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妄想はいにしえの彼方から。  作者: 大嶋コウジ
引きこもり少女 メメルト
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新部室?活動第一弾

 アマミル達から今日は部室に来いと言われていたのでロウアは渋々と部室に向かっていた。部室に近づくと、アマミルとイツキナ、そして、マフメノが部室の外で扉の上部を眺めていた。二人のお姉様は元気だが、マフメノは落ち込んだように見えた。それと何故かホスヰもそこにいて、二人のお姉様の後ろで一緒に扉の上を眺めていた。


 アマミルがロウアを見つけると、大声で彼を呼んだ。


「おっ、ロウア君、良く来たっ!見たまえっ!」


「どりゃば~っ!」


 イツキナも嬉しそうに謎の擬音を発して、二人して扉の上を指差した。


「な、何事ですか……」


 ロウアはポカンとしていたが、アマミルの指を指す方向を見て驚愕し、何だこれはと思った。


「ななっ!」


「見なさいっ!新しい部室の看板よっ!」


 いつやったのか分からなかったが、何処からか持ってきた電子的な看板を部室の扉の上に設置していて、そこにはこう書いてあった。


"お助けロネント部"


 肩を落としていたマフメノは、事のいきさつを話し始めた。


「ロウアァ……。地味に活動しようと思って部室の看板なんて表示していないって話したら、それじゃあ駄目だって言うんだよぉ……」


 ロウアはマフメノに同情した。


「う、う~ん。しかしこれって……。アマミル先輩、お助け部とロネント部をくっつけるんですかっ?」


「そうよっ!当たり前でしょ?一緒に活動するんですからっ!」


「い、いや、いつから一緒に活動する事になったんですかっ?!」


 部屋を使うとは聞いていたが、部活同士をくっつけることになるとは聞いていなかったので、ロウアは頭を抱えた。


「バカねっ!同じ部屋になるんだから、合併に決まっているじゃないっ!ねぇ?イツキナ?」

「そうだよ~、一緒に活動した方が楽しいしね~」


「はぁ~、全く……」


 ロウアは呆れてため息しか出なかった。すると、ホスヰがロウアに抱きついてきた。


「あうんっ!お兄ちゃんっ!久しぶりでっすっ!」


「そ、そうだ。ホスヰもどうしたの、まさか……?」


「お兄ちゃんと同じ部活に入るのっ!」


 ホスヰはとても嬉しそうに答えた。


「ロウア君っ!可愛い彼女がいるじゃないかぁ~~っ!さっき、ホスヰちゃんが、君がいる部に入りたいって言ってきたのだよ、断れるわけ無いでしょ~っ!」


 イツキナはふざけた調子で、ホスヰが部活に加わったことを知らせた。


「か、彼女って……。そんなんじゃありませんって……」


「ホスヰちゃん、良いよぉ~っ!可愛いよぉ~っ!」


 イツキナは、可愛らしい新しい部員に頬ずりして喜んでいた。


「えへへっ」


「あぁ、ホスヰも巻き込まれた……。というか自分から来たのか……」


 ロウアは嬉しそうなホスヰを見て、何も言えなくなってしまった。


「そ、それにしても、この看板……」


「なぁに?文句でもあるの?」


 普通の看板なら良いのだが、周りがネオンのように光っていたので、どう見ても過剰な演出のように思えた。


「ふ、普通の看板でも良いのでは……?」


「普通って何よ、普通ってっ!バカねっ!これぐらい目立った方が良いよのっ!」


 この看板は、どう見ても夜の町を思わせる看板だった。横にいるマフメノは、もっと言えとロウアを突いた。


「部活の看板を勝手に作っては駄目なの……で……は……ない……かと」


 ロウアは、途中まで言いかけたが、アマミルとイツキナがギロっと睨んだため、段々と小さな声になってしまった。


「なぁに?ロウア君、だって意気投合して部活が合併したんだから仕方ないじゃないっ?」


「だ、だけど……、毎年申請しているから、勝手に名前は変えては駄目です……。それと意気投合していません……、って自分で言いなよ……」


 ロウアはマフメノの代弁をさせられていた。


「すぐに申請し直せばいいじゃないのっ!ねぇ、イツキナ」

「うん、うん。そうよ。すぐに申請すれば良いだけよっ!ロウア君っ!」


「はぁ……」


「活動方針はマフメノ君の作ったロネントを使って人助けをするって事で良いわねっ!」


 アマミルは腰に手を当ててドヤ顔でそう言った。


「えぇ、ぼくの嫁、じゃない、ロネントを使うの……かよ……ですか?」


 マフメノは自分の作ったロネントが勝手に使われるのが気に触ったのか、頑張って発言した。


「そうよ。この広く活躍しているロネントを人助けに使えないでどうするんですかって事ですっ!」


「……は、はぁ」


「マフメノ君、君が一生懸命、研究していロネントでしょ?人助けにも使えると思うのっ!」


 イツキナも援護射撃を撃ってくるので、最強二人組にマフメノはタジタジだった。


「そ、そりゃ、まあ……、だけど、その、け、研究にも自由性を持たせることが大事で……あって……」


 ロウアも黙ってはいられないとそう言った。


「それよっ!ロウア君っ!学生だからって研究目的だけじゃ駄目なのっ!もっと社会に貢献するものを作っても良いはずっ!この部では、社会貢献のためのロネントを作るのよっ!」


「い、いや……。だから……。マ、マフメノ???」


 マフメノは、ついにあきらめ顔になってうなだれてしまっていた。


「(もう良いの?)」


「(諦めたよ、僕は……。それより、ホスヰちゃんがいれば、何とか耐えられるっ!可愛すぎっ!)」


「(お、おいおい……。諦めるの早いなぁ……)」


 マフメノは、ホスヰがいれば諦めもつくらしく、諦めざるを得なかった。


「ホスヰちゃんも良いわよね~っ!」


「うん、私はお兄ちゃんと一緒に頑張りますっ!」


「あぁ、ホスヰちゃんは君のものだったぁ」


 また一段とガックリするマフメノだった。


「い、いや、僕のものではないって……」


 ご迷惑少女組の強い意志で部室が占領され、部活の名前まで変更され、ぐうの音も出なくなるロウアとマフメノだった。


「さぁ、活動するわよっ!入りましょうっ!」


 アマミルはそう言うとイツキナとホスヰと一緒に颯爽と部室に入っていった。女性陣の後ろをトボトボと男性陣は入っていった。


「帰宅部になろうかなぁ……」


「ロウア君、何か言った?」


「い、いえっ!」


 ロウアは、アマミルの指摘にビシッと背筋を伸ばした。ちなみに、魂のロウアは、ロウアの不幸を腹を抱えて大爆笑していた。


-----


 部屋に入るとアマミルはさっそうと話し始めた。


「さっ、新部室を使った第一弾の仕事はこれよっ!」


「新部室……、はぁ~


 ロウアは頭を抱えながら思わずつぶやいてしまった。


「何か言った?」


「い、いえ……」


 ロウアはアマミルから何か言われると、キリッとさせざるを得ず、軍隊に所属しているような錯覚を覚えた。


「まあ、ともかく、これよっ!」


 そう言ってアマミルが見せた依頼のタイトルにはこう書いてあった。


"不思議事件簿"


「ううん?不思議?何が不思議なんですか?」


 ロウアは、そのタイトルが気になって尋ねた。


「どうやらこの学校で呪いと思われるような不思議な事件が多発しているみたいなの」


「へ~、呪い?そんなのあるの?」


 イツキナが聞いた。


「夜の学校に忘れ物を取りに行った生徒が、突然後ろから襲われる、とか

夜の音楽室から笛を吹いている音が聞こえた、とか

夜のプールで水泳をしていると誰かに足を掴まれた、とか

夜の誰もいない教室のはずなのに、誰かが椅子に座っていた、とか」


「全部夜ですね……」


「そうなのよっ!全部夜に発生する事件なのよっ!」


 ロウアは、これらを聞いていて二十一世紀でよく聞く学校の七不思議だと思った。


(学校の七不思議みたいだな……)


(あん?お前の時代にもあるわけ?)


(あるよ。学校のトイレに花子さんという死んだ霊がが出るとか。夜になると階段が一段増えているとか。理科室の標本がひとりでに歩いているとか)


(ひ~、怖えぇ~)


(お、おい、君も怖いの……?)


(そういった話は弱いんだよ……)


(ちょ、ちょっと待って……、君自体が今、幽霊なんじゃ……)


(うん?あれ?そうかっ!つまり同業者の仕業だなっ!)


(同業者って……)


 ロウアは魂のロウアの意味不明な言葉に呆れた。


「聞いてる?ロウア君?」


「は、はい、聞いていますっ!アマミル先輩っ!」


「もう、あなたってたまに話を聞いてないわよね、」


 アマミルはそう言うと、部活の活動を連絡した。


「まあ良いわ。

そんでね。さっそく今夜、学校に忍び込んで調べようと思うのっ!」


「はぁっ?!忍び込んでっ?!」


「あれ、聞こえなかった?もう一回言った方が良いかしら?」


「えっ、いやいや、忍び込んだら怒られますってっ!しかも今夜ですか?!」


 唐突に学校に忍び込もうとするアマミルにロウアは突っ込まざるを得なかった。


「何を言っているの。困った人達がいるんだから私たちの出番でしょっ!」


「そうねっ!アマミルッ!私たちの出番だわっ!ここは逃げられないっ!」


「イツキナッ!そうこなくっちゃっ!!」


(たはっ、すごいわ、この二人……。しっかし、めんどくせ~)


 魂のロウアも呆れる始末だった。


「困っているというかぁ、ただの噂話ではぁ……、ほ、本当に依頼です……かぁ……?」


 マフメノは、ぼそっともっともなことを言った。


「何言っているの?こうやって依頼メッセージが来ているんだから、依頼に決まっているじゃないっ!ただの噂話だったら投稿されないわ」


「しかし、この依頼は差出人がありませんよ……」


 ロウアはそれがさっきから気になっていた。


「これは色々な人の投稿を集めたものだからよ」


「な、なるほど……」


 ロウアは一瞬納得したが、アマミル達は誰の依頼かも分からないのに調査に乗り出すという無謀極まりない行動力に困った事になったと思った。


「ロ、ロウアァ、僕も行くのぉ?」


 マフメノがロウア以上に行きたくないのか、しかも、アマミルに直接言えず、ロウアにそう聞いてきた。


「当たり前でしょっ!」

「当たり前でしょっ!」


「は、はいっ!!(まじかぁ……)」


 二人に諭されて、マフメノは背筋をピシッとした。あきらめ顔だった。


「じゃ、じゃぁ、ホスヰちゃんも……」


 マフメノは、すかさず唯一の希望の星を提案した。


「あぅっ!ホスヰも行く~っ!」


 この提案にホスヰも乗り気だった。マフメノは、彼女が行くのであれば、幾分か楽しめるとだらしない笑顔を見せた。


「ホスヰちゃんは、遅い時間だから……ごめんね……」


「え~っ、私も行きたいよぉ……」


「ご両親に怒られてしまうから……、今回はお家で待ってて、ね」


「え~っ(しょぼん)」


「ホスヰちゃんも来ないのかぁ(しょぼん)」


 マフメノからも笑顔が消えて意気消沈した。


 こうして、無謀とも、無駄とも言える"お助けロネント部"の第一弾の活動内容が決まった。


2022/11/12 文体の訂正、文章の校正

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