表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
妄想はいにしえの彼方から。  作者: 大嶋コウジ
転生 -いにしえの大陸 ムー-
9/573

帰宅

 ムー大陸に転生した池上は、ロウアという人間の身体に宿っていた。

 ロウアの周りには、転生する前の人間達、自分の母親、とっきょ、良子がいた。


 とっきょは、アルという名前であり、良子は、シアムという名前であった。


 しかし、

 ロウアは、この時代の言葉が理解できなかったが、力を使い何とか話している内容だけは理解できた。


 海で溺れたというロウアはシアムの助けがあって一命を取り留めた。

 ロウアは、恐らくロウアという魂は、死んでしまい、代わりに池上が身体に宿ったのだと悟った。


-----


 退院したロウアが乗り込んだ車は完全な自動運転であった。

 ロウアは、どうやって自動運転しているのか理解できなかったが、フロントガラスの手前に表示される"ナビ"画面を見て楽しんでいた。

 地図はもちろん、行き交う車、町を歩いている人間も認識しているのか、それらが全てナビに表示されている。


(車の形もほぼそのままだし、老若男女も認識して表示されている……。

これだけ認識できるなら車にも人にもぶつかるは無いかもしれない)


 移動中の景色は、ロウアにとって、全てが新しいものばかりだった。

 病院からある程度見えていたが、そこは都会そのものだった。

 ただ、日本の都市からすると、建物は一回り大きく、道路は広く取られている。


 道を行き交う人達の服装、カフェ、レストラン、デパートなども見たような形式ではあったが、細かく見ると異なっているのが分かる。

 病院の裏庭で見たような多種多様な人種が歩いている。


 ムー大陸は、標高1,000mを超えるような山も無く、平らな大陸だった。

 その位置は、日本と同じ経度だったので、大陸の北部は日本のような四季があり、逆に南部は赤道近くにあったため、亜熱帯地方の気候だった。


 首都ラ・ムーは、ムー大陸の北部の中心に位置していた。

 そこから車で30分ぐらい車で離れた住宅街にロウアの家はあった。


 都会から外れ、住宅街が見えてくると車は自動的に止まった。


<さ、着いたよ>


(こ、ここが僕の家……)


 車の扉は自動的に開いた。ロウアは降りると、その家に驚愕していた。


 ロウアは住宅街に入ってから気づいていたが、ほとんどの家が軒並み大きかった。

 ロウアの家も例外では無く、その大きさに目を見張った。


(あはは……。ぼろアパートか段ボールの家にしか住んでいなかったから、これは驚きだな……)


 玄関は21世紀に見たものとさほど変わらないが鍵穴はなかった。

 母親は鍵らしき場所が薄暗く光っているので、そこに腕時計を当てた。

 すると、ガチャという音と共に鍵が開いたことが分かった。


(この時計は鍵にもなっているのか)


 母親は扉を開けてロウアを中に入れる。

 家の中は外から見えた以上に広く感じた。

 廊下らしいものはなく、壁の無い広いリビングとキッチンらしき場所が見えた。

 二階に続く階段も見えた。

 ロウアは、こんな豪邸見たことが無いので入るのをためらっていた。


<どうしたんだい?自分の家なんだよ?>


 母親に促されるようにその広いリビングに入ると、何もしていないのに自動的に明かりがつき始める。

 するとキッチンから一人の女性が現れた。


(この女性も目が……)


<家の掃除は終わったね?>


 母親が女性ロネントに声をかけると、素っ頓狂な声が返ってきた。


<ハイッ!オワッタヨッ!!オカアサン!>


(何かやけに明るいロネントッ!)


<私は、お前のお母さんじゃないって何度言えば……。もう安物はダメだね……>


(ロネントにも知性レベルが存在するということか。

病院のものは、賢く出来ていたんだなぁ)


<ロウア、家のことも忘れちゃったのかい?>


 ロウアはうなずいた。


<まあ、仕方ないね……。焦っても仕方ないか……。ほら、そこに座って休んでな>


 母親は、話し方が少し乱暴なところが21世紀に知っている母親に似ていた。


 ソファが目の前にあるのだが、ロウアが知っているものより数倍大きくしたベットのようなソファで足が無いため、足を伸ばし放題だった。

 しかも座り心地が恐ろしく良い。


(や、柔らかい……。何だこれ……、眠っちゃいそうだ)


 ロウアが落ち着いていると、さっきのロネントがお茶を持ってきてくれた。


(ああ、このお茶は、緑茶に近いな……)


<あれ?それは私のものだったのだけど、お茶は飲めるようになったのかい。

苦いのは苦手だったのに……。あの事故から、別人になったみたいだねえ>


(しまった……。まぁ、確かにそうなんだけど……)


 すると、聞き慣れた声が聞こえた。


<お~いっ!ロウアッ!!>


<あっ、帰ってきた~っ!ロウアく~んっ!>


 アルとシアムが自分達の家のように上がってきた。


<おばさん、こんにちはっ!>

<こんにちはっ!!>


<はい、こんにちは。

あれ?学校帰りかい?>


<うんッ!登校日だったのっ!>


 アルが元気に答えた。


 二人は制服らしきものを着ていた。

 ロウアが知っているような無地の制服では無く、少し厚手の服で四角い絵柄が両肩にかかっていた。

 上はノースリーブになっていて、スカートは厚手の服と同じ絵柄が右と左の両腰に付いていて、ベルトもしていた。


(み、短めなスカート……。

このぐらいの歳だと同じような格好になるのかなぁ。

いや待てよ、流行というものもあるし、関係ないかなぁ)


<やだやだやだ~~~っ!

ロウアのやつ、じろじろ見ないでよぉ~っ!

今日は登校日だったから制服を着ているだけだぞぉ~っ!>


<照れてちゃう、にゃ……>


(し、しまった……。だけど、どうしてここに?)


<うん?どうしてここにって顔をしているが、私たちは、君の近くに住んでいるんだぞ?忘れちゃったのかなぁ~>


(何故分かった……)


<アルちゃん、ロウア君は記憶が……>


<あぁ、そうかぁ、もうダメダメだなぁ……>


(やっぱりご近所さんだったのか)


 ロウアである池上は知るよしも無いがアルとシアムの家は、ロウア家を挟んで両隣にあった。


<ロウア、部屋に案内してあげて>


 母親の言葉で案内しようとしたが、そもそも自分部屋すら分からない。


<おばさん、ロウア、自分の部屋も忘れちゃってる……>


 焦っている姿をアルが分かったのか、助けてくれた。


<あら、そうだったわね……。すまないけど、アルちゃん達、教えてあげて>


 ロウアは逆に自分の部屋を案内してもらうことになった。


2022/10/08 文体の訂正


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ