何人もの同士を失い、終戦を迎えた。
心に癒えることの無い傷を残して。
「隊長?」
いきなり背後から呼ぶ声がした。
執務室の隊長専用イスをくるり、と回転させて振り向く。
と、
「ファイ補佐官」
そこにいたのはログの片腕とも呼べる、リリア・ファイ補佐官だった。
普段の業務を取り仕切り、仕事をサボりがちなログを支える優秀な補佐官。
彼女もまた数多くの大戦をくぐり抜けてきた戦闘員だった。
しかし女性が軍上層部に食い込むことは難しく、風当たりの強い第一部隊だったため、彼女はログの補佐官として共に働くことにしたのだった。
「お仕事の方は終わったのですか?」
「いや、今日は空が青いと思って。」
そう言われてファイは空を見た。
透き通った空に、白く薄い雲が浮いていた。
「秋だからですね。」
「それだけか?」
ファイが窓から乗り出していた身を室内に戻そうとした、その時。
「!」
唇を霞めた何か。
求めたのはどちらか。
―執務中です―
今更な補佐官の発言に
サボり性の隊長は
軽く微笑んだ。
to be continue..
こんにちは、煌です。 今回は「忠誠の果てに」を読んで下さり、誠にありがとうございました。orz 私は軍とかそういったモノに詳しくないので、細々した間違いなどは目を瞑って下さいませ。 ちゃんと続くかは分かりませんが、これからも宜しくお願いしますorL