手紙の少女
翌日の朝、ロウアは、マフメノのロネントと四足歩行ロネントの二体を持ちながらアルとシアムと一緒に登校した。マフメノの嫁を両手で持って、四本歩行ロネントをその上に載せていた。
「お、重い……」
「どしたの、イケカミッ?」
「どしたのって……、僕が二体のロネントを運んでいるからでしょ……」
「男子なんだから、これぐらい持つのが当たり前だっ~~っ!」
「あの子を許すようなアルさんは、友達に対していたわりの心ってのは無いんですかい……」
「べぇ~」
アルはあっかんべえをした。
「無いってわけね……、ふわぁ~……」
ロウアはあくびをした。昨晩、彼はロネントが逃げない様にほとんど寝ないで見張りをしていた。
「イ、イケカミ兄さん、小さい方を持ちましょうか……?」
「ありがとう、シアム。だけど、こいつは逃げちゃうかもしれないから……」
シアムは優しくそう言ってくれたが、逃げてしまうかもしれないのでロウアは断った。四足歩行ロネントは、紐で縛り付けられて動けないようにされていたが、いつ動くか分からなかった。
(ね、眠い……、ちょっとイラついてしまった……)
ロウアは、アルに当たってしまったことを反省した。
「アルちゃん……。イケカミ兄さん、夜もずっと見てくれていたんだよっ?眠たそうでしょ?」
(はぁっ!シアムは優しいなぁ……)
シアムの優しさにロウアは感動した。
「わ、分かっているよぉ~、あ、ありがとうね……、イケカミ……」
アルはふてくされたように礼を言った。
「……ちぇ、そういえば良いのにさ……」
「べぇ~、ふんっ!」
アルは恥ずかしかったのか、また舌を出して横を向いた。
「アルちゃんったら、またそういうことをしちゃうんだから……でも……」
シアムは犯人に不安を感じていた。この小さなロネントを操っていた相手は、アルの部屋を覗いていたのぞき魔だった。
「犯人さん、ちゃんと部室に来てくれるかなぁ」
「大丈夫だよ。きっと来るよっ!」
アルは何の根拠も無く自信満々だった。
「そうだと良いんだけど……。イケカミ兄さんは、来てくれると思う?」
「分からないなぁ……、だけど、マフメノに調べてもらって犯人は突き止められると思うから心配しないでも大丈夫だよ」
「イケカミ兄さんがそう言うなら……」
「だ~いじょうぶっ!来るってぇっ!!」
「アルちゃんは呑気だなぁ……」
ロウアは、この対照的な二人が良く二人がアイドルとして活動しているなと思った。
(互いに認め合っているってことかな)
ロウアは、楽しそうに話しているアルとシアムを見て自然と頬が緩み、眠気も飛んでしまった。
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放課後、霊界お助けロネント部では、部員達が今か今かと、のぞき魔を待っていた。皆、色んな事を考えていて、誰も何もしゃべらず思い思いの事をやっていた。
そんな沈黙が続いていたが、しばらくすると部室のドアを叩く音がした。
「キ、キタ~ッ!」
「ア、アルちゃんっ!し~っ!」
アルが嬉しさのあまり叫んだのでシアムがとがめた。
「イ、イケカミ、開けてよぉ……」
アルはシアムの後ろに隠れてしょぼんとするとロウアに扉を開けると命令した。
「えっ、僕が?」
「だって、ドキドキしちゃうんだもん」
「しょうがないなぁ……」
ロウアは腰を上げて扉を開けると、そこには一人の少女がポツンと下を向いて立っていた。
「あっ!君は……」
彼は彼女が知った顔だったので驚いてしまった。この子はこの時代に珍しく紙でラブレターをくれた少女だった。
「き、君が犯人だったの?!」
「は、はい……。イ、イケカミ様……。申し訳ございませんっ!」
その小さな子は申し訳なさそうにそう言うと、後ろに下がって縮こまるように土下座をした。
「……さ、様?!」
「なんだ、イケカミの友達?」
アルは、その少女がロウアのことを様付けて呼んだので彼の知り合いだと思った。
「と、友達じゃないけど……」
するとアマミルが、優しく声をかけた。
「さっ、土下座なんてしていないでっ!中に入って」
「は、はい……」
少女はアマミルに優しく導かれて部室に入った。
2022/10/22 文体の訂正、文章の校正




