不思議事件簿
次にメメルト気づいたのは、自分が通っていたナーカル校だった。
「私は何故……?何故、学校にいるの……?」
メメルトは突然自分が学校にいることに驚愕した。
「お、おかしいわ……、身体が勝手に動いている……。ど、どうして……?」
それはたまたまだった。"それ"は"たまたま"鏡を見た。
「!!!」
メメルトは鏡に映っている自分を見たはずだった。だが、そこに映っていたのは、自分がたまに学校で見かけた用務員ロネントだった。
「ロ、ロ、ロ、ロネント……!!わ、わ、私が……?ロネント……?ま、まさかっ?!」
その魂は自分の置かれている状況を理解できなかった。ツナク上のゲームでフレンドと思っていたケセロにナイフで刺されて意識を失った。それだけのことだった。
意識を失ったのは、ゲームの不具合だと思った。だから、急にログアウトしただけの事だと思った。だが、リアルに戻った自分は寮の部屋ではなく、学校にいた。そして自分がロネントと一体になっていることに気づき恐怖した。
「ぎゃぁ~~~っ!!!いや、いや~~っ!!!」
淡々と動くロネントの中で、少女の魂は泣き叫んだ。だが、誰かにその声が聞こえることは無かった。
-----
ロネントは人工知能を持ち、それ自身である程度の思考をすることが出来た。この"人の魂を持ったロネント"も例外では無かった。
(夜になると手足はある程度動かすことが出来る……。だけど、どうして……?昼になると身体が勝手に動作して、学校の見回りをしてしまうの……?)
用務員ロネントは、用務員としての動作しか出来なかった。学校の外に行くことも出来ず、決まったコースを決まった時間に動くしか出来なかった。だが、夜になるにつれて人工知能による動作範囲が弱まるためか、メメルトは強く意識することで手足をある程度動かすことが出来るようになった。
しかしながら、ロネントが持つ"本能"は、学校の見回りだったため、そのコースを外れて動くことは出来なかった。
= コース1 プールに潜り問題が無いか確認する =
その夜は、生徒が悪ふざけで学校のプールで遊んでいた。このロネントは手を伸ばして、悪ふざけをしている生徒の足を掴んだ。
「ナニヲシテイル。ヨルハ、ぷーるニ ハイルナ」
だが、魂は別のことを叫んでいた。その魂は自由となった手足を動かし、"コース上"にいた生徒に助けを求めただけだった。
(こんな事を言いたいんじゃないっ!助けて、助けてほしいのっ!!逃げないでっ!!!)
= コース2 廊下に不審者がいないか確認する =
生徒が忘れ物を取りに夜の学校に来ることもあった。ある晩、このロネントは、そんな生徒の肩を後ろから掴んだ。
「コンナ ヨナカニ ナニヲシテイル」
(ね?助けて?助けてほしいの。私はここにいるのっ!助けてほしいのっ!!!)
生徒は何に掴まれたのか分からず、慌てて逃げ帰っていった。
(帰らないでっ!!!私は、ここに……いるの……)
魂は"コース上"にいた生徒に助けを求めただけだった。
= コース3 教室に不審者がいないか確認する =
教室に入り生徒のまねをして席に座ってみることもあった。
(私は……、私は……、授業を受けたい……。みんなと同じように……。どうして?どうして出来ないの……?
うぅぅ……、私は授業を……、ゲームなんてやらなければ良かった……)
その魂は涙を流していた。だが、ロネントは涙を流す機能は持っていなかった。
2022/11/20 文体の訂正、文章の校正




