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妄想はいにしえの彼方から。  作者: 大嶋コウジ
追っかけ少女 ツク
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ひっさびさの登場ですっ!

 ツクが部室に自首するように入って来て皆が許した後、唐突にマフメノがツクに話しかけた。


「と、ところで、あ、あの……、こ、この四足歩行ロネントはぁ……ツ、ツクさんが作った……のぉ?」


「は、はい」


 女性と話したことの無い男性らしいドギマギした声に部員達は笑いそうになっていた。ロウアは頑張って話しかけたマフメノを心の中で応援していた。。

 今まで黙っていたマフメノは、ずっと四足歩行ロネントを調べていたようだった。


「えぇ?!すごいぃっ!ひ、一人でぇっ?!」


「はい、一人で作りました……」


「おぉ、すごいじゃないかぁっ!!」


「そ、そんなことは……」


 ツクは照れ笑いをして下を向いた。

 初めてツクが笑顔になったので部員はちょっと安心し、マフメノにしてはよくやったと思った。


「このプロペラで飛ぶのかぁ~、原始的だけど構造が楽になるよねぇ、フムフム……。だけど、二つしか無いプロペラで移動を制御するプログラムは大変だったでしょぉ?」


「え、えっと……。飛ぶときは足でバランスを取っています」


「えぇっ!バランス制御と足を連動させているわけぇ?!すごいじゃないかぁ~~っ!この小さなカメラはどこで手に入れたのぉ?それにどうやって操作しているのか気になるんだけどぉ」


 この四足歩行ロネントに興味津々のマフメノは、ロネントのことになると目の色が変わり、それが同年代の女の子であっても多弁になった。ロウアはそれでも良いぞと、頑張れマフメノと心で更に応援した。


「あ、僕のロネントも見てよぉっ!」


 マフメノは自分のロネントをツクに見せた。


「は、はい、そのアルさんのお部屋を覗いている時に見てすごいロネントだと思っていました」


「おぉっ!分かってくれるかぁっ!!君、ロネント部にぃ……は、はいら……、入らない……、入った方が……いいかも……」


「えっ?!」


 しかし、ここまで多弁だったのに部活への誘いになると急にテンションが下がってしまって、部員達はガッカリした。ツクは突然の誘いに驚いた顔をした。


 仕方なくアマミルは助け船を出した。


「うん、ここまで頑張ったマフメノ君っ!それは良い案だわっ!」


 しかし、"ここまで頑張った"という一言で他の部員達は笑いが抑えきれなくなってしまった。


「ぷっ!アマミル、あんたっ!……ま、まぁ、ぷぷぷっ!そ、そうね、ロネントを強化するために必要な人材よねっ!あははっ!」


 イツキナは笑いを堪えながら賛成した。


「そうだよ、そうだよっ!!ツクちゃん、入りなよっ!!マ、マフメノ君は頑張ったんだもんねっ!ぷっ!」

「アルちゃん、笑ったら駄目だよ……ぷっ……ククク……」

「あうんっ!部員が増えるのは嬉しいでっす。……なんでみんな笑ってるでっすか?」


 アルもシアムもホスヰも笑いながらも同意していた。


「みなさん、良いのですか……」


 ツクは遠慮がちにそう言った。


「良いに決まっているわっ!ねぇ、みんなっ!」


 アマミルがそう言うと、部員達はうんと頷いた。


「あ、ありがとうございましゅっ!」


 ツクは皆が笑いを堪えている意味は分かっていなかったが、自分を受け入れてくれた事が嬉しくて、また泣きながらそう言った。


 こうして霊界お助けロネント部は、部員が一人増えた。


-----


(おっ!マフメノの仲間が出来て良かっ……)


 魂のロウアが話始めた瞬間、また時間が止まった。


===== ピ~ッ、ガラガラ…… =====

===== ピ~ッ、ガラガラ…… =====

===== ピンポンパンポ~ンッ!=====

===== 未来が入れ替わりました~っ!=====


= アーカちゃん、ひっさびさの登場ですっ!! =

= いや~っ、僕のこと忘れちゃったんだじゃないかと思って心配したよ =


「い、いや覚えていますが……」


 ロウアは、また来たかと思った。そしてアーカは聞きもしないのに説明を始めた。


= このツクって子、君の時代では見てないと思うけど、それもそうさ =

= アルちゃんの未来世の"蓮沼時子"の交通事故は彼女が原因だからね =

= あっ!蓮沼時子じゃ、分からないかっ! =

= 君の知っている名前だと、"とっきょ"だったかな =

= うん、合ってる、合ってるっ! =


 青髪の女の子は、天井の巨大な黄金色のたまを見つめて何かを確認しなら説明した。


「えっ?!ツクは、とっきょの死んだ原因になった子?」


= この時代のツクって子の追っかけは、君が止めなかったらエスカレートして =

= 精神的にアルを追い詰めて殺してしまう歴史だったんだよね~ =


「えぇっ!」


= ムー文明のアイドルがストーカーに殺されてしまう事件って事で大陸は大騒ぎさ =

= 彼女の名前、ツクは"取り憑く"って意味にもなって、君たちの日本語の一つになっちゃうぐらうにね~ =

= どうやら、君たちの時代から"取り憑く"とか、"憑く"って言葉は無くなってしまったみたいだな =

= これも小さな副産物だね、あはははっ!! =


「ちょ、ちょっと……」


= だけど、アルって子は、ツクを許してしまうとはね~ =

= なかなか器の大きな子じゃ無いかっ! =

= 人を許すって出来ることじゃないよ、うんうんっ! =


「た、確かにそうですけど……」


= と!言うわけで、これ以降の転生で、アルの魂に付きまとって、殺したり、精神的に追い詰めたりしていた魂が浄化されちゃったわけで =

= とっきょちゃんになる原因だった、あの交通事故もなくなっちゃたみたいだよ~っ! =


「……良かった」


= 良かったのかなあ =

= 何が最善か僕には分からないけど、ツクって子のカルマは発生しなくなっちゃった =

= あ~、未来が入れ替わるぅ~、お父様に報告しなくちゃっ! =


= ああ、あとね =

= イツキナって子も少し心が動いたようだよ =

= この子は、自分を責めすぎる悪い傾向があるんだよね =

= また後で話す事があるかもねっ! =


= それじゃあね =

= お父様に報告する事が多すぎて困っているのに、仕事を増やしちゃダメじゃないか、何てねっ! =


「そ、そうですか……、えっ!」


-----


 時間が動き出すと、魂のロウアの途中で切れた会話が続けられた。


(……たぜ。それにして、新部員はまた女だなっ!)


「って、もう帰るの……?」


 ロウアの話している途中でアーカが消えたので、彼の残骸のような声が部室に響いた。


「どうしたのだ、イケカミ君よ、まだ誰も帰らんぞ?」


 アルが気味悪がってそう聞いた。


「な、なんでもない……」


 魂のロウアも不思議そうにしていたが、すぐに何が起こったのか悟った。


(うん?何だ?どした?まさか、またアーカとかいう奴が出た?)


(う、うん、そうなんだけど。アルの未来が変わったって一方的に話して消えてしまった)


(へぇ~、そうなんだ。後で詳しく教えろよ)


(うん……何だかなぁ)


----------


 アマミルは、ツクに部員登録届を机の上に表示して記入を促した。


「記入ありがとうっ!これで正式に私達の部員よっ!」


「は、はいっ!ありがとうごじゃいましゅぅぅ」


 ツクはよっぽど嬉しかったのかまた涙声で答えた。


「そうだわ。ツクちゃん。アルちゃんの部屋の動画とか画像は削除しないと駄目よ?」


 アマミルが、ツクに追加でお願いをした。


「私は元々録画などはしていませんです……」


「あら、そうなのね。それなら良かった。それと、ゴミをあさったりしては駄目よ?何か持ち出したのかしら?」


「ゴ、ゴミですか……?私はゴミをあさったりはしていません……」


「えっ!そうなのっ?!」


「えぇ~、アマミル、もしかしたら、未だ別の犯人がいるってこと……」


「イツキナ、そうかもしれないわね」


 ツクが犯人と思われた事象を確認したが、彼女は何もしていない事が分かった。


「やだやだやだ~っ!こ、怖いじゃ~ん……」


 この時、一同は別の犯人にぞっとしたが、ゴミあさりは鳥や小動物の仕業だったのをアルが勘違いしただけだと後で分かった。


2023/10/28 文体の訂正、文章の校正


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