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妄想はいにしえの彼方から。  作者: 大嶋コウジ
引きこもり少女 メメルト
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夜の学校へ

 その夜、「お助けロネント部」の四人は学校の校門に集まっていた。


「ちょ、ちょ、夜の学校って怖いんだね……」


「う、うん」


 マフメノが早くも弱気になっていて、ロウアも真っ黒な学校を見て、生唾を飲み込んだ。


 夜の学校はしんと静まり返っていて、周りは虫の鳴き声だけが響いていた。昼間は生徒達の話し声や笑い声に溢れていた校舎、それが今は静かに佇んでいる。この昼と夜のギャップが余計に怖く感じさせた。どんな時代でも夜の学校は怖いのだとロウアは思った。


(それにしても、まんまとはめられた気がするんだよなぁ……)


 ロウアは昨日、絶対来てくれとアマミルに言われて素直にロネント部に向かったら、その場でお助け部とロネント部を合併させると言われ、その"合併式"に付き合わされた。流れるまま部室に入ってしまったら、依頼内容をまとめたという"不思議事件簿"の調査となってしまった。


(やっと気づいたか)


 魂のロウアは俺は知っていたぜ、と言わんばかりだった。


(気づいたなら、言ってよ)


(聞かれなかったからな)


(またそれか……)


 相変わらず、魂のロウアは、色々な事に巻き込まれてしまうロウアを見て楽しんでいた。


「さぁ、例の扉に行くわよっ!」


「そうだね、行きましょうっ!!」


 男性陣とは対照的にアマミルとイツキナは張り切っていた。部員達は念のため制服を着ていたが、女性陣は頬被りをしていて、自分達だけ顔を隠していたのでロウアはずるいと思った。


「警備員とかいないのですか……?」


「なぁに?ロネントが警備しているから、人間なんていないわよ。そんなことも知らないの?」


 アマミルが話した通り、ナーカル校は昼間と同じようにロネント達が不眠不休で動き回っているだけだった。"ある者"は掃除したり、"ある者"は不審者が侵入していないか見回りをしたりしていた。月明かりでも、窓に時々、それらが見えた。ロネント達は、暗視カメラを使ってるいるのか、真っ暗な廊下で何にぶつかること無く進んでいた。


「見つかったらどうなるんですか?不味いんじゃ……」


「バカねっ!当たり前じゃない。絶対に見つかったら駄目よ」


 アマミルは、恐ろしげな事をさも当たり前のように話した。


「あぁ、ロウア、僕の人生はここで終わったかもしれない。見つかったら退学になっちゃうよ……」


 マフメノに元気が無かったのは、退学を心配していたからだった。


「み、見つかったら、退学になるの……?まじか……、この調査ってリスクしかないのか……」


「なぁに?りすくって。何にしても事件解決に向かって邁進するだけよっ!」

「そうよ、困ってる人がいるんだものっ!」


「あ、ある意味、心霊現象を調べることより恐ろしい……」

「うん、お、恐ろしいよぉ……ゴクリ……」


 ロウアと、マフメノは、何も恐れていないアマミルとイツキナが怖くなった。


「なぁに?何か言った?」


「い、いえ……」

「何も言っておりませんっ!」


 四人は、アマミルが予め校内に入りやすい場所を調べておいた場所に向かうため、校門を迂回して学校の裏手に回った。このナーカル校は、あまりにも大きすぎるため、壁で覆いきれる事が出来ず、比較的楽に侵入できる場所が多かった。移動した校舎の裏手は雑木林になっていて、そこを侵入ルートとして予め決めていた。


「ここね」


「そうね。ふふっ!アマミルッ!私、楽しくなってきたわっ!」


「ふふっ、私もっ!」


 女性二人は楽しくて仕方ないらしいが、男性二人は不安しか無かった。


「あそこの扉だったよね」


「そうね。予め鍵を開けておいたところね」


 昼間の話が終わった後、四人は進入予定の扉の鍵を無理矢理、壊しておいたのだった。


「ロウアァ……、もうこれがバレてしまうだけで退学確定なんだけど……」


「はぁ~……、だよね……。

……だけど、アマミル先輩、用務員ロネントがすでに直しているかもしれませんよ……」


「バカねっ!その時はまた壊して入るだけよっ!」


「い、いや、それはさすがに……」


「もう、あなた達ったら、さっきから男らしくないわね」

「そうだよ、もっと私達を引っ張っていく感じじゃないとモテないわよ」


「はぁ~」

「ロウアァ、ぼくは傷ついたよぉ……」


「さっ!行きましょうっ!」


 アマミルはロウア達の心配など全く気にしていないようだった。


「あぁ、そうだ。ちょっと待ってください……」


「なぁに?」

「まだ、なんかあるの?弱いなぁ君たちは」


「ち、違いますよ……。マフメノ、奥さんを起動しようか……」

「はぁ~、そだね」


 マフメノは自分で作った"妻"と呼ぶロネントを後ろに背負った鞄から取り出して起動させた。


「こいつで歩き回る用務員ロネントを検索しますから……」


「面倒ね、ちゃっちゃと行こうよ」


 アマミルの行動力は無謀なところがあった。ロウアは、これが"ご迷惑少女組"と呼ばれる所以だろうなと思った。


「いやいや……、す、少し待ってください……。マフメノ調べられる?」


「うん、今やってる。この子が僕らの人生を守ってくれるっ!」


(あいつはいないよな……)


 ロウアは、どこにいるかも分からない自分を襲った敵がこのロネントを通して見ているので少し怖かった。しかし、今はマフメノの嫁さんに頼るしかなかった。


「ああ、いたいた。歩き回っているよ、用務員ロネントが」

「ホントだ……」


 ロネントの背中には学校の立体図と共に、どこに用務員ロネントが歩いているか表示されていた。マフメノの話ではロネントは公共物ということで位置情報は逐一公開されているとのことだった。


「これを見ていれば、見つかる心配は無いね」


 ロウアは少し安心した。


「今ならいけますよ、アマミル先輩」


「分かったわ、行きましょうっ!」


 四人と一体は、壊れた扉への移動を開始した。昼間に解錠した扉は、修理が間に合わなかったのかあっけなく開いた。


「あぁ……」

「ガックリ……」


 男性二人は、唯一の望みが簡単にクリアされてしまってがっかりした。


「入れたわっ!」

「行きましょうっ!」


 二人は張り切って、二人はがっくりして、ロネントが一体、それらにチョコチョコと歩きながら付いていった。一人の霊体はそれらを笑っていた見ていた。


2022/11/13 文体の訂正、文章の校正


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